【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす

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狐襲来1

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「……配信始まったかな? あ、始まったね。よし!
では改めまして。どうもー、キリトです! 本日は予告しておりました通り、隣の根暗さんと同時配信でゲームをやっていきます!俺視点とトナリさん視点、両方で楽しんでもらえたらと思います! ――トナリさん、挨拶お願いします」
「ん? あ、そうか。あ、ど、どうも~……隣の根暗です。本日はよろしくお願いします」
「おっし! ばっちし緊張してますね! かわいいです!」
「……」
「無視は良くない」

ついに迎えた誠君との同時生配信。普段の録画配信ですら緊張で心臓がバクバクなのに、今日はさらに厄介な“サプライズ”が待っていた。

「で、えーっと。本日はですね、突然ですが、サプライズゲストをお呼びしています。ご挨拶どうぞ!」
「初めまして! 九尾です!! 本日はよろしくお願いします! わー!! キリトさんと一緒に配信できる日が来るとは思いませんでした!」

そう――九尾君が急遽ゲスト参加することになったのだ。誠君曰く、「このまま放置しても現状は悪化するだけ。だったらこっちの陣地に呼んで節度ある場で“コラボ”を叶えさせた方がいい」とのこと。
確かに理屈はわかる。けれどすでに、俺のチャット欄は荒れ始めていた。

『マジで暗そう』『どもっててキモ』『九尾君の足引っ張んなよ』

悪意100%。そして俺のリスナーたちが反論する。完全に悪循環だ。

(チャットオフにしとけばよかったかな……でも、それはそれで燃えるんだよなぁ)

「九尾君、俺とコラボしたかったんじゃなくて、トナリさんとコラボしたかったんでしょ?」
「あー、はい、そーですね! やっとコラボできて嬉しいですー。根暗さん、本日はよろしくお願いしまーす」
「はーい。よろしくお――」
「で!! 今日は何のゲームするんすか!」

……人の挨拶をぶった斬るし、温度差がすごい。
敵陣だの味方だの、そういうの関係なくこの子は“自分のテンション”で動いてるんだな、とため息が出る。

「……ハハハ、九尾君元気だね。えっと今日はこれ、『クッキングわっしょい』です。画面切り替わったかな? このゲームはお二人やったことあります?

「見たことはあるけど、やったことは――」
「俺あります! これ連携大事っすよね! この前チョコさんと500円さんとやった時、もう大惨事で!」
「へぇーそうなんだ。や~ほんと九尾君元気だねぇ。で、トナリさんは? やったことない感じ?」

誠君がすかさずフォローを入れてくれるけれど、また被せられるたびに情けなさが募る。

「うん。気にはなってたんだけど、一人じゃ味気ないかなって――」
「ぷっ、やば~」

また被せ。今度は笑いまで。リスナーたちも苛立ち始め、チャット欄はさらにギスギス。これ以上はまずい。空気を和らげようと、俺はわざと大げさに返す。

「あ、やっぱやばい? 俺、基本ソロゲーばっかでさ」
「えー、まじで根暗さん友達いないんすか? 一人で遊ぶとか(笑) リアルでも友達いない感じっすか?」
「九尾君! トナリさんはちゃんと友達いますから! ね?トナリさん!」
「おっ、おん……い、いる……一応……」
「トナリさーーん! その言い方は完全に“いないやつ”! もう、いいからゲーム始めよ! ほらスタート押して!」

誠君の機転でなんとか雰囲気を持ち直し、ようやくゲーム開始へ。けれどやっぱり九尾君の態度に好意は感じられない。

――人の心は本当に難しい。「なんか気に食わない」だけで敵扱いすることもある。本来なら、視界から外して終わりでいい話なのに。まだ十九歳、感情だけで突っ走ってしまう年頃だ。俺までムキになってはいけない。

(にしても、俺の何が“気に食わない”んだろうな……)

そこがわかれば多少は対処できるのに。そう思いながら画面を見つめた。

---

「えーっと、初見の人もいると思うので簡単に説明します! ルールはシンプル。指示された料理を協力して作って提供する。それだけです!」
「説明ざっつっすね、キリトさん」
「え?! わかるでしょ?!」
「ギリわかるっす」
「ギリかよ……じゃ、始めましょう!」

こうして三人協力ゲームがスタート。俺にとっては初プレイなのでチュートリアルからだ。

「ん? ボタンが……あ、これか。投げるのどれだ?」
「Aですよトナリさん! Bで走ります!」
「ほんとだ」

実はこの“操作確認”は俺と誠君の配信では恒例行事。なにせ俺が覚えられないからだ。

「おっさん通り越しておじーちゃんじゃんw 介護かよ!」
「おじーちゃん……」
「おい、トナリさんはまだおじさんだぞ!」
「キリト君、事実でも改めて言われると胸にくる」
「はいはい、おじーちゃんもう覚えた? 早く進めよー」

ああ、呼び名が「根暗さん」から「おじーちゃん」に進化してしまった。しかも「足引っ張らないでくださいねー」まで言われてしまった。完全に舐められている。
だが、社会人歴の長さゆえか、こういう効率重視ゲームはむしろ得意だ。最初こそ「何やってんすかー!」と怒鳴られたが、操作に慣れれば流れを先読みして先回りできる。すると逆に、効率的に動けてない人間が浮き彫りになる。――そう、九尾君が。

彼がミスをするたびに俺と誠君は「ドンマイ!」と明るく流すが、当の本人は舌打ちに暴言。ムキになっているのが伝わってくる。まずいなと思っていたら、突然九尾君が爆発した。

「あー!! もうおもんな!! クソゲーじゃん!」
「き、九尾君、落ち着い――」
「そうだ! ねぇアペやりましょう! 俺最近ちょっと上達したんすよ! キリトさんにも見てもらいたい!」
「いや、九尾君お前――」
「そうだね! アペしよっか! 俺ほとんどやったことないから二人の見学してようかな!」

誠君の怒りを遮って、俺は被せるようにその提案に乗った。ここで喧嘩はダメだ。誠君には申し訳ない。あとで必ず詫びよう。今は小さな王様を宥めることが先決だ。

「おじーちゃん、アペやってないんすか? 遅れてる~。見学とかやめて一緒にやりましょ。俺教えますよ!」

さっきとは打って変わって機嫌が直った九尾君にホッとする。しかし誠君のイライラゲージは限界突破寸前。――頼むから、早く配信終わってくれ。
そう願いながら、俺はアペックスを起動した。
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