悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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リンゼイは心配している

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近頃の皇女殿下はお強くなられた。

いつも哀しげに窓を眺めている事が多かった殿下は近頃とても意欲的になったので幼い頃からこの皇女宮に務める者達はとても安心している。



両陛下の采配なのか、ジェレミア殿下の采配なのかは不明だがこの皇女宮には騎士を含め男性の使用人は年老いた執事長一人のみである。




「やあリンゼイ、姉様はどこ?」


「今日は慈善事業で孤児院を訪問されていましたので、入浴で疲れを癒やされております。」



「そう。それは?」



ジェレミアはリンゼイの持つ数通の未開封の手紙を指差す。



「これは…、全てマッケンゼン公爵からのお手紙です。」



「何だって?」

(アイツ姉様に興味など無かっただろう。逃げる者は追いたくなる質か?)



「そ、その….皇女様はお読みになられないのに、毎日届くんです….。」




「じゃあ、預かるよ…おっと!」



春といえどこの広い皇宮では肌寒く、湯冷めしないように小さめに焼べた暖炉の火にレイジェフは落としてしまった。



「あっ!」



「…ごめんね、リンゼイ。」



「いえ…。」

(どうしよう…)





「大丈夫よ、ジェレミー。どの道読まないから。」




「皇女様…!」



そう言いながら現れたのはバスローブに身を包みまだ少し濡れた髪を下ろしたシエラであった。



アクセサリーやドレスで飾っている訳でもなく、バスローブのみを羽織って出てきたシエラだがただそれだけでとても美しかった。


だが、今までのおどおどしいシエラではなく堂々とした姉らしい彼女は何故かジェレミアの不安を煽るのだ。




「姉様…。いいの?リヒトからの手紙では?」




「ええ、いいのよ。要件はもう済んだわ。」




「…ふーん。それで、その格好は?」




「ごめんなさいね、突然来るから急いで出てきたの….。」




「いくら男性がいないからって、その格好でウロウロしないでね。」




「そうね、姉弟とは言え見苦しい物をお見せして申し訳ないわ…。」




「そうじゃな……はぁ、まあいいや。」




「公爵閣下!困ります…!!」



「陛下の許可は頂いている、皇女殿下に通してくれ。」



何やら突然扉の前が騒がしくなる。



「女性騎士では、役に立たなかったようだね。」


「彼が相手では男性であっても同じでしょう。」




鋭く扉を睨みつけシエラを隠すように立ったジェレミアの後ろでせめて、胸元をとバスローブの乱れを正したシエラは頭が痛い仕草をしながら言った。



(父上も余計な事を…!)


「皇女様っ…、」


「いいわリンゼイ、開けて下さい。」




「姉様!!」



「どのみち陛下の許可があるのです、突破されるわ。」



少し投げやりに言い捨てたシエラに返す言葉もなくなったジェレミアはあっという間にいつも通りの笑顔でリヒトを迎えた。




「皇女殿下に拝謁致します。突然のご訪問をお許し下さい。」


「マッケンゼン公爵…


「顔を上げてよリヒト。ようこそ。」



シエラの声を遮り、膝をついたリヒトの肩に手を置いたジェレミアに少し驚くリヒト。



「皇太子殿下、ご挨拶が遅れ申し訳ありません。不躾ながら陛下の許可の元、皇太子殿下、皇女殿下にご拝謁致します。」




「ああ、いいんだ。ただ姉様はちょっと準備が必要でね。」



そう言ってチラリと見たシエラのバスローブ姿に驚き赤面したまま見ないように俯くリヒト。


まるで見せ付けるように、シエラの腰を抱いて髪を寄せてやるとくすぐったそうにジェレミアを制止する声に思わずリヒトは顔を上げた。


「ジェレミー、っ」


「髪くらい遠慮しないで。…あ!」


ジェレミアは自らの指輪をバスローブの中に落としてしまいその金属の無機質な冷たさに思わずシエラは小さく悲鳴をあげた。


「…っや!」



「ごめんなさい姉様…。」



「いいわジェレミー、ウエストで止まったみたい。着替える時に取っておくわ。」



「それは父上から引き継いだ指輪なんだ…姉様。…。」



シエラはジェレミアのこの目を知っていた。

彼がシエラを支配する時必ず見せる少し怖い表情だった。

準備をしに行ったリンゼイは居ないのでこの部屋には三人。



まるで固まってしまったかのように動けないシエラは植え込まれた支配の深さに自らを呪った。



「…ジェレミー、せめてドレスルームに。」



シエラを無視して後ろから抱きしめるようにバスローブの胸もとからそっと片手を入れたジェレミアにリヒトは驚愕して言葉を失う。



「殿下…!それなら私は一度外に…!」



「いいんだリヒト。すぐに終わるから。」




「…っだめよ、~んっ!!!!」


ジェレミアはそっと撫でるようにバスローブの中に手を這わせる。

 
「殿下…っ!」


リヒトは顔を真っ赤にして俯くが、シエラの声にまた顔をあげてしまいシエラと目が合う。

羞恥に震えながらも決して屈しないシエラの表情。



リヒトをなんとも言えない感情が襲う。

どす黒い何かが込み上げるような、今すぐにシエラを引き寄せてジェレミアから引き離してしまいたいような…




(なにを…ましてや姉弟ではないか。)






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