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1、離婚が決まった日
しおりを挟む先程旦那様にサインを頂いた離婚届を抱きしめながら、力なく膝から崩れ落ちる。
何とか部屋に戻るまでは背筋を伸ばして歩いてきたけど、もう限界だわ…。
旦那様は、やはり私の事をなんとも思っていなかったのですね。
3年という短い間ではあったけれど、私達は夫婦だった。
夫婦と言っても、会うのはパーティと月に一度の子作りの日だけだったけれど、それでも3年間は共に居たのに。
私が差し出した離婚届を見ても、なんの躊躇いもなくサインをするだなんて、それ程私はあなたにとってどうでもいい存在だったの…?
この3年間、どうにか彼に愛してもらえるように努力した。
だけど、どれも全く意味はなかった。
彼が女嫌いだと言うのは結婚する前から知っていたけど、それでも彼と一緒になれるなら幸せだと思って結婚をした。
好きな人の近くで過ごせるなら幸せだと思っていた。
だけど、そうでは無かったと結婚して直ぐに気付いてしまった。
好きな人が決して私の事を好きになってはくれない。
日々その事実を突き付けられ、勝手に傷付き、自分勝手にも彼の元から離れたくなった。
離婚を切り出せば少しは躊躇ってくれると、最後に淡い期待を抱いて渡した離婚届は、私に目を合わせることなくサインされ、興味無さげに手渡された。
なんて、悲しいのかしら…。
一緒に居れば、いつか私の事を見てくれると勝手に期待して、勝手に傷付いて逃げ出すなんて。
旦那様の事を心から想うのなら、離婚なんて旦那様にとって不名誉な選択をするべきではないのに、私がこれ以上傷付きたくないから逃げるなんて、卑怯だと思う。
こんな私だから、旦那様は私の事を愛してはくれなかったのかもしれないわね…。
さようなら、旦那様。
卑怯な私をお許し下さい。
離婚が成立するまでに1ヶ月はかかるので、それまではここで生活させて頂くけれど、なるべく旦那様の視界に入らないように致します。
そう思っていたけれど、夜遅くになって旦那様が私を彼の自室へと呼んだ。
一体何の用かしら?
自室に呼んで頂けることなんて数える程しかなかったのに…。
まさか、離婚を撤回すると仰るつもりかしら?
ほんの少しだけ期待を抱いて旦那様の元へ行けば、その淡い期待は一瞬で砕かれる。
「父上が、どうしても最後に話し合えと言って聞かないから呼んだだけだ」
「………さよう、ですか」
期待してしまった自分が虚しくなる。
旦那様が離婚を撤回するなんてあるはずが無いのに。本当に学習しないわね。
「それで、何を話せば良いのでしょうか?
「さぁな」
そう言って旦那様は用意された紅茶を口はと運ぶ。
その後は互いに言葉を発することも無く、静かな時間が続いた。
何も話すことがないのなら、律儀にお義父様の話に従わなければよかったのに…。
この紅茶を飲み終われば、この時間も終わってくれるのかしら。
出された紅茶に手を伸ばそうとした時…。
ガシャン!
「旦那様!?」
突然旦那様が机に突っ伏すように倒れこんだ。
「旦那様!旦那様!お気を確かに!誰か!誰か来て!旦那様がお倒れになったわ!お医者様を呼んで!」
使用人に急いで旦那様をベッドへ寝かせてもらい、お医者様を呼んで診察をしてもらう。
「旦那様は、大丈夫なのでしょうか?」
ベッドに横たわる旦那様を診察してくれたお医者様に様態を聞けば、安心させるようににこやかに答えてくれる。
「体調に問題はなく、少しお疲れのようですが、至って健康のようです」
「そうですか…。急に意識を失われたので、心配で…」
「急に倒れられた原因は不明ですが、命に別状はありませんのでご安心下さい。ですが、何か異変がありましたらすぐにご連絡下さい」
「わかりました。夜分遅くにありがとうございました」
使用人にお医者さんを見送ってもらい、私は旦那様が眠るベッドの横に椅子を持ってきて座る。
こうやって旦那様の寝顔を見るのは初めてかもしれないわね。
一緒に夜を共にしたとしても、いつも目覚めた時には隣にいなかったから…。
まさか離婚が決まってから見ることが出来るなんて思わなかったわ。
どうして倒れられたのかは分からないけど、旦那様が無事でよかったわ。
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