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第15話 晩餐
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晩餐用に用意されたのはまたしても黒衣のドレスだった。
私の国では黒衣は喪服だったり、未亡人が身につけるものだったが、魔王城、あるいは魔界ではこれが正装なのかも知れない。
ユリウスには黒衣がよく似合っていた。
自分には似合っているのだろうか? よく分からない。
晩餐用のドレスは昼間に着ていたのより、コルセットの締め付けがきつかった。
パニエがもっと入ってスカートがより膨らんでいる。スカート部分のレースが増え、豪華になっている。
刺繍が多くほどこされ、黒い真珠とダイヤが散りばめられている。
襟は四角く開いていて、袖は途中まで細く、先だけ広がっている。
大きな姿見の前に立たされて、銀の髪に花飾りをかぶせられた。
下手に動くと落としてしまいそうでビクビクする。
「お妃様、どうぞ胸を張ってくださいな」
ニンフがニコニコと笑う。
「は、はい……」
おどおどと鏡に向かって胸を張る。
身に纏っているものばかりが立派で、表情が硬い弱々しい女がそこにはいた。
これでは到底魔王のお妃様とは思われないだろう。
胸中で苦笑してしまうが、やはりそれは表情に出ない。
硬い表情のまま、私は鏡の中で迷子のように情けない顔をしていた。
「悪いな、王妃、急に誘って」
ユリウスは晩餐の席に先についていた。
夕食は部屋を出て、少し歩いた先の部屋に用意されていた。
おそらくユリウスの部屋でもないだろう。食堂、といったところか。
かなりの量が用意されているけれど、食べる分だけよそってもらう方式だったので、小食の私でも安心だった。
ユリウスのそばには燕尾服を着たユリウスとあまり年の変わらなそうな男が立っている。
給仕だろうか、執事かも知れない。
「いえ、どうか、お気になさらず……」
私は首だけで頭を下げた。
そんな私の後ろにはニンフがついてくれている。
人前……魔族前でユリウスと話をするのは到着以来だ。
うっかり名前を呼ばないように気を付けなくては。
「紹介しよう。こいつは、俺の右腕を務めているヴァンパイアだ」
ヴァンパイア、吸血鬼。血を吸う魔族。
たぶんニンフの言っていた主食の違う魔族のひとりでもあるのだろう。
「こ、こんばんは」
声が震える。どうしても少し怖いと思ってしまう自分がいる。
ああ、でも、ユリウスには驚いたけど、怖いと思うことはなかった気がする……。
「どうぞよろしくお願いいたします、お妃様」
ヴァンパイアはうやうやしく礼をして見せた。
口を開くと尖った牙が見えた。ヴァンパイア……。
「以後、お見知りおきを」
「は、はい……どうも」
本当は私はこうおどおどしていてはいけないのだろう。
王妃というものがどれだけ偉いのか、私にはわからない。
人間界での王妃のことすら私には縁遠くてどうもわからなかったけれど、ニンフとシルフ、ヴァンパイアの態度を見れば、形だけでも敬われているのはわかる。
それらは私個人に対するものというより、『ユリウスの妃』に対する礼儀なのだろうけれど。
「ええと、それで、あの、ユリ……陛下は私に何かご用でしたでしょうか?」
「ああ、あまり説明もせずに連れてきてしまったから、出来る説明は出来る時にしておこうと思ってな。何分、公務が忙しい。こうして夕食くらいしか時間を取れなくて、すまない」
「あ、謝らないでください。私なら大丈夫です」
「そうか」
ユリウスはうっすらと笑った。
私の国では黒衣は喪服だったり、未亡人が身につけるものだったが、魔王城、あるいは魔界ではこれが正装なのかも知れない。
ユリウスには黒衣がよく似合っていた。
自分には似合っているのだろうか? よく分からない。
晩餐用のドレスは昼間に着ていたのより、コルセットの締め付けがきつかった。
パニエがもっと入ってスカートがより膨らんでいる。スカート部分のレースが増え、豪華になっている。
刺繍が多くほどこされ、黒い真珠とダイヤが散りばめられている。
襟は四角く開いていて、袖は途中まで細く、先だけ広がっている。
大きな姿見の前に立たされて、銀の髪に花飾りをかぶせられた。
下手に動くと落としてしまいそうでビクビクする。
「お妃様、どうぞ胸を張ってくださいな」
ニンフがニコニコと笑う。
「は、はい……」
おどおどと鏡に向かって胸を張る。
身に纏っているものばかりが立派で、表情が硬い弱々しい女がそこにはいた。
これでは到底魔王のお妃様とは思われないだろう。
胸中で苦笑してしまうが、やはりそれは表情に出ない。
硬い表情のまま、私は鏡の中で迷子のように情けない顔をしていた。
「悪いな、王妃、急に誘って」
ユリウスは晩餐の席に先についていた。
夕食は部屋を出て、少し歩いた先の部屋に用意されていた。
おそらくユリウスの部屋でもないだろう。食堂、といったところか。
かなりの量が用意されているけれど、食べる分だけよそってもらう方式だったので、小食の私でも安心だった。
ユリウスのそばには燕尾服を着たユリウスとあまり年の変わらなそうな男が立っている。
給仕だろうか、執事かも知れない。
「いえ、どうか、お気になさらず……」
私は首だけで頭を下げた。
そんな私の後ろにはニンフがついてくれている。
人前……魔族前でユリウスと話をするのは到着以来だ。
うっかり名前を呼ばないように気を付けなくては。
「紹介しよう。こいつは、俺の右腕を務めているヴァンパイアだ」
ヴァンパイア、吸血鬼。血を吸う魔族。
たぶんニンフの言っていた主食の違う魔族のひとりでもあるのだろう。
「こ、こんばんは」
声が震える。どうしても少し怖いと思ってしまう自分がいる。
ああ、でも、ユリウスには驚いたけど、怖いと思うことはなかった気がする……。
「どうぞよろしくお願いいたします、お妃様」
ヴァンパイアはうやうやしく礼をして見せた。
口を開くと尖った牙が見えた。ヴァンパイア……。
「以後、お見知りおきを」
「は、はい……どうも」
本当は私はこうおどおどしていてはいけないのだろう。
王妃というものがどれだけ偉いのか、私にはわからない。
人間界での王妃のことすら私には縁遠くてどうもわからなかったけれど、ニンフとシルフ、ヴァンパイアの態度を見れば、形だけでも敬われているのはわかる。
それらは私個人に対するものというより、『ユリウスの妃』に対する礼儀なのだろうけれど。
「ええと、それで、あの、ユリ……陛下は私に何かご用でしたでしょうか?」
「ああ、あまり説明もせずに連れてきてしまったから、出来る説明は出来る時にしておこうと思ってな。何分、公務が忙しい。こうして夕食くらいしか時間を取れなくて、すまない」
「あ、謝らないでください。私なら大丈夫です」
「そうか」
ユリウスはうっすらと笑った。
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