離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ

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9、この状況は困ります。

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見た目に反して実は鍛え上げられた身体を持つヒューバート様と、成人女性である私が狭いベッドて寝るとなれば密着して寝るしかない。
少し前までそうやって寝ていたとはいえ、あれは惚れ薬の効果があったから出来たこと。


今は薬も切れて、元の女性嫌いなヒューバート様に戻っている。
そんな彼に不快な思いをしてほしくないわ。


「どうぞ、ギルベルタ様はベッドをお使い下さい。私はソファで寝ますので」


店主から借りた布団を持って、足を曲げればギリギリ眠ることが出来るソファへと向かう。


私でも少し窮屈なのだから、ヒューバート様なんて眠れるはずがないわ。
明日はここを出るつもりだし、一日だけならここでも寝れないことはないわ。


ソファに横になり、身体を動かしながら眠りやすい位置を探る。


この位置なら何とか眠れそうだわ。
今日はいつもより動いて疲れたから早く眠ろう。


目を閉じれば、ヒューバート様の靴音が聞こえる。
就寝の準備でもしているのかもしれないわね。
なんて思っていると、急に身体が宙に浮く。


「!」


驚いて目を開ければ、また険しい顔をしたヒューバート様と目が合う。


「体調が悪い人間をソファで眠らせるわけがないだろ。それにここは元々君が借りたものなのだから、ベッドで寝てくれ」
「ですか、それではギルベルタ様が休めませんわ」
「……なら、共にベッドを使えば問題ないだろう」
「はい…?」


少し考える素振りをした後に発した言葉に耳を疑う。


一緒に寝れば問題ないだろうって、問題大ありです!
あんな狭いベッドで密着して眠るなんて、私もヒューバート様も眠れるわけがないわ。


「では、寝るか」
「お待ち下さい!こんなに狭いのですから、私と密着することになりますがよろしいのですか?」


ヒューバート様は女性嫌い。
好きな人に自分からこんなことを言わなければいけないのは辛いけど、好きな人を不快にさせる方が嫌だから聞くしかないわ。


「薬が効いていたとはいえ、1ヶ月ほど一緒に寝ていたのだから問題ない」
「え………もしかして、薬が効いていた時の記憶があるのですか…?」


あれは異常状態だったから、勝手に記憶は無いものと思っていたけど、あの時の記憶があるの…?
私に愛の言葉を囁き、どんな時でも離れず共に過したあの日々を…?


「…何か問題でもあるのか」
「いえ。いえ、何もありません」


ありませんが、とても気まずい…。
記憶があるということは、私がヒューバート様に対して頬を染めたり、だらしなく口元を弛めて笑っている顔も覚えていると言うことよね。


そんなの恥ずかし過ぎるわ!
あの時は、ヒューバート様もお優しかったからつい自分の感情を表に出してしまったけど、今までヒューバート様の前であんな事をした事がなかったからどう接していいかが分からなくなってしまうわ。


ヒューバート様が女性嫌いなのは、外見や地位だけを見て頬を染めて近寄ってくる女性達に辟易していたから。
だから、私は極力そんな姿をヒューバート様に見せないようにしていたのに…。


もう離婚して関わる事が極端に減るとしても、最後の私の記憶がヒューバート様が嫌悪している姿なんて悲し過ぎるわ。


「何を考えているかは知らないが、体調が悪いなら早く寝ろ。ほら」
「きゃ!」


ベッドに下ろされたと思えば、ヒューバート様も隣に寝て私の腰へと腕を回してくる。


「狭いんだ。こうするしかないだろ」
「だとしても、これは…」


よろしくない状況だわ。
少し前までこういう風に寝てたとしても、今は状況が違う。
なにより、こんな風にヒューバート様の体温を感じてしまえば、鼓動が高鳴って眠る所ではなくなるし、ヒューバート様への想いを断ち切れなくなってしまうわ。


「やはり、私はソファで…」
「もう夜も遅いのだから早く寝ろ」


起き上がろうとすれば、腕と足で押さえ付けられてベッドから抜け出せなくなる。


更に密着してしまったこの体制で眠れるわけないわ。


そう思っていたけど、久しぶりに長く外へ出ていたからか、気付けばヒューバート様の腕の中で目を閉じて朝まで眠ってしまっていた。


「っ、!」


目が覚めれば目の前にヒューバート様の美しい顔があり、バッチリと目が合う。


「よく寝ていたな」


ね、寝顔を見られていた…!
それよりも、私ったらヒューバート様の腕の中で眠ってしまっていたのね。
早くヒューバート様から離れないと!


「っ、お離し下さいませ…!」


起き上がろうとしても、腰に回された腕のせいでベッドから出られない。


「そんなに俺と共にいるのは嫌なのか」
「嫌とかではありません。昨夜は仕方がなかったとはいえ、もう夫婦では無いのにこういうことをするのはよくないですわ」


身体をくねらせてなんとか隙間を作ってヒューバート様の腕から逃れてベッドから出る。


「あ、」


もう少し距離を取ろうと1歩踏み出した時、急に目眩がして倒れそうになる。


「ロズ!」


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