元カレの今カノは聖女様

abang

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疲労と心労、休息の間に悪は……

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「ディート……」


「イブ!!!」

「カミル、大丈夫だ。心労だろう何年もずっと一人で闘ってきたんだ……」

大丈夫だと、そう言ったはずのディートリヒはとても悔しそうな表情でイブリアを大切に抱えていた。

カミルもまた悔しげな表情で、そんな二人の様子にセオドアはぎゅっと拳を握りしめて俯いた。もう戯けて誤魔化したりはしなかった。




イルザはそんなカミルとディートリヒの様子を見て、少し瞳を和らげると「イブリアは大丈夫だな、お前達」と一言だけ言うと、国王が晩餐会の解散を告げた。


「私とイルザとフォラント公爵は話がある、念の為皆用心するように。ルシアン、王妃を部屋に送り届けるんだ」


「ですが、イブリアが…….っ!」

「ルシアン!初めに命を狙われたのは私なのよ?何故イブリア様を……」

「セリエ……」


「ルシアン、イブリアの事はお前が気にする事ではない。王妃を送り届けて早く部屋に戻って必要な事をしろ。聖女は部屋に待機させるよう」


「…….はい。ごめんセリエ、後で話そう」

「私からも話があるわ、セリエ」

「王妃様…….っ」

(まずいわ……何か良くない雰囲気ね。勘付かれてる)



その場は解散となったものの、セリエは騎士達を言いくるめて待機させルシアンを追いかけた。


「ルシアンっ!さっきは御免なさい」

「セリエ!?何故来たんだ、危険だから部屋で待機しろと」

「でも、王妃様が心配で!お部屋にいらっしゃるなら様子を診たいの!」


「……それはできないよ。ひとりにしてくれと仰った」


「大丈夫よ、きっと私なら」


「母上は酷く衰弱してるんだ、今日はやめておこう」



ルシアンのその言葉にセリエはシメたと思った。


「それは!黒魔術の類いかもしれないわ!犯人の本当の狙いが誰かはまだ分からないのよ!?安心できないわ……!」



「なんだと!?」


「早く行きましょう!」


聖女には一度だけ使える「戒めの力」が備わっていた。

他者の心臓に戒めの棘を巻きつける魔法だった。

本来は、浄化しきれない程の強敵を殺さずに更正させる為に聖女に一度きりのみ許された相手を服従させる力だ。

その力を使えば胸元に薔薇のタトゥーが現れるが、その力の存在すら殆ど知られていない。

(ましてや服を着ていれば分からない……国王は無理なら、バレてしまう前にこうするしかないのよ)




「セリエ……あなた……」


「王妃様、私を疑っていらっしゃるのは分かっています。けれど先ずは、王妃様のお体が大切です……私の母の様な存在ですから」


「セリエっ」

ルシアンは少し感動したようにセリエの名を囁く。

王妃もまたセリエの無害な笑顔に何故か心が安らぐ感覚に堕ちて、疑心とセリエへの信頼が身体の中で葛藤した。

(この子は優しい子…….けれども策士かもしれない)



「せめて、簡単な治癒だけでもさせて下さい……御気分が良くなります」

それくらいならば大丈夫だろう。

ルシアンと王妃はセリエへの信頼から頷いた。


その時だった、王妃は心臓を鷲掴みされたような何故かセリエには逆らってはいけないような感覚が湧き出てきた。


「セリエ……あなた」

「まぁ!御気分はまだ優れませんか?」


「……いいえ、貴女のおかげで良くなったわ」

そう言って微笑んだ王妃の穏やかな笑顔にセリエは戒めの力は成功したのだと確信した。


(これで王妃は言いなり。正気に戻れても逆らえない)


「よかった!!母上!!」


「よかったです!では、私は戻ります」


「そうね、ルシアン。今夜はしっかりセリエを守るのよ」


「母上っ…….そんな!」


ルシアンは顔を赤くして、否定したがセリエはいつもの清らかな表情を潜め妖艶な雰囲気で耳打ちする。



「私はいいわよ、ルシアンなら……初めてをあげても」


「セリエ…….っとにかく出よう。失礼します母上!」



部屋を出て、ルシアンの部屋へと到着するとセリエはルシアンの赤くなったままの耳たぶを甘噛みする。


「私、不安だし、怖いわ。ルシアンでいっぱいになれば平気な気がするの」


(だが、私はイブリアを愛していると自覚したばかりなのに……)


それでもルシアンがセリエを手放せないのが答えだった。

善良で清らか、心優しく天真爛漫な彼女の魅力に惹かれていたからだ。


そんな、例えるならば純白のセリエが自分に汚れたいと囁く。

セリエの囁く言葉一つ一つが、服従するように跪いてベルトに手をかけるその姿が、ディートリヒと比較して失われていく自分の矜持を取り戻させてくれるような気がした。


(王太子の子を孕めばこっちのもの、バレても死刑にできないしルシアンは何が何でも私を庇うはず……王妃もね)


「セリエ…….っやっぱりダメだ……っ」

「いいえ……ダメじゃないわ」


そう言ったセリエの口内の温かさを感じたルシアンはもう拒絶する言葉を失っていた。

なし崩しにセリエに陥落したルシアンが欲望のままをセリエに注ぎ込むと、セリエは口の両端を吊り上げた。



(これで、王太子妃の座は、王妃の座は私のもの……)




何度も、何度も繰り返し一晩中馬鹿になったようにセリエを求めるルシアンは初めて知った感覚に酔いしれていた。


「こんな事は習わなかった」

「何事も予習と実戦では違うでしょう」

「平気か?セリエ……」

「ええ……幸せよルシアン」


メイド達の報告ですぐに二人の婚前交渉の事実は王妃に知れたが、セリエにとってそんな事は問題ではなかった。


「おはようございますセリエ様、ご準備を……あれ?そんなタトゥーは元々ありましたか?」


「いいえ……入れることにしたのです」



「そうですか…….??」



 
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