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3、惚れ薬ですか…?
しおりを挟む「そんな…。ですが、旦那様がこんなにも変わられたのです、きっと何かあるはずですわ。他に思い付かれる病気や症状はありませんの?」
「………そうですね…。病気では無いのですが、症状が、最近若い貴族の間で流行っている惚れ薬の症状に酷似しているように見受けられます」
「惚れ薬…?」
そんな物が存在するのは物語の中だけではないのかとは思ったけれど、どうやら惚れ薬は本当に存在するようで、その症状がまさに旦那様のものと一致するそう。
どこで惚れ薬を飲んだのかは定かではないけれど、昨日旦那様が飲まれた紅茶に入れられていたのではないかとのこと。
確認しようにも、惚れ薬は液体に混ざると綺麗に混ざり合い検出しにくくなるという厄介な代物なのだとか。
なので、本当に紅茶に混ぜられていたのかは不明だし、誰がどういう意図で旦那様に惚れ薬を飲ませたのかも分からない状態。
そのなかで分かっていることはただ一つ。
惚れ薬の効力が切れるのは、おおよそ1ヶ月後ということだけ。
1ヶ月後という事は、だいたい離婚の手続きにかかる期間と同じね。
離婚が決まってから、薬のせいとはいえ旦那様から愛されるなんて…神様が最後に私に対してご褒美を下さったのかもしれないわ。
だけど、別れが決まっているのに愛されるなんて、悲しいものね。
惚れ薬が切れれば元通り、旦那様からなんの関心も持たれることはなくなる。
それどころか、惚れ薬で私を愛したことで嫌悪感を持たれるかもしれないわね。
「ロズ、口を開けてくれ」
「旦那様、ご飯くらい一人で食べられますのでお気遣いなく」
今みたいに、私に食べさせようとした事を思い出せば激しく後悔なさるでしょうね。
私に出来ることは、旦那様が後悔される様な記憶を極力作らないことくらい。
元々そのつもりではあったけれど、なるべく旦那様から距離を取る様にしましょう。
「ロズ、君は俺のことがそんなに嫌いなのか…?」
心底傷付いたと言いたげな目で見つめないで下さい。
そんな顔をされれば、私が貴方に本気で愛されていると錯覚しそうになってしまうじゃありませんか。
恋心を精算するどころか、ますます貴方を愛してしまいそうで怖くて仕方ありませんわ…。
「ロズ、愛しているよ」
「っ、」
止めてください。
私に愛を囁かないでください。
「旦那様、もうすぐお仕事の時間ですわよ」
「そうだな。だが、ロズと離れたくないから休みを取るとしようか」
「な、何を仰っているのですか。お仕事を1度も欠勤されたことの無い旦那様の言葉とは思えませんわ」
「確かに1度も休んだことはなかったな…。それなら、1日くらい休んでも文句は言われないだろう」
まさか、欠勤されるおつもりではありませんよね?
「本日の予定は全てキャンセルだ。愛する妻と街へ行くから馬車を用意してくれ」
「何をおっしゃっているのですか…!お仕事はどうなさるのですか?本日はキャロル伯爵と商談の予定でしたでしょう?」
「俺の仕事のことをよく把握ているな。だが、君と過ごす時間より大切なことはない。商談は延期させる」
「そんな…」
キャロル伯爵が何ヶ月も足を運んでやっと取り付けた商談の日でしたのに、そんなあっさり延期させるだなんて、キャロル伯爵が報われませんわ。
「どうか、キャロル伯爵の為にも、お仕事へ行ってください。仕事は横の繋がりが大切だと仰っていましたわよね?」
「よく覚えていたな。流石俺の愛するロズだ。俺の事をよく知っていてくれる。だが心配するな。キャロル伯爵には後日場を用意させるからな」
だとしても、私のせいで商談を延期させてしまうのは申し訳ないわ。
「ロズ、俺の愛しい妻よ、そんな悲しそうな顔はしないでくれ。君がそんな顔をすれば、俺まで悲しくなってくるだろ。大丈夫だから安心してくれ」
そう言って、流れるような動きで私の唇にキスをした。
「!?」
い、いま、なにがおきたのかしら…。
旦那様が、私に、キ、キス?
ベッドの上でさえ、必要が無いからと言って避けていたキスを、今…された?
う、嘘でしょ…?
キスをされたと自覚するまでに数秒かかり、自覚してからは全身の血が沸騰したのかというほど身体が熱くなってくる。
どうして今そんなことをされるのですか…!
恥ずかしさと嬉しさでどうにかなってしまいそうですわ!
「キス1つで真っ赤になるなんて、なんて愛らしいんだ…」
「っ!」
低音の腰に来る声を耳元で囁かれて、肩が思わずビクッと跳ねる。
ああ、こんなのいけないわ…。
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