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第16話 知り始める世界
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「それで、どうだろう、まずは君の方から聞いておきたいことはあるか?」
「えっと……」
いくつかある。どれから行こう。
「あの、私、部屋から出てもよろしいのでしょうか」
「んっ……」
ヴァンパイアが変な声を出した。
ちらりと表情をうかがうと、彼は笑いを押し殺している顔をしていた。
「…………」
ユリウスがヴァンパイアを睨みつける。
「ああ、ごめんごめん……なんだお前、お妃様のことさらってきたのか? おかわいそうに、ははは」
ユリウスの視線を受けてヴァンパイアはむしろ遠慮をなくし、楽しそうに笑い出した。
右腕、うやうやしい態度、それは仕事上だけでの間柄のようだ。
本来の二人はこのくらい打ち解けて話の出来る友人なのだろう。
「……いや、返す言葉もない」
ヴァンパイアの態度に怒ることもなく、ユリウスは困り顔を見せた。
「……俺の説明不足だ。笑われるのも仕方ない」
「な、なんだかごめんなさい……」
私はビクビクと頭を下げた。
「謝らなくていい……王妃、君は俺に誘拐されたのだ、幽閉をされているのだとでも思っているかもしれないが、そういうことはない」
「は、はい」」
「君は王城の中では自由だ。もっとも、さすがに城の外は魔族の危険もあるし、城の中も決して一枚岩というわけでもない。君につけたニンフとシルフは信頼の置ける者達を選んでいるから、彼女らをつけて動く分には城の中では自由にしてくれて構わない。……しかし、もし城の外に出たい場合は……」
ユリウスは少し考え込んだ。
「俺に連絡してくれ。……ヴァンパイアをつけよう。戦闘力は申し分ない」
「他の問題があると言いたげだ」
ヴァンパイアは茶々を入れた。
「…………」
ユリウスは今度は無言でヴァンパイアを睨みつけた。
「すまんすまん」
ヴァンパイアは軽くそう言った。
仲がよろしいのですね、と喉まで出かかったけど、それを言ったらユリウスがもっと困った顔をしそうだったので、飲み込む。
「ただヴァンパイアがついていても、城の外となるとどこに行ってもいいとはさすがに言えない。ドラゴンの巣とか、ゴブリンの狩り場とか、危険地帯はたくさんあるからな」
なかなかに想像つかない世界だった。
「わかりました。今のところ外に出たいという気持ちはないのでお気になさらず」
何だかんだ言ってもここは魔界だ。
堂々とどこにでも行きたいと思えるほど私は肝が据わっていない。
「そうか。……城の中では行きたい場所があるのか?」
「え、ええと、行きたいわけではなくて……でも、あの、刺繍……刺繍のために仕立て部屋にお邪魔しようかなって。ええと、糸が切れてしまいまして。だから、その、ニンフと話してまして……」
「そうか、それはいい」
私のしどろもどろな説明をゆっくり聞くと、ユリウスは少しだけ笑って見せた。
とても良い笑顔だったのに、胸が締め付けられるような気持ちがした。
「えっと……」
いくつかある。どれから行こう。
「あの、私、部屋から出てもよろしいのでしょうか」
「んっ……」
ヴァンパイアが変な声を出した。
ちらりと表情をうかがうと、彼は笑いを押し殺している顔をしていた。
「…………」
ユリウスがヴァンパイアを睨みつける。
「ああ、ごめんごめん……なんだお前、お妃様のことさらってきたのか? おかわいそうに、ははは」
ユリウスの視線を受けてヴァンパイアはむしろ遠慮をなくし、楽しそうに笑い出した。
右腕、うやうやしい態度、それは仕事上だけでの間柄のようだ。
本来の二人はこのくらい打ち解けて話の出来る友人なのだろう。
「……いや、返す言葉もない」
ヴァンパイアの態度に怒ることもなく、ユリウスは困り顔を見せた。
「……俺の説明不足だ。笑われるのも仕方ない」
「な、なんだかごめんなさい……」
私はビクビクと頭を下げた。
「謝らなくていい……王妃、君は俺に誘拐されたのだ、幽閉をされているのだとでも思っているかもしれないが、そういうことはない」
「は、はい」」
「君は王城の中では自由だ。もっとも、さすがに城の外は魔族の危険もあるし、城の中も決して一枚岩というわけでもない。君につけたニンフとシルフは信頼の置ける者達を選んでいるから、彼女らをつけて動く分には城の中では自由にしてくれて構わない。……しかし、もし城の外に出たい場合は……」
ユリウスは少し考え込んだ。
「俺に連絡してくれ。……ヴァンパイアをつけよう。戦闘力は申し分ない」
「他の問題があると言いたげだ」
ヴァンパイアは茶々を入れた。
「…………」
ユリウスは今度は無言でヴァンパイアを睨みつけた。
「すまんすまん」
ヴァンパイアは軽くそう言った。
仲がよろしいのですね、と喉まで出かかったけど、それを言ったらユリウスがもっと困った顔をしそうだったので、飲み込む。
「ただヴァンパイアがついていても、城の外となるとどこに行ってもいいとはさすがに言えない。ドラゴンの巣とか、ゴブリンの狩り場とか、危険地帯はたくさんあるからな」
なかなかに想像つかない世界だった。
「わかりました。今のところ外に出たいという気持ちはないのでお気になさらず」
何だかんだ言ってもここは魔界だ。
堂々とどこにでも行きたいと思えるほど私は肝が据わっていない。
「そうか。……城の中では行きたい場所があるのか?」
「え、ええと、行きたいわけではなくて……でも、あの、刺繍……刺繍のために仕立て部屋にお邪魔しようかなって。ええと、糸が切れてしまいまして。だから、その、ニンフと話してまして……」
「そうか、それはいい」
私のしどろもどろな説明をゆっくり聞くと、ユリウスは少しだけ笑って見せた。
とても良い笑顔だったのに、胸が締め付けられるような気持ちがした。
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