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休日の朝からスマホが震える。時計を確認すれば朝の6時。これだけで誰からの連絡でスマホが震えたのかわかる。
俺は深い深いため息を吐いてからスマホを手に取りDMの通知だけ確認し、そっと元あった場所にスマホを戻そうとした。
だが戻す前にまたスマホが震える。
ため息をもう一度してから通知の相手を確認。
「・・・悪夢だ」
ここ連日続く同一人物からの通知攻撃に、俺は頭を抱えていた。相手は、先日コラボを断ったはずの九尾君。はっきりお断りしたのに、なぜか数日後からDMが止まらない。
『コラボダメな理由ってなんですか?』『キリトさんとはやってるのに、なんで俺とはダメなんですか?』『忙しいのにキリトさんとは遊ぶんですね』『根暗さん、人と遊ぶの苦手なんですか?』『このゲームなら根暗さんでも簡単ですよ!どうですか?』『俺と遊ぶのってそんなに嫌?』『コラボしたら絶対楽しいのに、なんでわかってくれないんですか?』
……などなど。仕事中でも容赦なく届く。曖昧に断ったつもりはないのに、相手にその気がないのか全く引く様子がない。
「ゲーム実況者ってみんなこんなに押しが強いのか……?」
受信拒否にしたら角が立つし、相手は未成年だし、なんか大人気ない気もしてしまう。だが、俺のメンタルはそこまで強くない。正直、未成年相手にメンタルブレイクしかけている。
しかも厄介なのはDMだけじゃない。最近、俺とキリトのコラボ動画には必ずと言っていいほど九尾君のコメントがつくのだ。
『キリトさんの足引っ張ってて爆笑しましたw 根暗さん面白い!俺ともやりましょう!』『まさかあそこで死ぬとは思わなかったですw』『キリトさんのアドバイスが完璧なのに、根暗さん流石すぎるwww 今度これ一緒にやりましょう!』
バカにしてるのか褒めてるのか、どう見ても前者寄り。仕方なく「いいね」だけ押してスルーしていたが、この【コラボしたいアピール】がリスナーに伝わったらしく、余計なお節介マンたちが「やってあげなよ!」と後押しDMを送ってくる始末。
極めつけは、ゼットでの匂わせ投稿。
『コラボしたかったのに、また断られちゃった』
たったその一言で、コメント欄は「かわいそう」「根暗、調子乗ってる」の大合唱。九尾君は一度も俺の名前を出していないのに、ネット民は勝手に俺だと断定して、見事に悪者扱いしてくるのだった。
(……いやいや、なんで俺が悪者になるんだよ)
訂正すべきなのか――。だが「わざわざ訂正とか、大物ぶってる」と叩かれる未来も簡単に想像できる。悩みに悩んだ末、結局眠れなくなり、二度寝を諦めて気分転換に喫茶店へ向かうことにした。
朝7時の喫茶店。
まさか自分がこんな時間に来る日が訪れるとは思わなかった。もう少し爽やかな気分で来たかったなと思いつつ、アールグレイと朝食を注文し、九尾君への返信を考えることにした。
『九尾君、前にも言ったと思うんですけど、キリト君とだけやってるのは、たまたま気が合ったからってだけで。正直、自分は人と関わるのが得意じゃなくて、色んな人とコラボできるほどの余裕もないんです。だから、キリト君とだけ細々とやらせてもらってる感じなんです。ほんと、ごめんなさい。』
送信して、大きくため息。
やっぱり大人気ないのだろうか……。
そんなことを考えている間にモーニングが届く。気を紛らわせようと写真を撮り、ゼットに「早起きしたので喫茶店で朝食」と投稿。
だが五分後。スマホが鳴り止まない。「いいね」だと思ったが、開けばアンチコメントの嵐だった。
『九尾君があんなに悲しんでるのに優雅に朝食?信じられない』『人と関われないなら部屋出るなよ』『忙しいとか言って喫茶店行く余裕あるんですね』
どれもこれも九尾君絡み。そして嫌な予感のまま彼のページを開けば――
『コラボしたかったんだけどな……一度も遊んでないのに“気が合わない”って言われちゃった。仕方ない、諦めよ』
「はあ!? 気が合わないなんて、一言も言ってねぇだろ……」
頭を抱える俺の横で、スマホの通知はまだ止まらない。ついに着信まで入り、画面に浮かんだのは――誠君の名前だった。
「そいつ、やっちゃっていいですね」
「まってまってまって、確定で話進めないで」
説明を終えた直後、誠君の第一声は怒りがピークに達している様子で、今にも電話を切って現場に乗り込むと言わんばかりだ。いや、電話越しにわずかに聞こえるキーボードの音だけで、すでに何かを企んでいる気配すらある。
「ダメだよ? 何にもしないで。キーボードから手を離してくれる? 怖いから、ね?」
「・・・」
「離しなさい!」
「・・・はーい」
渋々キーボードから手を離した誠君に、俺は小さく「ありがとう」と返し、喫茶店を出てゆっくり家へ向かう。
「にしても……なんなんですかね、コイツ……何がしたいんだろう。コラボだって善意から来たわけじゃない気がする。何か企んでるんじゃないですか? 絶対コラボしちゃダメですよ」
「そうだねぇ……俺も、善意だけで誘ってきたとは思えない。このまま無視してもいいけど……今日の夜、誠君と一緒に生配信する予定だよね? ちょっと……大丈夫かな」
実は誠君とコラボはほぼ録画で、生配信を一緒にするのは、あの日の泊まり以来が初めて。そして今日は二回目。誠君のチャンネルにお邪魔し、俺視点と誠君視点で楽しんでもらう企画だったのだ。
だが、この状況だと今日のコラボは少し危険かもしれない。「しばらくコラボやめようか」と俺が提案するも、誠君は即答で拒否する。
「なんで俺たちが、こいつのせいで我慢しなくちゃいけないんですか? 俺と公孝さんのランデブーを邪魔する奴は、何人たりとも許さない。荒らしが来たら速攻ブロックすれば大丈夫ですよ」
「やー……それだと余計荒れると思うよ?」
そう悩む俺をよそに、「いいこと思いついた!」と誠君は突然声を弾ませた。
その話を詳しく聞くと、正直俺は乗り気になれなかった。だが誠君はやる気満々で、これで決着をつけるくらいの意気込みだ。余計に荒れないことを祈りつつ、俺は誠君の作戦に乗ることにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
先週はお休みありがとうございました。
狐少年の襲来です。一人で解決できないのがちょっと情けない35歳かもと思いつつ、
多分トナリさんはこうなるんだろうな。。。っと思って書きました。
押しに弱いのはキリト君限定のようですね。
あと、こーゆーのって当事者よりも周りの方が熱くなるんですよね(笑
俺は深い深いため息を吐いてからスマホを手に取りDMの通知だけ確認し、そっと元あった場所にスマホを戻そうとした。
だが戻す前にまたスマホが震える。
ため息をもう一度してから通知の相手を確認。
「・・・悪夢だ」
ここ連日続く同一人物からの通知攻撃に、俺は頭を抱えていた。相手は、先日コラボを断ったはずの九尾君。はっきりお断りしたのに、なぜか数日後からDMが止まらない。
『コラボダメな理由ってなんですか?』『キリトさんとはやってるのに、なんで俺とはダメなんですか?』『忙しいのにキリトさんとは遊ぶんですね』『根暗さん、人と遊ぶの苦手なんですか?』『このゲームなら根暗さんでも簡単ですよ!どうですか?』『俺と遊ぶのってそんなに嫌?』『コラボしたら絶対楽しいのに、なんでわかってくれないんですか?』
……などなど。仕事中でも容赦なく届く。曖昧に断ったつもりはないのに、相手にその気がないのか全く引く様子がない。
「ゲーム実況者ってみんなこんなに押しが強いのか……?」
受信拒否にしたら角が立つし、相手は未成年だし、なんか大人気ない気もしてしまう。だが、俺のメンタルはそこまで強くない。正直、未成年相手にメンタルブレイクしかけている。
しかも厄介なのはDMだけじゃない。最近、俺とキリトのコラボ動画には必ずと言っていいほど九尾君のコメントがつくのだ。
『キリトさんの足引っ張ってて爆笑しましたw 根暗さん面白い!俺ともやりましょう!』『まさかあそこで死ぬとは思わなかったですw』『キリトさんのアドバイスが完璧なのに、根暗さん流石すぎるwww 今度これ一緒にやりましょう!』
バカにしてるのか褒めてるのか、どう見ても前者寄り。仕方なく「いいね」だけ押してスルーしていたが、この【コラボしたいアピール】がリスナーに伝わったらしく、余計なお節介マンたちが「やってあげなよ!」と後押しDMを送ってくる始末。
極めつけは、ゼットでの匂わせ投稿。
『コラボしたかったのに、また断られちゃった』
たったその一言で、コメント欄は「かわいそう」「根暗、調子乗ってる」の大合唱。九尾君は一度も俺の名前を出していないのに、ネット民は勝手に俺だと断定して、見事に悪者扱いしてくるのだった。
(……いやいや、なんで俺が悪者になるんだよ)
訂正すべきなのか――。だが「わざわざ訂正とか、大物ぶってる」と叩かれる未来も簡単に想像できる。悩みに悩んだ末、結局眠れなくなり、二度寝を諦めて気分転換に喫茶店へ向かうことにした。
朝7時の喫茶店。
まさか自分がこんな時間に来る日が訪れるとは思わなかった。もう少し爽やかな気分で来たかったなと思いつつ、アールグレイと朝食を注文し、九尾君への返信を考えることにした。
『九尾君、前にも言ったと思うんですけど、キリト君とだけやってるのは、たまたま気が合ったからってだけで。正直、自分は人と関わるのが得意じゃなくて、色んな人とコラボできるほどの余裕もないんです。だから、キリト君とだけ細々とやらせてもらってる感じなんです。ほんと、ごめんなさい。』
送信して、大きくため息。
やっぱり大人気ないのだろうか……。
そんなことを考えている間にモーニングが届く。気を紛らわせようと写真を撮り、ゼットに「早起きしたので喫茶店で朝食」と投稿。
だが五分後。スマホが鳴り止まない。「いいね」だと思ったが、開けばアンチコメントの嵐だった。
『九尾君があんなに悲しんでるのに優雅に朝食?信じられない』『人と関われないなら部屋出るなよ』『忙しいとか言って喫茶店行く余裕あるんですね』
どれもこれも九尾君絡み。そして嫌な予感のまま彼のページを開けば――
『コラボしたかったんだけどな……一度も遊んでないのに“気が合わない”って言われちゃった。仕方ない、諦めよ』
「はあ!? 気が合わないなんて、一言も言ってねぇだろ……」
頭を抱える俺の横で、スマホの通知はまだ止まらない。ついに着信まで入り、画面に浮かんだのは――誠君の名前だった。
「そいつ、やっちゃっていいですね」
「まってまってまって、確定で話進めないで」
説明を終えた直後、誠君の第一声は怒りがピークに達している様子で、今にも電話を切って現場に乗り込むと言わんばかりだ。いや、電話越しにわずかに聞こえるキーボードの音だけで、すでに何かを企んでいる気配すらある。
「ダメだよ? 何にもしないで。キーボードから手を離してくれる? 怖いから、ね?」
「・・・」
「離しなさい!」
「・・・はーい」
渋々キーボードから手を離した誠君に、俺は小さく「ありがとう」と返し、喫茶店を出てゆっくり家へ向かう。
「にしても……なんなんですかね、コイツ……何がしたいんだろう。コラボだって善意から来たわけじゃない気がする。何か企んでるんじゃないですか? 絶対コラボしちゃダメですよ」
「そうだねぇ……俺も、善意だけで誘ってきたとは思えない。このまま無視してもいいけど……今日の夜、誠君と一緒に生配信する予定だよね? ちょっと……大丈夫かな」
実は誠君とコラボはほぼ録画で、生配信を一緒にするのは、あの日の泊まり以来が初めて。そして今日は二回目。誠君のチャンネルにお邪魔し、俺視点と誠君視点で楽しんでもらう企画だったのだ。
だが、この状況だと今日のコラボは少し危険かもしれない。「しばらくコラボやめようか」と俺が提案するも、誠君は即答で拒否する。
「なんで俺たちが、こいつのせいで我慢しなくちゃいけないんですか? 俺と公孝さんのランデブーを邪魔する奴は、何人たりとも許さない。荒らしが来たら速攻ブロックすれば大丈夫ですよ」
「やー……それだと余計荒れると思うよ?」
そう悩む俺をよそに、「いいこと思いついた!」と誠君は突然声を弾ませた。
その話を詳しく聞くと、正直俺は乗り気になれなかった。だが誠君はやる気満々で、これで決着をつけるくらいの意気込みだ。余計に荒れないことを祈りつつ、俺は誠君の作戦に乗ることにした。
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先週はお休みありがとうございました。
狐少年の襲来です。一人で解決できないのがちょっと情けない35歳かもと思いつつ、
多分トナリさんはこうなるんだろうな。。。っと思って書きました。
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あと、こーゆーのって当事者よりも周りの方が熱くなるんですよね(笑
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