悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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変わった皇女と孤高の公爵

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「…!いえ、私こそ突然のご訪問で申し訳なかった。」




いつものシエラなら多分、それでも良いのだと頬を染めてはにかむ場面であろうこの瞬間にもリヒトのエスコートを待つ訳でもなく窓の外をちらりと眺めながら優雅に席についたシエラは、妙に大人びていた。



「ほんとね。」


「….、」


「ふっ、冗談ですよ。それでご用件は何だったのかしら?」




先程までジェレミアの指先に身体を跳ねさせ、羞恥と恐怖に震えていた初心な少女はあっという間に、堂々としたの顔となっていて、先程のは自らの邪な妄想だったのではないかと罪悪感すら込み上げる程ねあっま。




「何度も手紙をお送りし、皇宮を尋ねたのですが。会って頂けなかったのでこうして陛下を通して訪ねました。」





爽やかな笑顔でそう言うリヒトに顔を引き攣らせるシエラ。



(ゔっ….)

「そ、それは…私も忙しくて、申し訳ありませんわ。」




「そうですか。それなら、




「…ええ。少しなら。」



「よかった。」


(二つ返事で快諾すると思ったのに…公爵どういうつもりなの、)




満足げに微笑んだリヒトにシエラは内心ため息をついた。




「まず、私はこの婚約を解消するつもりはありません。」



「っ!何故、あんなに望んでいたでしょう。」



リヒトは何故自分がそんな事を言ったのか、自分でも分からなかった。



「…私も適齢期なので。婚約者がいる方が都合がいいんです。」



「そんな、困ります。態々嫌いな相手と婚約しなくても貴方なら愛した人と一緒になれるでしょう。」



「そのような人はいません。」


ムッとしたような顔で間髪入れずに返事をしたリヒトに驚いたシエラとリヒト自身。


シエラは押されまいと、急いで言葉を探す。



「これからできるかもしれません、」



「王位継承権を返上したと聞きました。ここでマッケンゼン公爵家の後ろ盾を失えば更にお立場が弱まると思われますが。」



「そんな事は問題ではありません。ジェレミーが継ぎます。私はただの駒に過ぎません。」





「!」



「心配をして下さるのなら、婚約解消を承認して下さい。」




「…っなら、貴女はどうして生きていくおつもりですか?」




「生きる為に放棄するのです。皇族としての幸せが私にとっての幸せとはかぎりません。」



「…それはどう言う、」




「とにかく、貴方はちゃんと愛する人と将来を生きる権利があります。つまらない意地で棒に振らないで。巻き込んでしまった事はごめんなさい。」





「皇女殿下…っ」



「もう、今が




そう言ったシエラは静かに流れる川のように穏やかであるが、下手に踏み込めば足元を掬われるだろう激流のようでもあった。


確かにシエラには嫌悪感があったし、今も愛しているわけではない。

だが、何故か彼女が気になるのだ。

胸騒ぎのように胸中を掻き乱され、視線が外せない。




女性は苦手なはずだったのに、彼女をジェレミアから助けた時に合った目が、香りが優しく、甘美で、泣きたくなるほど切なくなった。



弟であるはずのジェレミアに嫉妬した。



「…っ承知しかねます。」



「マッケンゼン公爵。」



「では時間を下さい。ひと月の内に皇女殿下の気が変わらなければ潔く身を引きましょう。」



「…好きにして。」


(まだ時間は沢山あるわ、他の事から進めればいい。)



「では、お茶の後は久しぶりに庭園を歩きましょう。」



(自分でも理由は分からないが、それならば足を踏み入れてみるしかない。)




「えっ?」

(帰らないの?いつもはあんなに帰りたそうなのに、)



「今、貴女と離れると….一生の後悔になるような気がする。」




突然、真剣な表情でそう伝えたリヒトにシエラの胸は苦しくなった。





(愛していたわ…けど、あの子を守る為にきっとまた私を捨てるわ…今はまだ時期が早いからよ。)




「気のせいよ。庭園に行きたいなら案内させるわ。先に失礼します。」




「シエラ皇女っ…!なぜ、そんなに…突然、」



「さっきも言ったでしょう。生きる為よ。」




そう言って微笑んだ彼女はとても美しく、凛々しかった。

リヒトは時が止まったような気がした。



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