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18、ヒューバート様のお客様。
しおりを挟む「俺は、君じゃなきゃダメなんだ。共に過したいと思うのも、共に満月を見たいと思うのも、共に子供を愛したいと思うのも、君しか居ないんだ」
「どうして…」
「君の笑った顔が可愛かったから。君のその顔を1番近くで見られるのが俺でありたいと思ったから」
「………それだけ、ですか…?」
「もちろん違う。君の好きな所を上げればキリがない。だから、君に惹かれた一番の理由を答えただけだ」
では、他の理由はなんですか?と質問すれば、本当に全てを語ってくれそうなので、次の言葉が出てこない。
「少しは俺がロズを愛しているということを信じてくれる気になったか?」
「…………少し、だけですが」
本当は、自分でもヒューバート様が嘘をついていないとわかっている。
だけど、8年間片思いをこじらせ過ぎて、まだ信じるのに時間がかかりそうだ。
「少しだけでも信じてもらえたならそれでいい。信じようとしてくれてありがとう」
そう言ってヒューバート様は私の額にキスを落とす。
「!!!」
「そうやってキス1つで頬を赤く染めるところも君の好きなところの1つだ」
「な、何をおっしゃるのですか!」
ヒューバート様の言葉に、更に顔が赤くなる。
そんな私を見て、ヒューバート様が嬉しそうに笑う。
「君の反応を見るに、まだ夫婦になる可能性が残っているようで安心した」
「何をどう見てそう判断されたのですか」
「やはり、俺と夫婦に戻るのは…嫌、なのか…?」
突然落ち込んだ様に顔に影を落とすヒューバート様に、なんだか罪悪感が湧いてくる。
私がヒューバート様のことを信じる覚悟が出来ていないだけで、夫婦に戻りたくないなんて思っていない。
それなのに、ヒューバート様にこんな顔をさせてしまうなんて申し訳ないわ。
「今までの俺のことが許せないか?だから俺となんてやり直したくないのか…」
「い、いえ!そんなことはありませんわ!私もギルベルタ様と夫婦に…」
そこまで言って、ハッとする。
流石にまだ、ここまでは言えない。
もう少しだけでいいから、覚悟を決める時間がほしい。
「夫婦に、の続きはなんだ?」
「いえ、なにもありません…」
「そうか」
期待したように聞かれた質問に目を逸らして答えれば、ヒューバート様は仕方ないと言うように笑って、それ以上追求しようとはしなかった。
無理に聞き出そうとしないところにも、ヒューバート様の優しさを感じて胸が痛くなる。
今でもヒューバート様の事を心から愛していて、彼と共にいたい望んでいる。
それなのに、臆病になってヒューバート様の気持ちを受け入れようとしない私を、彼は根気よく待っていてくれている。
そんな彼の気持ちをこのまま否定し続けていいのかしら…。
好きな相手から愛してもらえない辛さは、私が身をもってよく理解しているはずなのに、ヒューバート様にその辛さを味わわせるの…?
好きな人には幸せになってもらいたい。
ヒューバート様に恋をしてからずっと、そのことを1番に考えていたはずなのに、どうして今私は彼に寂しそうな笑顔を作らせてしまっているのかしら。
私が正直になれば、ヒューバート様と二人で幸せになれるはずなのに、どうして素直になれないのかしら…。
「ヒューバート様、お客様がお見えになりました」
ヒューバート様への気持ちをまだ打ち明けることが出来ずにいると、いつの間にか近くに来ていた執事にヒューバート様が呼ばれる。
「来客?そんな予定はなかったはずだが?今はロズといるのだからから追い返してくれ」
前までは私よりもお客様を優先していたのに、今は優先順位が真逆になっている。
私を優先して頂けるのは嬉しいけれど、流石にお客様を追い返すのは失礼ではないかしら。
執事もヒューバート様の答えに困って眉を八の字にさせているわ。
「それがその…こられた方が第7王女様でして、お帰り頂くのは難しいかと」
王女様が来られるなんて、一体どういうことかしら?
第7王女様は確か、私とヒューバート様より5つ程年下だったはず。
そんな彼女がヒューバート様と仕事の話をされる訳でもないでしょうし、なんの御用なのかしら。
「遂にここまで来たのか…」
ヒューバート様は王女様が来訪された理由に心当たりがあるのか、うんざりしたように眉間に皺を寄せる。
「散々断ったというのに…」
断ったとは、一体なんのことかしら?
忌々しそうに言うということは、ヒューバート様にとってよろしくない話をされているのかしら?
「すまないロズ、流石に王女相手では俺が行くしかない。少し席を外すが、すぐ戻るからここで待っていてくれ」
そう言ってヒューバート様は面倒臭そうに執事と共に去っていく。
その後ろ姿を見て、近くにいたメイドが気の毒そうな顔をしていた。
「貴女は、王女様がなぜ来られたのか理由を知っているの?」
「はい…。ここ最近頻繁に旦那様宛に手紙が届いていましたので、きっとその事で来られたのだと思います」
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