元カレの今カノは聖女様

abang

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呪いと、願い

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「聖女?」

「あぁ……どうやら陛下の予想通りだったようだ」


「けど、聖力じゃなくだった!魔法とは原理が違うよ、怨念のようなものだから防御も解除も困難、けれど対価がある筈です。さえ分かれば対策は出来る……」



レイノルドは呪いについて思い出せる限りを懸命に搾り出して伝える。




「解除は、俺とディートが何とかする」


「はい……けれど危険……!?」



すると、反対側の門の方から大きな音が聞こえて、魔法による衝撃音が響く。


「セオドアとルシアンだね、派手にやってるなぁ」


「レイノルドは他の者を連れてケルエンの外へ……民間人は?」



「もう、殆どが避難し終わったと思われるけど……城だけは固く閉ざされたままのようですよ」



「城だ、これ以上は待てない。カミル、セオドアとルシアンを此処へ」


「ああ……頼むから俺達まで消してくれるなよ」


「イブの場所が分からない。無茶はしない」




ディートリヒ達が城に迫る中、ケルエン城内の一室ではセリエと王太子イスルカが眠るイブリアの側で何やら筆談をしていた。


"本当に大丈夫なんだな?"


"少しでもいい、血にさえ触れられれば力は効くわ"


"効果の持続は?"


"分からない、けれどイブリアはまだ眠っているわ"


"なら、いい。母上はランベールを欲しがっている。全勢力で奴等を迎えよう"

(なに、たったの四人だ……これでイブリアは私のもの)



"本当に貴方の為に力を使えば、王太子妃になれるのね?"


"ああ、そうだ"


なんとしてでも返り咲きたいセリエの気持ちを利用するイスルカはセリエを王太子妃になどするつもりは無かった。


ランベールを制圧し、手に入れた末には親交の為だと最もらしい理由を作ってイブリアを妻に要求するつもりだった。


(この女は、監獄で娼婦のように扱われていた上に聖力は消え、呪いを使っている……妻になどありえない!)


セリエに適当な用事を与えて部屋から追い出すと、イスルカはイブリアの頬に触れようと手を伸ばした……




「イブリア嬢よ……少し早いがどうせその唇も私のものとなる……」



イブリアの頬に指が近づく、まだ触れていない筈のイスルカの指が痺れ目の前がぱあっと明るくなる。


「な、なんだ……ッ!」


弾き飛ばされるようにイスルカの身体がイブリアから離れる。


眠っていても尚イスルカを拒絶するイブリアに腹が立ったイスルカは強引にイブリアに覆いかぶさろうとした。




「触れないで。私に触れていい男はひとりだけよ」



イブリアの美しい桃色の瞳が見えて、彼女が目を開いたのだと理解すると同時に城を囲う屈強な塀が一瞬で吹き飛んだ。


大きく揺れる城、兵達が雄叫びを上げる声。


戦いが始まったのだと分かると、イスルカは何故か肌に感じる魔力のどれもが恐ろしく感じられて震えた。



「く、そ……血を……」


「呪いね、相手が弱くて助かったわ」



イブリアは皆が自分の魔力に気付いただろうと予想すると、物凄い速さでこちらに向かってくる愛おしい人に向けて呟いた。


(私を信じてくれるわよね)



「思いきりやって頂戴、ディート」






「ーっうわぁ!!助けッ、ひっ!あぁぁぁ!!」



積木でも崩したかのように崩れる城、地面は大きな唸り声のような音を上げて城を吸い込む。



イブリアは自分の魔法で身を守りながら、二人に届くように魔法を使って伝える。

瓦礫となった城が舞う中で、魔法でディートリヒとカミルの頭の中に話しかけた。


「発動条件は血よ、血に触れれば呪いをかけられるの。効力は薄いけれど未知数」




「「!」」


「やはり、イブは無事だ」


「そのつもりで、城を崩したろ」


「イブならきっと無事だと思ってな」


もう、どこが部屋だったのかもわからないほど崩れてただ瓦礫が積み上がっただけのケルエン城を魔力の気配だけを頼りに歩く二人はどことなく安心した様子だった。


そんな二人の目の前に座り込む淡い桃色の髪



「イブ!」

「イブ、怪我をしたのですか!?」


そう言って駆け寄ろうとした二人はふと何かに気付いて立ち止まる



「ディート?お兄様?」


不安気に二人を見た瞳の色は確かに桃色の瞳だったが違った。



すっと表情を失わせたカミルに「僕が……」と呟いて彼女の方へと歩くディートリヒにぱあっと表情を輝かせてうっとりとした表情で両手を伸ばす。


「ディートっ!」


「イブは、そんな下品じゃない」



そう言ったディートリヒの瞳は恐ろしい程に冷たかった。




「せっかく声も出るし、姿だって変えてもらったのに……っ」


ディートリヒの魔法に囚われた女性の姿がカミルによって元に戻って行く。



美しく煌めく銀髪だったはずの髪はくすみ、爽やかな緑色の瞳も雲っているが間違いなくであるセリエだった。



「やはりな」


「ディート!囲まれてるぞ」


「数だけは多いな」



「俺の妹が、そんなに小汚い訳ないだろう。さっさと消してやりたいよ」



だ」



「あ、あなた達!私を殺すの!?聖女は殺せない筈よ……っ!」



「自分で気付いていないらしいぜディート」


「ああ、お前はもう聖女でも何でもない。その力は呪いだ」



「え……」

セリエは一瞬にして倒されていくケルエンの軍をディートリヒの作った透明の箱の中で眺めながら、自分が聖女では無くなった事を受け入れられずに泣いた。



「出してよ!何で私の邪魔をするのっ」



そんな時だった、赤々とした魔力が光って遥か遠くまで居たはずの大軍が吹き飛ばされる。


「言いたいことは全部ですか?」


ふっと笑ったディートリヒがあまりにも美しくて、格好よくて、安心したようにも見えるその表情はどこか可愛らしかった。




(ああ、欲しい。なんで私じゃないの……イブリア!)




「大切なものにちょっかい出されるのは許せないの、セリエ」




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