【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす

文字の大きさ
6 / 35

あーそびーましょ!

しおりを挟む
あれから数日後。待ちに待った、キリトとゲームをして遊ぶ日がやってきた。

あらかじめ送られていたゲームの招待アカウントIDでログインして、準備完了。それから、通話やチャットができる無料アプリ「ドスコード」で、「今ログインしました」とチャットを送ると、すぐに着信が入った。

「はい、と、トナリです……」
『わぁ~!!生トナリさんだぁ……っ!』

それはこちらのセリフです、と思いつつも「今日はよろしくお願いします」と挨拶を返す。

「はい!よろしくお願いします!わー!嬉しいな!トナリさんとゲームで遊ぶ日が来るなんて……あっ、ごめんなさい、俺、興奮しすぎて招待認証忘れてた!」

それも俺のセリフだし、おちょこちょいだなぁとくすくす笑いながら、いつも動画で見ている元気なキリトさんに、俺の緊張はほんの少しだけほぐれていく。

キリトさんが招待認証をしてくれて、俺のPC画面はオープンワールドへと切り替わる。そこには、見慣れたキャラクターが立っていた。

「わー……キリトさんのキャラスキンと同じ世界に、俺のキャラスキンが……すげぇ」

思わず感動して、キリトさんのキャラの周りをぐるぐると回る。

「んふふ、トナリさん可愛いなぁ~。さて!今日遊ぶゲームはモイントクラフトなんだけれども、新しいワールドを立ち上げたものになるので、新世界です!手つかず状態ですね~。なので、これから俺とトナリさんで二人の世界をどんどん作っていきましょう!」

さすが実況者というべきか……まるでこれから実況が始まるかのような喋りだ。

「……あの、キリトさん、一つ確認なんですけど。録画とか……してないですよね?」
「あ、ごめんなさい、つい癖で……大丈夫です!録画はしてないので、リラックスして遊びましょう!」

その言葉にホッとしつつ、「じゃあ、冒険始めましょうか」と、俺たちはいよいよ動き出す。

モイントクラフトは全世界で大人気のオンラインゲームで、ブロックを使って世界を作ったり冒険したりと、プレイヤー次第でいろんな遊び方ができる。

俺たちはまず拠点探しだということで、リスポーン位置から移動して、さっそく旅に出ることになった。

「トナリさん、コミュ障って言ってましたけど、けっこう落ち着いてますね。意外でした」
「あー……なんというか……これでも緊張してるんです……それに、まだ実感が湧いてないというか……あ、敵っ――あああーーっ!」
「えっトナリさん!?死なないで!!始まってまだ5分しか経ってないよ!?ww待ってーーーーっ!!」

こうして開始5分で敵にやられるというアクシデントもありつつ、俺たちは本当に“普通に”ゲームを楽しんだ。この事故のおかげで緊張もいい具合にほぐれて、いろんな話をしながら、いろんな事件に見舞われながら、気づけば5時間もモイントクラフトの世界に浸っていた。

キリトさんはまだまだ元気そうだけれど、俺は流石に疲れてしまったので、ここでお開きにさせてもらうことにした。

「あー、今日は本当に楽しかったです!トナリさん、また遊びましょう!この続き、ぜひ!」
「あっ、ぜ、ぜひ!というか、こちらこそ楽しかったです!モイントクラフトがこんなに楽しいなんて、今日初めて知りました(笑)」

お世辞だとしても、素直に嬉しかった。俺の人生で一番――と言っても過言じゃない、素晴らしい思い出になった。しみじみと余韻に浸っていたそのとき、キリトさんが急に黙りこくる。

「キリトさん?」
「……あの、実はトナリさんに、謝らないといけないことがございまして……」
「え、な、なんすか……?」

なにごと!?と警戒する俺に、キリトさんはしばらく口ごもった後、意を決したように言った。

「……実は……録画してたんです……」
「えっ!?」
「ごめんなさい!!!!どーーーしても、トナリさんと遊んだ記録が欲しくて!!」
「そんな記録、残してどうすんすか!!」
「後で見返してニヤニヤしたかったんです!!!」
「ニヤニヤするような場面、ありました!?!?」
「ありました!!!!」
「ないです!!!!!!!!」

ぎゃーわーと、勢いだけの言い合いになって、最終的にはふたりして笑ってしまった。

「うー……笑いすぎて腹いてぇ……まあ、個人で楽しむなら録画してても別にいいですけど……」
「や、これを動画として投稿したいです」
「はあっ!?」

もうここまで来たら、有名配信者だろうとなんだろうと関係ない。「話がちゃうやろがい!!」と勢いよくツッコんでしまう。

「やめてトナリさん、また笑っちゃうwwひーっ」
「いやいやキリトさん、笑い話じゃない!コラボ動画出さないって話だったでしょ!ダメダメ!そんなの投稿したらファンがキレ散らかして俺爆発する!!」
「しないしない!」
「するする!!俺、途中からわざとキリトさん崖から落としたり、後ろにゾンビけしかけたり、水流して水没させたりしてましたから!!」
「あれやっぱりトナリさんの仕業だったかっ!!!!」
「あっ言っちゃった!!!」
「くははっ!ほらもう、面白すぎる……あー腹筋痛いぃ……これ絶対面白いんだから……動画にさせてほしいっす……!それに、トナリさんのチャンネルの宣伝にもなると思うんです!トナリさんの配信は、一度火がつけば、あっという間に100万人行きます!」
「いや、さすがにそれは……」

確かに、キリトさんの動画に出られれば、かなり良い宣伝にはなる。でも、登録してくれるかどうかは別問題だ。火なんて、そう簡単につくものじゃない。それに――

「……なんか、キリトさんを……“使う”みたいで……嫌だな……」

これが、俺がコラボを渋っていた一番の理由だった。利用してるみたいで、どうしても心苦しかったのだ。

「トナリさん……いいんです。俺を使ってください。その方が、俺、嬉しいです。んで、登録者100万人行ったら――俺が有名にしたんだ!って、自慢させてください」
「キリトさん……」

この人は、本当に優しい人だ。この甘い言葉に、乗ってしまおうか――俺の心は、大きく揺らぐ。

「大丈夫です。俺がついてます!」
「んん……」
「トナリさん!お願いします!」

俺は押しに弱いタイプではないと思っていた。けれど、この人には、どうも弱いらしい。「……わかりました」と返事をした後、ひとつだけ条件を出す。

「上げる前に、一回見させてもらってもいいですか? それで、どうしてもダメだなって思ったら……あげないでほしいです」
「わかりました! この約束は絶対守るんで! よし!!やるぞー!」

やる気になっているキリトの声を聞きながら、この先何かが変わっていくのかな……という、期待と不安が入り混じって、解散した後もしばらくボーッとPC画面を見つめていた。

————————-
ここまでお読みいただきありがとうございます。
もう少しシリアスになると思ってたんですが、全然ならない。おかしいな…。

と、思いながら次回からキリト君視点を書こうかなと思っております。

では。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた

BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。 「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」 俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

恋人は配信者ですが一緒に居られる時間がないです!!

海野(サブ)
BL
一吾には大人気配信者グループの1人鈴と付き合っている。しかし恋人が人気配信者ゆえ忙しくて一緒に居る時間がなくて…

《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

ラベンダーに想いを乗せて

光海 流星
BL
付き合っていた彼氏から突然の別れを告げられ ショックなうえにいじめられて精神的に追い詰められる 数年後まさかの再会をし、そしていじめられた真相を知った時

処理中です...