悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

文字の大きさ
7 / 69

皇女の厄日、公爵はちぐはく

しおりを挟む


「んー、どこかな。」

そう言ってとぼけた様子でシエラの肌を撫でる手はとても探しているようには感じない。シエラはこの辱めに耐えながらも彼はだったと思い出す。




寂しがりやの子どものような、それでいて完璧な支配を求める独裁者のような、シエラに対してはまるで狂気なまでもの執着を見せ、更にはその手段を選ぶような人間ではないのだった。




ほんのり赤く染まった頬に、耐えるように唇を噛み締めて俯き気味な瞳は羞恥に潤んでいる。




ジェレミアはシエラの肝心な部分を指で弾くように触れると、シエラは声にならない声をあげて身体をびくりと跳ねさせた。




所詮姉弟の戯だろう。



シエラの事など知るものかと考えながらも、リヒトは身体を跳ねさせてジェレミアの手を止めるように自らの身を抱き締めた彼女を見た瞬間、怒りとも何とも言えない感情にかき立てられ、ジェレミアの腕を掴んだ。




「ジェレミア殿下、姉君とはいえこれ以上辱められては困ります。必要であれば私が取りましょう。」



表情こそ、強気に見えたが小刻みに震えるシエラを見ると頭に血が上り目の前がチカチカするようだった。


「…っ!」


シエラは驚いたように目を見開き、すぐに視線を逸らしたがジェレミアは相変わらず表情を変える事はしないで「そんなつもりはないよ。」と笑っただけだった。



「あ。あった。…姉様、よく頑張ったね。」



そう言って引き抜かれた手には指輪があり、後ろから抱きしめるようにしていた体制のままシエラの首元に軽く触れるだけのキスをした。



「なにを…!?」



(弟というには少し度が……!そうか二人に血縁はなかったな…。)




「マッケンゼン公爵、私は大丈夫です…暫くお待ち頂ければすぐに準備するわ。リンゼイを呼びます。」




表情は見えなかったが、そう言ってはだけだバスローブの胸元を押さえて足速に部屋を出たシエラを放っておけず、結局大人しく待つしか選択肢は無かった。



ジェレミアはリヒトと二人きりになると、いつもの通り柔らかく優しい笑みでテーブルとソファを指差して「そこで待ってて。」と言うだけだった。




「わかりました。」


にわかに広がる後悔。

(なぜ、また婚約者などと…。皇女の事など放っておけば良いものを…!)




「ねぇ、リヒト。」



ジェレミアが突然リヒトに声をかけ、軽く驚きながらも俯いていた視線をジェレミアに移す。



「今日はの件で来たの?それなら……」



「いいえ、婚約は取り消さないつもりだと伝えに来ました。」



「は?」


一瞬でジェレミアの笑顔は無になり、黒々と渦巻く何かが背景に見えるような気がした。


彼の中世的で驚く程の美貌は冷たく、射抜くようにリヒトを睨んでおりリヒトもまた、真っ直ぐにジェレミアを見据えていた。




「このような一方的な解消は受けられません。」



「リヒト、お前は姉様に興味などないだろう。それどころか鬱陶しく思っていた筈だ。父上への建前はいいから素直に手を引くといいよ。」



「それは、の話ですので。この後じっくりと皇女殿下と話し合います。」



「二人の?勘違いしているようだね…姉様は…」






「お待たせ致しました。皇女殿下が…っひぃ!」





急いでシエラの身支度とお茶の準備をして来たリンゼイは部屋を開けると二人が睨み合う物々しい雰囲気に思わず悲鳴を上げた。




「…。」

「…。」



「…はぁ。リンゼイ、姉様はもう支度が出来たの?」




「は、はい!」


(なるほどね、着飾る必要は無いと言う事か。)




「ま、いいよ。好きにしてみたら。僕は戻るよ。」




近頃の姉様を考えれば、きっと僕は後で怒られるのだろうと頭の中で考えながらリヒトに手を振ると、難しい表情のまま頭を下げるリヒトを流し見て部屋を出た。





「あら、ジェレミー戻るの?」


あからさまにほっとした様子のシエラに少しむかついたジェレミアは、すれ違い様に片腕でシエラのウエストを捕まえて抱え込むようにもう片方の手で頭を抱き寄せた。




「ジェレミー、いい加減にしなさい。お客様が来ているのよ。」



「…ごめんね、姉様。もうしないよ。」


近頃の姉様は扱い辛いかと思ったが、をした僕には甘い。



「…分かったわ。もう行って。」


自分よりはるかに背が高いジェレミアの頭を撫でて、眉を寄せて無理やり微笑んだ姉様に内心「チョロいな」とニヤリとして、一応しおらしく背中を曲げて立ち去った。




(寂しさで独占欲が強いだけで、まだ大人になれていないだけなのかもしれない。)




そう考えながら、部屋のドアを開けると憂う表情でソファに座るリヒトに思わずどきりと胸が鳴った。



(正義感が強いから助けてくれただけよ。それに…)





前世で断罪された時のリヒトを思い出す。

冷たくシエラを見下ろし、その隣には愛らしい女性が居た。


そう、




(そう、気まぐれよ。)






「先程は、失礼致しました。」



しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

売られた先は潔癖侯爵とその弟でした

しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ルビーナの元に縁談が来た。 潔癖で有名な25歳の侯爵である。 多額の援助と引き換えに嫁ぐことになった。 お飾りの嫁になる覚悟のもと、嫁いだ先でのありえない生活に流されて順応するお話です。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...