52 / 56
使用人ヒッピからみた二人
しおりを挟むヒッピは幼いながら、スラム育ちの所為もあって生きるために身につけた強を持っている。
それでもまだ十歳の子供で、だからこそイブリアはそんなヒッピを大切にしてくれていた。
「あー退屈だなぁ」
子供は遊ぶのが仕事だと言うイブリアの命を遂行する為に遊び相手を探しているものの、皆忙しそうで声を掛けれずにいる。
「ぼくと修行してくれるひといねーかな」
俺ではなくぼくと言い始めたのは尊敬するディートリヒ様の真似をしたからだった。
あんな人になりたいと言ったら、メイド見習いのシェイルは「子供っぽいヒッピには似合わないよ」と笑ったけど絶対そうなってイブリア様のことを僕が守るんだ。
結局一日中、城の仕事を見学したりイブリア様に呼ばれて勉強をして過ごして晩餐を終えた後はすんなりとベッドに押し込められた。
執事長のアンセルは凄く強くて、ディートリヒ様のお側で執事長として仕えているけど、もう歳だからぼくが強くなって頑張るんだ。
そう考えていると、妙な気配がいくつかして上の階のイブリア様の部屋からだった。
ディートリヒ様はイブリア様の事には敏感だからすぐに駆けつけるけど、それよりもっと先に駆けつけるのが護衛の役目だと得意の瞬間移動で部屋の中に失礼したけど、ディートリヒ様が驚いた顔で呆然としていた。
「イブ……ほんとうに大丈夫ですか?」
「ええ。驚いたけれど一瞬で終わったわ」
困ったように笑うイブリア様は可愛い、続けてちょっと大人っぽくディートリヒ様の目を見て「心配なら早く一緒に眠ってよ」と甘えると、
ディートリヒ様は途端に顔を赤くして、言葉を失うと視線を逸らした。
(イブリア様はオトコゴコロが分かってねーなぁ!)
「イブリア様!ディートリヒ様はガマンしてるんだよ!」
「ヒッピ……やめろ」
ディートリヒ様がぼくの襟を掴んで猫みたいに持ち上げると赤い顔のまま「子供は寝る時間だ」といつもの顔を装って言った。
「我慢って……?」
「イブリア様、旦那様」
駆けつけたアンセルは当たり前のように転がる刺客達を見下ろして、「不甲斐ない」と言ったがまずこの人たちは護衛が必要なのか?とさえぼくは思っている。
「アンセル、大丈夫よ。何処の者か尋問して頂戴」
「僕が直接確かめます」
そう言ったディートリヒ様の瞳は凄く怖くて、イブリア様の侍女のアメリアとメアリ以外の使用人は顔を青白くさせた。
「アメリア、ヒッピをお願いできるかしら?」
「はい。ヒッピ、おいで」
アメリアはいつも涼しい表情をしていて、あまり表情が変わらないけれどとてもいい人だって知ってるから僕は手を伸ばして抱きついた。
メアリが「お着替えを用意します」とイブリア様を連れて出るとアンセルが小さな声で明日の朝伝える予定の要件ですが、と何かを話し始めた。
「セオドア殿下からお手紙が、イブリア様宛で……」
「ああ、では僕が預かる……おっと」
「うっかり燃えてしまったな」と手のひらでチリになった手紙を無表情のまま魔法で消すと呆れているアンセルが咎める前に手紙の時を戻して「嘘だ」と真顔でアンセルに手渡した。
(て、天才だ!カッコいい!!!)
「中身を確認して、害がなければイブに渡してくれ」
「御意」
アメリアが小さな声で「燃やしたままでよかったのに」と言いながらもぼくを抱っこして頭を下げて何事もなく部屋を出るから少し笑った。
「イブリア様から、ヒッピにはまだ護衛は早いからしっかりと寝て学ぶように言われているの。だからもう寝なさいヒッピ」
そういうアメリアの護衛は単調だが何処か優しくて好きだ。
ここの城の者達はみんな、いい人ばかりでそれはディートリヒ様とイブリアさまがいい人で凄い人だからだと思うんだ。
翌日からはどうしてだか、ディートリヒ様がイブリア様と一緒に寝るのだと侍女達が喜んでいて騎士達はそわそわしていた。
ぼくが、ディートリヒ様に「ガマンはやめたのですか?」って聞いたらみんなは慌ててたけど、ディートリヒさまは少しだけ目を見開いて顔を赤くすると、
「ああそうだな」って顔を隠すようにそっぽ向いてから目線だけぼくにもどして照れたようにはにかんだ。
アンセルには叱られたけど、幸せそうなディートリヒ様とイブリア様を見られて僕は嬉しかったからいいんだ。
114
あなたにおすすめの小説
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる
冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」
謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。
けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。
なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。
そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。
恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。
私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
もう何も奪わせない。私が悪役令嬢になったとしても。
パリパリかぷちーの
恋愛
侯爵令嬢エレノアは、長年の婚約者であった第一王子エドワードから、公衆の面前で突然婚約破棄を言い渡される。エドワードが選んだのは、エレノアが妹のように可愛がっていた隣国の王女リリアンだった。
全てを失い絶望したエレノアは、この婚約破棄によって実家であるヴァルガス侯爵家までもが王家から冷遇され、窮地に立たされたことを知る。
私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる