離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ

文字の大きさ
3 / 24

3、惚れ薬ですか…?

しおりを挟む




「そんな…。ですが、旦那様がこんなにも変わられたのです、きっと何かあるはずですわ。他に思い付かれる病気や症状はありませんの?」
「………そうですね…。病気では無いのですが、症状が、最近若い貴族の間で流行っている惚れ薬の症状に酷似しているように見受けられます」
「惚れ薬…?」


そんな物が存在するのは物語の中だけではないのかとは思ったけれど、どうやら惚れ薬は本当に存在するようで、その症状がまさに旦那様のものと一致するそう。


どこで惚れ薬を飲んだのかは定かではないけれど、昨日旦那様が飲まれた紅茶に入れられていたのではないかとのこと。
確認しようにも、惚れ薬は液体に混ざると綺麗に混ざり合い検出しにくくなるという厄介な代物なのだとか。


なので、本当に紅茶に混ぜられていたのかは不明だし、誰がどういう意図で旦那様に惚れ薬を飲ませたのかも分からない状態。


そのなかで分かっていることはただ一つ。
惚れ薬の効力が切れるのは、おおよそ1ヶ月後ということだけ。


1ヶ月後という事は、だいたい離婚の手続きにかかる期間と同じね。
離婚が決まってから、薬のせいとはいえ旦那様から愛されるなんて…神様が最後に私に対してご褒美を下さったのかもしれないわ。


だけど、別れが決まっているのに愛されるなんて、悲しいものね。
惚れ薬が切れれば元通り、旦那様からなんの関心も持たれることはなくなる。
それどころか、惚れ薬で私を愛したことで嫌悪感を持たれるかもしれないわね。


「ロズ、口を開けてくれ」
「旦那様、ご飯くらい一人で食べられますのでお気遣いなく」


今みたいに、私に食べさせようとした事を思い出せば激しく後悔なさるでしょうね。
私に出来ることは、旦那様が後悔される様な記憶を極力作らないことくらい。


元々そのつもりではあったけれど、なるべく旦那様から距離を取る様にしましょう。


「ロズ、君は俺のことがそんなに嫌いなのか…?」


心底傷付いたと言いたげな目で見つめないで下さい。
そんな顔をされれば、私が貴方に本気で愛されていると錯覚しそうになってしまうじゃありませんか。


恋心を精算するどころか、ますます貴方を愛してしまいそうで怖くて仕方ありませんわ…。


「ロズ、愛しているよ」
「っ、」


止めてください。
私に愛を囁かないでください。


「旦那様、もうすぐお仕事の時間ですわよ」
「そうだな。だが、ロズと離れたくないから休みを取るとしようか」
「な、何を仰っているのですか。お仕事を1度も欠勤されたことの無い旦那様の言葉とは思えませんわ」
「確かに1度も休んだことはなかったな…。それなら、1日くらい休んでも文句は言われないだろう」


まさか、欠勤されるおつもりではありませんよね?


「本日の予定は全てキャンセルだ。愛する妻と街へ行くから馬車を用意してくれ」
「何をおっしゃっているのですか…!お仕事はどうなさるのですか?本日はキャロル伯爵と商談の予定でしたでしょう?」
「俺の仕事のことをよく把握ているな。だが、君と過ごす時間より大切なことはない。商談は延期させる」
「そんな…」


キャロル伯爵が何ヶ月も足を運んでやっと取り付けた商談の日でしたのに、そんなあっさり延期させるだなんて、キャロル伯爵が報われませんわ。


「どうか、キャロル伯爵の為にも、お仕事へ行ってください。仕事は横の繋がりが大切だと仰っていましたわよね?」
「よく覚えていたな。流石俺の愛するロズだ。俺の事をよく知っていてくれる。だが心配するな。キャロル伯爵には後日場を用意させるからな」


だとしても、私のせいで商談を延期させてしまうのは申し訳ないわ。


「ロズ、俺の愛しい妻よ、そんな悲しそうな顔はしないでくれ。君がそんな顔をすれば、俺まで悲しくなってくるだろ。大丈夫だから安心してくれ」


そう言って、流れるような動きで私の唇にキスをした。


「!?」


い、いま、なにがおきたのかしら…。


旦那様が、私に、キ、キス?
ベッドの上でさえ、必要が無いからと言って避けていたキスを、今…された?
う、嘘でしょ…?


キスをされたと自覚するまでに数秒かかり、自覚してからは全身の血が沸騰したのかというほど身体が熱くなってくる。


どうして今そんなことをされるのですか…!
恥ずかしさと嬉しさでどうにかなってしまいそうですわ!


「キス1つで真っ赤になるなんて、なんて愛らしいんだ…」
「っ!」


低音の腰に来る声を耳元で囁かれて、肩が思わずビクッと跳ねる。


ああ、こんなのいけないわ…。



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

僕の婚約者は今日も麗しい

蒼あかり
恋愛
公爵家嫡男のクラウスは王命により、隣国の王女と婚約を結ぶことになった。王家の血を引く者として、政略結婚も厭わないと覚悟を決めていたのに、それなのに。まさか相手が子供だとは......。 婚約相手の王女ローザもまた、国の安定のためにその身を使う事を使命としていたが、早い婚約に戸惑っていた。 そんなふたりが色々あって、少しづつ関係を深めていく。そんなお話。 変わり者の作者が、頑張ってハッピーエンドを目指します。 たぶん。きっと。幸せにしたい、です。 ※予想外に多くの皆様に読んでいただき、驚いております。 心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。 ご覧いただいた皆様に幸せの光が降り注ぎますように。 ありがとうございました。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

氷の公爵の婚姻試験

潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。

海咲雪
恋愛
結婚式当日、私レシール・リディーアとその夫となるセルト・クルーシアは初めて顔を合わせた。 「君を愛する気はない」 そう旦那様に言い放たれても涙もこぼれなければ、悲しくもなかった。 だからハッキリと私は述べた。たった一文を。 「逃げるのですね?」 誰がどう見ても不敬だが、今は夫と二人きり。 「レシールと向き合って私に何の得がある?」 「可愛い妻がなびくかもしれませんわよ?」 「レシール・リディーア、覚悟していろ」 それは甘い溺愛生活の始まりの言葉。 [登場人物] レシール・リディーア・・・リディーア公爵家長女。  × セルト・クルーシア・・・クルーシア公爵家長男。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

地味令嬢、婚約者(偽)をレンタルする

志熊みゅう
恋愛
 伯爵令嬢ルチアには、最悪な婚約者がいる。親同士の都合で決められたその相手は、幼なじみのファウスト。子どもの頃は仲良しだったのに、今では顔を合わせれば喧嘩ばかり。しかも初顔合わせで「学園では話しかけるな」と言い放たれる始末。  貴族令嬢として意地とプライドを守るため、ルチアは“婚約者”をレンタルすることに。白羽の矢を立てたのは、真面目で優秀なはとこのバルド。すると喧嘩ばっかりだったファウストの様子がおかしい!?  すれ違いから始まる逆転ラブコメ。

処理中です...