8 / 14
クララの兄レンドール
しおりを挟む
クララの異母兄レンドールが、サーシャを望むのは、彼女の能力的なものだけが原因ではない。今までクララを始め、たくさんの美人を見てきたレンドールだが、その中の誰も彼の心を縛ることはできなかった。
クララとの王位継承を巡っての、周りからの圧力は、父が再婚し、妹が誕生した時から少しずつ強くなって、レンドールを襲うようになっていた。
「私に期待している愚か者達の目を覚まさせるために、留学するわ。」と言った妹に隣国を勧めたのは、単にアレクサンドラの元でなら妹はのびのびと色々なことを吸収できるだろうと思っただけで、他意はなかった。
彼女は覚えていないだろうが、何度かレンドールと彼女は会っている。一度目は、隣国との国境沿いで小さな諍いが起こった時。大方、彼方からの言い掛かりが原因だろうと思っていたら、調停役として明らかに不釣り合いな可愛らしい令嬢が現れて、隣国は謝罪の意思がないのだと、呆れたところだった。
皆同じように白い目で彼女の挙動を見ていた折に、原因が別にあり、それにどちらの国も責任がないこと。また起こりうる事由の為、起きない為の取り組みやら、起きてしまった後の対策など、スラスラと澱みなく提案していく彼女に、心を奪われたのである。
調べてみると、本来なら彼女の代わりに彼方の国の王子が来るはずだった。だが、途中で彼の乗っていた馬車がぬかるみにハマって動けなくなった為、近くまで来ていた彼女に、急ぎ代役を頼んだという。そうは言っても、である。
アレクサンドラは、平民が着るような服を着て、足元の悪い中、馬車を降りて駆けつけている。対して王子は、汚れを嫌がるような白い煌びやかな服に少しの隙も見せないような完璧な装いで、皆の顰蹙を買っていた。
「泥団子でもぶつけてやろうかしら。」
クララなら多分そう言うだろうな、と思った直後のその発言に、レンドールは笑いを堪えるのに必死だった。
「もし、どうしても無理だと思う事態に陥ったら、此方側に来てほしい。」
その時、確かにそう言ったのだが。
「此方側……ああ、ちゃんともしもの時は連携を取れるようにしておきますね。」
と。
今思い出しても、彼女からは少しズレた回答が返って来ていた。なまじ、自分が何でもできるから、人に頼ったりは滅多にしない彼女を、細腕ながら、支えたいと思った次第である。
「回りくどい言い方はダメよ。多分伝わらないから。彼女を伴侶にしたいなら彼女が一人で立てなくなるほど甘やかして話を聞いて構い倒すこと。わかったわね?」
クララの横で彼女の婚約者が耳をそばだてている。妹よ。多分近い将来お前も同じ目に遭うと思うぞ、と心の中で念じておくも、自分がどうしたら彼女の特別になれるかはいまだにわからないままだった。
クララとの王位継承を巡っての、周りからの圧力は、父が再婚し、妹が誕生した時から少しずつ強くなって、レンドールを襲うようになっていた。
「私に期待している愚か者達の目を覚まさせるために、留学するわ。」と言った妹に隣国を勧めたのは、単にアレクサンドラの元でなら妹はのびのびと色々なことを吸収できるだろうと思っただけで、他意はなかった。
彼女は覚えていないだろうが、何度かレンドールと彼女は会っている。一度目は、隣国との国境沿いで小さな諍いが起こった時。大方、彼方からの言い掛かりが原因だろうと思っていたら、調停役として明らかに不釣り合いな可愛らしい令嬢が現れて、隣国は謝罪の意思がないのだと、呆れたところだった。
皆同じように白い目で彼女の挙動を見ていた折に、原因が別にあり、それにどちらの国も責任がないこと。また起こりうる事由の為、起きない為の取り組みやら、起きてしまった後の対策など、スラスラと澱みなく提案していく彼女に、心を奪われたのである。
調べてみると、本来なら彼女の代わりに彼方の国の王子が来るはずだった。だが、途中で彼の乗っていた馬車がぬかるみにハマって動けなくなった為、近くまで来ていた彼女に、急ぎ代役を頼んだという。そうは言っても、である。
アレクサンドラは、平民が着るような服を着て、足元の悪い中、馬車を降りて駆けつけている。対して王子は、汚れを嫌がるような白い煌びやかな服に少しの隙も見せないような完璧な装いで、皆の顰蹙を買っていた。
「泥団子でもぶつけてやろうかしら。」
クララなら多分そう言うだろうな、と思った直後のその発言に、レンドールは笑いを堪えるのに必死だった。
「もし、どうしても無理だと思う事態に陥ったら、此方側に来てほしい。」
その時、確かにそう言ったのだが。
「此方側……ああ、ちゃんともしもの時は連携を取れるようにしておきますね。」
と。
今思い出しても、彼女からは少しズレた回答が返って来ていた。なまじ、自分が何でもできるから、人に頼ったりは滅多にしない彼女を、細腕ながら、支えたいと思った次第である。
「回りくどい言い方はダメよ。多分伝わらないから。彼女を伴侶にしたいなら彼女が一人で立てなくなるほど甘やかして話を聞いて構い倒すこと。わかったわね?」
クララの横で彼女の婚約者が耳をそばだてている。妹よ。多分近い将来お前も同じ目に遭うと思うぞ、と心の中で念じておくも、自分がどうしたら彼女の特別になれるかはいまだにわからないままだった。
25
あなたにおすすめの小説
【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?
堀多 ボルダ
恋愛
「お姉様、このマクレディ伯爵家は私が後を継ぎます。お姉様は邪魔なので今すぐこの家から出ていってください」
両親の急逝後、伯爵家を切り盛りしていた姉を強引に追い出して妹ダリアは当主となった。しかし、それが原因で社交界からは稀代の悪女として嫌われるようになった。
そんな彼女の元を訪ねたのは、婿に来てほしい男ナンバーワンと噂される、社交界で人気の高い幼馴染だった……。
◆架空の世界にある架空の国が舞台の架空のお話です。
◆カクヨムにも掲載しています。
【完結】さっさと婚約破棄が皆のお望みです
井名可乃子
恋愛
年頃のセレーナに降って湧いた縁談を周囲は歓迎しなかった。引く手あまたの伯爵がなぜ見ず知らずの子爵令嬢に求婚の手紙を書いたのか。幼い頃から番犬のように傍を離れない年上の幼馴染アンドリューがこの結婚を認めるはずもなかった。
「婚約破棄されてこい」
セレーナは未来の夫を試す為に自らフラれにいくという、アンドリューの世にも馬鹿げた作戦を遂行することとなる。子爵家の一人娘なんだからと屁理屈を並べながら伯爵に敵意丸出しの幼馴染に、呆れながらも内心ほっとしたのがセレーナの本音だった。
伯爵家との婚約発表の日を迎えても二人の関係は変わらないはずだった。アンドリューに寄り添う知らない女性を見るまでは……。
早く婚約解消してください!
鳴哉
恋愛
自己評価の低い子爵令嬢 と
その婚約者の侯爵令息 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、6話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
悪の王妃
桜木弥生
恋愛
何度もその罪により処刑される王妃。処刑までの日数は三日間。数十回繰り返されたその生に、彼女は何を思い、何を求めるのか。
全21話完結済みで順次公開していきます。
1~4話公開済
5話 12/6 19:00公開
6話~19話 12/7~毎日7時と19時の1日2話公開
20話~最終話 12/14 0時公開
婚約者は嘘つき!私から捨ててあげますわ
あんり
恋愛
「マーティン様、今、わたくしと婚約破棄をなさりたいと、そうおっしゃいましたの?」
私は今何を言われてるのでしょう。
「ああ、もう2度と君の顔も見たくない、声も聞きたくない。君との婚約は僕の中では無駄な時間だったよ」
苦痛に歪むマーティン様のお顔は今まで見たことのない憎しみのこもった目で私を睨みつけておりました。
ほんの1ヶ月前まで「愛してる」と言ってくださったのに。
わたしの何が悪かったのかしら?
泣き腫らしたまま、待たせておいた馬車に乗り、何も分からないまま屋敷へもどるしかなかった。
―――別れの理由も、真実も、何一つ知らないまま。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
勘違いから始まるキャラ文系寄りのラブストーリー。
【完結】アナタが選んだんでしょう?
BBやっこ
恋愛
ディーノ・ファンは、裕福な商人の息子。長男でないから、父から預かった支店の店長をしている。
学生でいられるのも後少し。社交もほどほどに、のんびり過ごしていた。
そのうち、父の友人の娘を紹介され縁談が進む。
選んだのに、なぜこんなけっかになったのだろう?
緑の輪っかの魔法
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ある国に双子の姉妹がおりました。
姉のシエラは王子様の婚約者、妹のサリーはそんな姉にいつだって辛く当たる意地悪な妹です。
十六の誕生日に指輪を贈られ求婚されるのがこの国の習わしです。
王子様が婚約者のシエラに指輪を捧げるその日が、刻一刻と迫っていきーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる