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14.施術①
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体内の再生、特異魔法回路の遮断、治した臓器および魔力生成器官への魔力の補充。必要な作業はこの3つだった。魔力生成器官と臓器は連動している。そのため同時進行で3つの工程全てをこなして、一気に治癒していかなければならないのだ。エストを助けるための活路は見出せはしたが、施術の難易度は跳ね上がっていた。
話し合いの結果、体内の臓器や魔力生成器官を再生魔法で治す役割は再生魔法を得意としているケントが。
『魔力変換』の特異魔法に解析魔法を掛けながら分析し、魔力を親和させることで強制的に解除する役割をこの中で一番エストの魔力について詳しいであろうマルタが。
そしてルーネストは他二人のサポートをしながら、二人が施術を終えたタイミングで予め作っておいたエストの魔力により近づけた補充用の魔力を魔道具を使用して彼の身体に流し込むという役割を担当することになった。
魔力は体内に流れている血と近いものがある。要は別物の魔力を急に流し込むと、自身の魔力が注入される魔力に負けて、拒絶反応を起こしてしまう可能性があるのだ。
普段のエストであれば、そのままの状態でも注がれる魔力に負けることなく補充出来たのだろうが、今は身体が弱り切っている状態である。細心の注意を払って、補充する分の魔力も調整する必要があった。
他にも考えられる範囲で起こると想定できる事態に対処するための医療器具や魔道具と言ったものを国中から取り寄せる。コネや伝手、魔法陣なしでも使える緊急用転送魔法など使える物は何でも使った。
そうして夜を二回跨いだ、この王宮に帰ってきて3日目の朝。遂に準備が整ったのだった――。
「ではルネ。僕らのサポートは頼んだよ」
そう言いながら準備を終えたケントが笑顔を向ける。人一人の命がかかっている。しかもそれは自分が世界で一番大切に思っている人。何を失ってでもその立場を、生活を、未来を守りたかった人だ。
無意識のうちに握りこんでいた手をマルタに優しく解かれる。彼女はルーネストが施術に対する経験の少なさから緊張していると思い込んでいたが、事情を知られたくないルーネストにとってはその勘違いが丁度良かった。
「そんな緊張してたら上手くいくものでもいかなくなってしまいますよ……これでもルネさんを頼りにしているのですから、前を向いてください」
ここ数日。この中で誰よりも若い筈なのに年に見合わない知識の多さ、そして発想の斬新かつ奇抜さにマルタは舌を巻いていた。ルーネストは医術や魔法薬学の知識や経験をベースに柔軟な発想をいくつも提案してくる。
これらも全てはエストの事を想って、知識や疲労と言った限界すらもを超えて力を出し切っての事だったが、そのおかげでマルタからは確かな信頼を置かれていた。
「はい。二人共、有難うございます」
ルーネストはやっと視線を前に向ける。視線の先にいるのはこの世界で一番守りたい人だ。必ず救って見せると心の中で呟いて、眠っている彼と正面から向き合った。
***
施術は順調に進んでいた……途中までは。
それが起こったのはケントが魔力生成器周辺の臓器を粗方修復し終わった時の事だった――。
「っう゛あ!?」
呻き声を上げると共にマルタが壁まで吹き飛ばされ、全身を強かに打ち付ける。一瞬ルーネストもケントも何が起こったのか分からなかった。しかしエストの魔力生成器の上に展開されたマルタの術式を見てすぐに察する。彼女の魔術式には黒い靄のような魔力が侵食していた。エストの魔力だった。
マルタはエストの魔力によって弾かれたのだ。このように身体に掛かっている魔法を強制的に解除するには二つの方法がある。一つ目が自身の魔力を注いで掛かっている魔法自体を壊す方法。二つ目が自身の魔力を掛かっている魔法に同化させ、此方が魔法の解除指示を出すことによって魔法を解く方法である。
今回やろうとしていたのは後者だった。前者の魔法自体を無理矢理壊してしまうという力比べのような方法は術者にもそれを掛けられる側にも相当の負担が強いられるのだ。しかし後者は難易度が高い代わりに負荷はこちらにしか掛からない。
しかし相手の魔力に親和しきれずに弾かれた場合は解析魔法を使用しながらの無防備な状態に直接相手の魔力が流れ込んでくる。防御魔法をかけていない裸の状態に攻撃魔法を掛けられた時と似たような反動が此方を襲うのだ。
本来エストの様な王族――生来所持している魔力が強い人間には向かない方法だったが、背に腹は代えられなかった。
実はそれにその魔力の高さに対抗するための魔道具は既にマルタに使用していた。魔法で再現・シミュレーションした時はそれで完璧に彼の『魔力変換』の魔法は解除出来ていた。だが今回は解除することが出来なかった。起きて欲しくない予想外の事態だ。
このまま放置してしまえば、介入してきた魔力に対抗しようと漏れ出してきたエストの魔力が更に強くなり、このまま彼は魔力を吐き出しきることによって、死んでしまうだろう。簡単にそれが予測出来た。
「ルネ!」
「分かってます!!」
先程までケントの再生魔法のサポートをしていたルーネストは、片手で持てるように改善していた魔力補充の魔道具をそのままケントに一旦預けた。そして正面、マルタが先程まで展開していた魔術式まで移動してそれに向き合う。
マルタの役割はこの施術に置いて一番の難所だった。だからケントもルーネストも出来るだけ彼女の方に注意を払うようにしていたのだ。
先程まではエストの『魔力変換』を解除する直前までいっていたことは把握している。けれど何かが原因で、急にエストによって拒否されたのだ。ケントもルーネストも正直原因は分からない。理論上は全て完璧だった筈なのに、だ。
緊張からごくりと唾が勝手に喉を通り、自然と呼吸も浅くなる。背中にも嫌な汗をかいていた。
けれどやるしかないのだ。
(お願い、エスト……私に貴方の命を救わせて――)
******
あとがき:
文字数が3000超えて編集しづらくなりそうなので、一旦切ります。続きはまた後日アップロードします。
話し合いの結果、体内の臓器や魔力生成器官を再生魔法で治す役割は再生魔法を得意としているケントが。
『魔力変換』の特異魔法に解析魔法を掛けながら分析し、魔力を親和させることで強制的に解除する役割をこの中で一番エストの魔力について詳しいであろうマルタが。
そしてルーネストは他二人のサポートをしながら、二人が施術を終えたタイミングで予め作っておいたエストの魔力により近づけた補充用の魔力を魔道具を使用して彼の身体に流し込むという役割を担当することになった。
魔力は体内に流れている血と近いものがある。要は別物の魔力を急に流し込むと、自身の魔力が注入される魔力に負けて、拒絶反応を起こしてしまう可能性があるのだ。
普段のエストであれば、そのままの状態でも注がれる魔力に負けることなく補充出来たのだろうが、今は身体が弱り切っている状態である。細心の注意を払って、補充する分の魔力も調整する必要があった。
他にも考えられる範囲で起こると想定できる事態に対処するための医療器具や魔道具と言ったものを国中から取り寄せる。コネや伝手、魔法陣なしでも使える緊急用転送魔法など使える物は何でも使った。
そうして夜を二回跨いだ、この王宮に帰ってきて3日目の朝。遂に準備が整ったのだった――。
「ではルネ。僕らのサポートは頼んだよ」
そう言いながら準備を終えたケントが笑顔を向ける。人一人の命がかかっている。しかもそれは自分が世界で一番大切に思っている人。何を失ってでもその立場を、生活を、未来を守りたかった人だ。
無意識のうちに握りこんでいた手をマルタに優しく解かれる。彼女はルーネストが施術に対する経験の少なさから緊張していると思い込んでいたが、事情を知られたくないルーネストにとってはその勘違いが丁度良かった。
「そんな緊張してたら上手くいくものでもいかなくなってしまいますよ……これでもルネさんを頼りにしているのですから、前を向いてください」
ここ数日。この中で誰よりも若い筈なのに年に見合わない知識の多さ、そして発想の斬新かつ奇抜さにマルタは舌を巻いていた。ルーネストは医術や魔法薬学の知識や経験をベースに柔軟な発想をいくつも提案してくる。
これらも全てはエストの事を想って、知識や疲労と言った限界すらもを超えて力を出し切っての事だったが、そのおかげでマルタからは確かな信頼を置かれていた。
「はい。二人共、有難うございます」
ルーネストはやっと視線を前に向ける。視線の先にいるのはこの世界で一番守りたい人だ。必ず救って見せると心の中で呟いて、眠っている彼と正面から向き合った。
***
施術は順調に進んでいた……途中までは。
それが起こったのはケントが魔力生成器周辺の臓器を粗方修復し終わった時の事だった――。
「っう゛あ!?」
呻き声を上げると共にマルタが壁まで吹き飛ばされ、全身を強かに打ち付ける。一瞬ルーネストもケントも何が起こったのか分からなかった。しかしエストの魔力生成器の上に展開されたマルタの術式を見てすぐに察する。彼女の魔術式には黒い靄のような魔力が侵食していた。エストの魔力だった。
マルタはエストの魔力によって弾かれたのだ。このように身体に掛かっている魔法を強制的に解除するには二つの方法がある。一つ目が自身の魔力を注いで掛かっている魔法自体を壊す方法。二つ目が自身の魔力を掛かっている魔法に同化させ、此方が魔法の解除指示を出すことによって魔法を解く方法である。
今回やろうとしていたのは後者だった。前者の魔法自体を無理矢理壊してしまうという力比べのような方法は術者にもそれを掛けられる側にも相当の負担が強いられるのだ。しかし後者は難易度が高い代わりに負荷はこちらにしか掛からない。
しかし相手の魔力に親和しきれずに弾かれた場合は解析魔法を使用しながらの無防備な状態に直接相手の魔力が流れ込んでくる。防御魔法をかけていない裸の状態に攻撃魔法を掛けられた時と似たような反動が此方を襲うのだ。
本来エストの様な王族――生来所持している魔力が強い人間には向かない方法だったが、背に腹は代えられなかった。
実はそれにその魔力の高さに対抗するための魔道具は既にマルタに使用していた。魔法で再現・シミュレーションした時はそれで完璧に彼の『魔力変換』の魔法は解除出来ていた。だが今回は解除することが出来なかった。起きて欲しくない予想外の事態だ。
このまま放置してしまえば、介入してきた魔力に対抗しようと漏れ出してきたエストの魔力が更に強くなり、このまま彼は魔力を吐き出しきることによって、死んでしまうだろう。簡単にそれが予測出来た。
「ルネ!」
「分かってます!!」
先程までケントの再生魔法のサポートをしていたルーネストは、片手で持てるように改善していた魔力補充の魔道具をそのままケントに一旦預けた。そして正面、マルタが先程まで展開していた魔術式まで移動してそれに向き合う。
マルタの役割はこの施術に置いて一番の難所だった。だからケントもルーネストも出来るだけ彼女の方に注意を払うようにしていたのだ。
先程まではエストの『魔力変換』を解除する直前までいっていたことは把握している。けれど何かが原因で、急にエストによって拒否されたのだ。ケントもルーネストも正直原因は分からない。理論上は全て完璧だった筈なのに、だ。
緊張からごくりと唾が勝手に喉を通り、自然と呼吸も浅くなる。背中にも嫌な汗をかいていた。
けれどやるしかないのだ。
(お願い、エスト……私に貴方の命を救わせて――)
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