離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ

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19、足が勝手に動いてしまった。

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「その手紙の内容って?」
「旦那様の再婚相手にしろと言う内容だそうです。もちろん、旦那様は毎回断ってますが、懲りずに何度も送られてくるそうです」


ヒューバート様はロザベリーナ様一筋なので、王女様と結婚することなんてありえませんのにね。
と続く言葉を、どこか遠くで聞こえているような感覚になる。


ヒューバート様が王女様と再婚…。


私自身がヒューバート様の再婚を望んでいたはずなのに、何故だか頭を強く殴られた気分になる。


ヒューバート様が私ではない誰かと結婚することを想像しただけで、胸がザワつく。


「ロザベリーナ様?顔色が優れないようですが、どうかされましたか?少しお休みになられますか?」
「いいえ、大丈夫よ…ありがとう。それより、少し歩きたいのだけれど、いいかしら?」
「旦那様が戻るまでの間でしたら」


ヒューバート様がここで待つように言っていたものね。


「わかったわ。あまり遠くへ行かないようにするわね」


メイドにそう告げて、ヒューバート様が去って至った方へと向かう。


彼の気持ちを受け入れる覚悟がないのに、王女様と話しているところに行ってどうするんだと自分でも思う。
だけど、体が勝手に動いてしまう。


応接室の前まで行けば、扉の前に王女様の護衛騎士が数人立っていて、中に誰も入れないように扉を守っていた。
ここからでは中で何を話しているか聞こえるはずもなく、どうしようかと佇んでいると、先程ヒューバート様を呼びに来た執事が護衛騎士達を退かせてくれる。


「さぁ、これで中に入ることが出来ます。どうぞお入りください」
「私が入っても、いいのかしら…」
「ええ、きっと貴女様が行かれた方が旦那様も楽になるでしょうから」


楽になるとはどういう事かは分からないけど、本当に入ってもいいのかしら。
ただ、ヒューバート様と王女様が再婚されることを考えたら、気付けばここへ来てしまっただけで、自分でも何をどうしたいかなんて分からない。


「離婚した私が、おふたりの話合いに入ってもいいのかしら」
「もちろんです。むしろ入っていただけた方が、旦那様の為にも、私共のためにも喜ばしいことです。さぁ、お入りくださいませ、若奥様」


執事が目の前の扉を開けくれて、私の事を若奥様と呼んで部屋に入るように背中を押してくれる。


部屋へ1歩入れば、王女様とヒューバート様の視線が飛んでくる。
1つは冷たく馬鹿にしたようなもの、もう1つは、驚きつつも柔らかくて暖かいもの。


「どうして離婚された部外者が断りもなくここにいるのかしら?」


鋭い視線を向けられ萎縮しそうになる。
そんな私の肩に、ガッシリとした暖かい腕が回される。


「待っていろと言ったのに、どうしてわざわざここに来たんだ」
「それは、その…」
「ヒューバート様!私というものがありながら、何故その人に触れていますの!これは立派な浮気ですわよ!」


私が返事をしようとすれば、王女様が烈火のごとく怒り出してしまう。


浮気と仰ってますけど、ヒューバート様は王女様からの求婚を断っているのですよね?
それなのに、どうしてここまで怒れるのかしら。


「何度も言いますが、私は貴女と婚姻を結ぶつもりはありません。そもそも私と貴女はなんの関係もありませんのに浮気と言われても困ります」
「何の関係もないなんてよく言えますわね!私に好意があることは知っていますのよ。それなのに、捨てたはずの女に構っているなんておかしいですわ」


ビシッと指をさして睨み付けてくる王女様に怯みそうになるけど、ヒューバート様の気持ちを一切考えようとしない言葉に眉を寄せてしまう。


「あらヤダ怖い。私がヒューバート様に愛されているからって、嫉妬で私を睨むなんて酷い人ね。捨てられて当然ですわ」
「私は彼女の事を捨てていません。愛想を尽かされたのは、私の方ですから」
「ヒューバート様ったら本当にお優しいのね。離婚されても縋って家に押しかけてくるような方なのに、その方の名誉を守るような言い方をされるなんて」
「そうではありません」
「いいえ、いいのです。私はわかっていますから」


いえ、全く何も分かっていらっしゃらないわ。
それに、ヒューバート様の話を全く聞こうとしないのは如何なものかしら。
この方は本当にヒューバート様のことを想っていらっしゃるの?


ヒューバート様も王女様に不快感を顕にしてるのに、全く気にした様子もないなんておかしいわ。


「ヒューバート様の優しさは私が1番よく理解しています。なので、私と結婚しましょう。そうすれば、必ず幸せな未来が待っていますわ」
「いえ、私は彼女と幸せな未来を築く予定ですので、お断りさせていただきます」


私の肩を抱いてヒューバート様がピシャリと言い切る。
そうすれば、王女様の眉がピクリと動く。
 


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