離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ

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17、ヒューバート様の気持ち。

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「どうして、私を愛しているだなんて言えるのですか」
「それがロズを悩ませていることなのか」
「あ、いえ、今のは聞かなかった事にしてください」


頭で考えていたはずなのに、まさか口に出ているとは思わなくて慌ててしまう。


本人を目の前になんてことを言っているの。
少しつわりがマシになってきたからといって、気を抜きすぎだわ。


「不本意なことに惚れ薬を飲んだ時、初めてロズと共に過ごした。その時に、俺はロズのことを知って、もっとロズの事を知りたいと思った」
「なにを、仰っているのですか…」


聞かなかったことにしてほしいと言ったのに、淀みのない声で私を愛した経緯を話し始めるヒューバート様に動揺する。


「惚れ薬でおかしくなっている俺に愛を求めたりせず、逆に惚れ薬が切れた時のことを考えて、俺に極力関わらない様にしていただろ」


気付いていらしたの…?


「俺が女嫌いなのを知っているから、俺が自己嫌悪に陥らないように気遣ってくれたロズの優しさが、本当に嬉しかったんだ。他にも、いつもは冷静なロズが猫を見た時だけ目を輝かせる姿も愛らしくて、ロズがどんなことで喜ぶのかが知りたくなった」
 

知りたくなったと言われて、少しだけ胸が跳ねる。
私の些細な変化に気付いてくれた事も、私に興味を持ってくれていたことも、薬のおかげだったとしてもそう思ってくれた事がどうしようもなく嬉しくなってしまう。


「気付けば、俺はロズの事ばかり考えていた。それは薬がきれてからもずっと変わらなかった」
「…もし本当にそうだったのなら、どうして私のことを避けてらしたのですか」
「それは…俺が今まで恋愛というものをした事がなかったからだ…。薬が切れてからも変わらないこの感情がどういう物なのかが理解出来ずに、君から距離を取ってしまった」


それなら、あの時私を避けていたのは、薬のせいで私を愛していた事実から目を逸らしたかったわけではないの…?


「少し冷静になって考えようと思ったが、答えが出る前に離婚が成立して、君はここから出て行ってしまった。君が俺から離れていく事実を目の当たりにして、胸が引き裂かれるような感覚になったんだ」


その時の事を思い出したかのように、ヒューバート様が手を握りしめて力を込める。


「あの時、君から距離を置いてしまった事をどれほどほど後悔したか…。おまけに、探しても君の行方が分からなくて、君を見つけるまで本当に生きた心地がしなかった」


湖で再会した時、ヒューバート様が少しやつれているように見えたのは、もしかして本当に私の行方がわからなくて心配されていたから?


「どこを探しても見当たらず、寝る間も惜しんで探し続けた」
「それは…申し訳ありませんでした」
「いや、君が謝ることじゃない。全ての原因は俺にあるのだからな」


そう言ってヒューバート様は目を細めて私の頭を撫でてくれる。


「湖で君を見つけた時、心の底から神に感謝した。まさか、満月の日に気まぐれで話した場所に居るとは思わなかったが、君が無事で本当に良かった…」


頭を撫でていた手が頬へと移動し、慈しむように親指で優しく撫でてくれる。
安心したような穏やかな目で見つめられて、胸の鼓動が早くなっていく。


「俺との子が出来たと知った時は、言葉に表せないくらい嬉しかったんだ。だが俺は、恋心を自覚したばかりで君とどう接していいか分からず、前の様に素っ気ない態度をとってしまった。それに、それまでは君の事を避けていたから、余計に後ろめたくて…」


すまなかった。とヒューバート様が悲しそうに謝罪して下さる。


「妊娠して体調も優れず不安だっただろうに、俺の態度のせいで余計に不安にさせてしまったな。そんな俺が君を愛していると言っても、すぐには信じられなくて当然だ」


1度俯いてから、決意を込めたように顔を上げ、真っ直ぐ真剣な目で私を見つめてくる。


「だから、君が…ロズがここに居てくれる間に、どうにかして信じてもらえるように努力する。そして願わくば、君とまた夫婦になって、お腹の子を共に育てたいと思っている」
「どうして…私なのですか。私よりも綺麗な方や、教養のある方は沢山います。それなのに、どうしてわざわざ私と夫婦に戻りたいなんて仰るのですか」


自分でも卑屈な事を言っていると自覚している。
ヒューバート様がこんなにも語ってくださったのに、まだ信じられないようなことを言うなんて、本当に素直じゃない。


正直に、私も貴方を愛しています。
共にこの子を育てていきたいです。と言えばいいだけなのに。
どうしてこんな言葉を言ってしまったんだろう…。


こんなにも疑ってしまう私を、今度こそヒューバート様は嫌になったんじゃないかしら…。


不安になってヒューバート様を見れば、真剣な眼差しで私を見つめたままだった。
目が合えば、逸らすことを許さないというように見続けられる。



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