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一章
朝ご飯の準備
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うつむいてしまった私に、御守さんは呆れたのか興味を無くしたのか、「職場に案内しよう」と、先導してくれた。
ああ……また、私は『透明人間』だから、人からの興味は直ぐに薄れていってしまう……どうして、こんなに存在が直ぐに書き消えてしまうんだろう……折角の新しい職場なのに。
御守さんに案内されて、一階の職場である食堂へときた。
食堂は調理場のスペースとその手前にカウンター、長方形のテーブルが七卓と、椅子が八脚ずつ置いてある。
隅の方に、電気ポットとウォーターサーバーが置いてあり、湯飲みとグラスがその前に並んでいる。
セルフサービスで各自が持っていく方式の様だ。
「ここが、君の職場になる。あと二時間もしたら騒がしい連中が起きて、挨拶をするだろうから、それまでに朝食の準備をお願い出来るか?」
「はい。任せて下さい。あっ、調味料は揃っているのですよね?」
「ああ。足りない物があれば、その都度言うなり、買い出ししてくれて構わない。経費はこの袋に入っているから、君の采配でやってくれ」
そう言って御守さんは私に一センチ程の厚みの茶封筒を寄越してきた。
そろっと中を見ると一万円札がギッシリ…‥‥「えっ!」と、声をあげたものの、食材代なども含めているのかもしれないと思い直す。
「では、お預かりします。レシートは後程、お渡しすれば良いですか?」
「レシートは、あとで紹介するが、江島という女性が経理担当として回収するから、江島に渡してくれ」
「わかりました。では、早速準備に取り掛かりますが、ご飯はどのくらい炊いたらいいかとかありますか?」
「飯は……大食らいが多いからな、二十人分は作る気でいてくれ。正式にここに住んでいるのは、オレを含めて十一名程だ。たまに知らない間に増えたりもする」
二十人分……しかもたまに増える? なんともアバウトな。
御守さんは少しだけ目を細めて、「何かあれば、二階にいるから呼んでくれ。冷蔵庫の食材は好きに使う様に」と、食堂から出て行った。
「よし! 折角のお仕事だからね。頑張らないと!」
腕まくりをして、食堂から厨房に入ると、先程、二階堂さんに運んでもらった白い発泡スチロールが置いてあった。
白いガムテープを剥がすと、黒光りする背に真ん中には綺麗な黄色い線が入った立派な鰤が丸々一匹、氷と一緒に入っている。
これは私が魚市場で買ってきた物。
お引っ越し祝いと、ここの人達への挨拶をがわりの品だ。
水道の蛇口を捻って水を流し、鰤を「よいしょっ!」と、水場へ置くとザブザブと水で洗いながらタワシで洗う。
滑り取りは大事。
そして、鱗は包丁ですき引き……要は、パン切り包丁みたいに横に薄ーく皮をそいで鱗を取る感じ。
残った鱗は包丁の腹で軽くそいでいく。
頭を鰓開きから包丁を入れて、裏と表からザクザクと落とす。
お尻から包丁を入れて内臓を出していく。お腹の上、つまり背中の方に血合いという血の流れの場所があるから、そこを包丁を入れて、水でよく流し洗いをする。
これをしないと、少し生臭いのでちゃんとしたい。
洗い終わったら、布巾で水気を綺麗に拭き取り、あとは使う部位を包丁で切っていく。
鰭部分はお味噌汁の具材にしてしまおう。
きっと良いお出汁のお味噌汁になる。鰤の粗汁は美味しいしね。
「二十人分……一人二枚ずつ食べられる様にすれば良いかな?」
用意するのは、薄力粉、醤油、みりん、サラダ油、砂糖、お酒。
砂糖、醤油、みりん、お酒でタレを先に作っておく。先に作っておくほうが手際よく作れるからね。
鰤の切り身に薄力粉を付ける。フライパンにサラダ油を引いて、鰤の切り身を焼いていく。
焼き目が付いたら裏返して、余分な油はキッチンペーパーで取り除く。
五分程焼いたら、先程のタレを上から掛けて煮立てていく。
裏返したりしつつ、とろみが出たら、お皿に盛って完成!!
「うん。でも、これだけじゃ少し寂しいから……他に食材はあるかな?」
お味噌汁は粗汁でいいとして……冷蔵庫を開けると、卵が大量に陳列されていた……何人分? これ何人分ですかー! むしろ、卵専用の冷蔵庫なのかな? と、疑いたくなる量だ。
卵をボウルに大量に入れてキッチンカウンターへ置く。
「あっ、お米! お米を先に炊かなきゃ!」
肝心な物を忘れていた。
二十人前……と、言うように、炊飯器は十合が炊ける物が二つあった。
お米の入った米櫃は冷蔵庫と大差なかった……大きい。私の背が百五十五センチだけど、二メートルは超えていそうな大きさである。
重たい思いをして、お米を洗って炊飯器にセット。
早炊きにしたし、スイッチの確認もした! これでバッチリ後三十分もあれば炊けるはず。
次に私が取り掛かったのは、卵焼き。
出汁巻き卵と甘い卵焼きを半々に作り、お皿に並べていく。
鰤の粗汁も脇で作りつつ、野菜が欲しいとは思ったけれど、野菜類は見当たらなかった為に、今日はお昼にでも買い出しに行くべきかもしれない。
私の仕事は、朝と夜のご飯だけなので、お昼は含まれていない為、お昼は夕飯の準備という感じだ。
引っ越しの荷物の整頓もしなきゃいけないし……やる事はそれなりにありそう。
荷物は少ないけれどね。
ああ……また、私は『透明人間』だから、人からの興味は直ぐに薄れていってしまう……どうして、こんなに存在が直ぐに書き消えてしまうんだろう……折角の新しい職場なのに。
御守さんに案内されて、一階の職場である食堂へときた。
食堂は調理場のスペースとその手前にカウンター、長方形のテーブルが七卓と、椅子が八脚ずつ置いてある。
隅の方に、電気ポットとウォーターサーバーが置いてあり、湯飲みとグラスがその前に並んでいる。
セルフサービスで各自が持っていく方式の様だ。
「ここが、君の職場になる。あと二時間もしたら騒がしい連中が起きて、挨拶をするだろうから、それまでに朝食の準備をお願い出来るか?」
「はい。任せて下さい。あっ、調味料は揃っているのですよね?」
「ああ。足りない物があれば、その都度言うなり、買い出ししてくれて構わない。経費はこの袋に入っているから、君の采配でやってくれ」
そう言って御守さんは私に一センチ程の厚みの茶封筒を寄越してきた。
そろっと中を見ると一万円札がギッシリ…‥‥「えっ!」と、声をあげたものの、食材代なども含めているのかもしれないと思い直す。
「では、お預かりします。レシートは後程、お渡しすれば良いですか?」
「レシートは、あとで紹介するが、江島という女性が経理担当として回収するから、江島に渡してくれ」
「わかりました。では、早速準備に取り掛かりますが、ご飯はどのくらい炊いたらいいかとかありますか?」
「飯は……大食らいが多いからな、二十人分は作る気でいてくれ。正式にここに住んでいるのは、オレを含めて十一名程だ。たまに知らない間に増えたりもする」
二十人分……しかもたまに増える? なんともアバウトな。
御守さんは少しだけ目を細めて、「何かあれば、二階にいるから呼んでくれ。冷蔵庫の食材は好きに使う様に」と、食堂から出て行った。
「よし! 折角のお仕事だからね。頑張らないと!」
腕まくりをして、食堂から厨房に入ると、先程、二階堂さんに運んでもらった白い発泡スチロールが置いてあった。
白いガムテープを剥がすと、黒光りする背に真ん中には綺麗な黄色い線が入った立派な鰤が丸々一匹、氷と一緒に入っている。
これは私が魚市場で買ってきた物。
お引っ越し祝いと、ここの人達への挨拶をがわりの品だ。
水道の蛇口を捻って水を流し、鰤を「よいしょっ!」と、水場へ置くとザブザブと水で洗いながらタワシで洗う。
滑り取りは大事。
そして、鱗は包丁ですき引き……要は、パン切り包丁みたいに横に薄ーく皮をそいで鱗を取る感じ。
残った鱗は包丁の腹で軽くそいでいく。
頭を鰓開きから包丁を入れて、裏と表からザクザクと落とす。
お尻から包丁を入れて内臓を出していく。お腹の上、つまり背中の方に血合いという血の流れの場所があるから、そこを包丁を入れて、水でよく流し洗いをする。
これをしないと、少し生臭いのでちゃんとしたい。
洗い終わったら、布巾で水気を綺麗に拭き取り、あとは使う部位を包丁で切っていく。
鰭部分はお味噌汁の具材にしてしまおう。
きっと良いお出汁のお味噌汁になる。鰤の粗汁は美味しいしね。
「二十人分……一人二枚ずつ食べられる様にすれば良いかな?」
用意するのは、薄力粉、醤油、みりん、サラダ油、砂糖、お酒。
砂糖、醤油、みりん、お酒でタレを先に作っておく。先に作っておくほうが手際よく作れるからね。
鰤の切り身に薄力粉を付ける。フライパンにサラダ油を引いて、鰤の切り身を焼いていく。
焼き目が付いたら裏返して、余分な油はキッチンペーパーで取り除く。
五分程焼いたら、先程のタレを上から掛けて煮立てていく。
裏返したりしつつ、とろみが出たら、お皿に盛って完成!!
「うん。でも、これだけじゃ少し寂しいから……他に食材はあるかな?」
お味噌汁は粗汁でいいとして……冷蔵庫を開けると、卵が大量に陳列されていた……何人分? これ何人分ですかー! むしろ、卵専用の冷蔵庫なのかな? と、疑いたくなる量だ。
卵をボウルに大量に入れてキッチンカウンターへ置く。
「あっ、お米! お米を先に炊かなきゃ!」
肝心な物を忘れていた。
二十人前……と、言うように、炊飯器は十合が炊ける物が二つあった。
お米の入った米櫃は冷蔵庫と大差なかった……大きい。私の背が百五十五センチだけど、二メートルは超えていそうな大きさである。
重たい思いをして、お米を洗って炊飯器にセット。
早炊きにしたし、スイッチの確認もした! これでバッチリ後三十分もあれば炊けるはず。
次に私が取り掛かったのは、卵焼き。
出汁巻き卵と甘い卵焼きを半々に作り、お皿に並べていく。
鰤の粗汁も脇で作りつつ、野菜が欲しいとは思ったけれど、野菜類は見当たらなかった為に、今日はお昼にでも買い出しに行くべきかもしれない。
私の仕事は、朝と夜のご飯だけなので、お昼は含まれていない為、お昼は夕飯の準備という感じだ。
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荷物は少ないけれどね。
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