空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ

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後編 ヒールが使えない治癒士〜ついに魔力覚醒!?〜

第四十四話 決死の逃避行

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 ライオスの前に現れたのは、先程のモルマウスとは違う、一回り大きなネズミだった。

 「けっ!精霊獣ベアマウスか……」

 「ベアマウス?」

 「そうよ!ベアマウスはモルマウスの上位種だ!」

 モルマウスは三十センチほどなのに対して、ベアマウスは五十センチほど。数字以上にその迫力は凄まじい。

 「そうなのか……。ライオス、お前勉強は苦手なのに、よくそんなこと知ってるな」

 「ノエルゥゥ……貴様!俺を誰だと思ってる!勉強は確かにできないが!精霊獣の知識だけは叩き込まれてるんだ!」

 「叩き込まれている?」

 「そうだ!我がアルト家は先祖代々、精霊獣討伐の名家だ。祖父も父上も兄上もアドバンスドクラスの戦士で、代々このライゼル公国を守護する騎士団に名を連ねているんだ!」

 (なるほど……。それでライオスはあんなに家訓や誇りに拘るのか......)

 納得したノエルの前で、ベアマウスが距離を詰め、躊躇なく襲いかかってきた。

 「チュュューン!」

 「ウォォォ……!」ライオスは木刀の大剣を振りかぶる。しかし、ベアマウスは素早くその一撃をさらりとかわした。

 「このぉぉ......!ネズミの分際で舐めやがって!」熱くなったライオスが、何度も大剣を振り回す。

 (ライオスの悪い癖だ......頭に血が上ると攻撃がさらに「雑」になる......)ノエルは冷静に観察していた。案の定、ベアマウスは無鉄砲な攻撃をサラッと容易にかわし続ける。

 (やはりネズミだけあってすばしっこい。ライオスとの相性は最悪だ。……でも、逃げ回るばかりで決定的な攻撃を仕掛けてこない。しかも単体で行動しているなんて、何かが変だぞ」

 「うりゃぁぁぁ......!......やったぜ!」遂にライオスの木刀がベアマウスを捉えた。

 聖霊獣ベアマウスはエーテルクリスタルへと姿を変える。

 「どうだ、ノエル!」ライオスは勝ち誇った笑みを浮かべた。

 (やっぱりおかしい。これじゃモルマウスの攻撃の方が統率がとれていた。上位種がこれほど単調なのか?)

 「なんだよノエル!黙ってないで何か言えよ!俺の戦闘が凄すぎて見惚れたか?」

 「ライオス......なにかおかしい、簡単過ぎる......。気を抜くな!」

 「なんだと?ノエル!また俺に生意気に指図するのか?」

 「チュゥゥゥゥ......!!」闇の奥から無数に赤く光る点が、地鳴りのような鳴き声と共に迫ってきた。

 「そ、そんな......」それを見たライオスが、その場に崩れ落ちた。

 五体のベアマウスを引き連れ、さらにその背後に君臨するひと際巨大な影。

 「マウスキング......。なぜ市街地の地下にこんな奴がいるんだ......」ライオスの顔が恐怖で引き攣る。

 「マウスキング?......なんて柄の悪いネズミ野郎だ」ノエルは呟いた。

 マウスキングは体長一メートル超、もはやネズミというよりはイノシシの風貌だ。灰色の毛並みだが、目の周囲が三角の黒い毛で覆われており、まるで黒いサングラスをかけているように見える。

 (まるで「ちょい悪親父」だ......汗)

 マウスキングはベアマウスの後ろで鼻息を鳴らす。

 「ノエル......。俺がここを食い止める。お前は逃げろ!」ライオスはやっとの思いで立ち上がり、震える手で木刀を構えた。

 「ライオス......お前は馬鹿か?......」

 「なに......!?ノエル!また俺を馬鹿にするのか!!」

 顔を真っ赤にするライオスに、ノエルが言い放つ。

 「お前ひとりがここに残って、俺が逃げ切れると本気で思っているのか?」

 「......だって、しょうがねぇだろ......アルト家の家訓では『弱きを助ける』ことなんだ......」ライオスはボソボソと呟いた。

 「馬鹿野郎!一緒に逃げるんだよ!!」ノエルはライオスの腕を強く掴み走り出した。

 「お、おいノエル!敵前逃亡なんて男がすることじゃねぇぇぇ!!」

 「うるせぇぇぇぇ!いいからお前も死ぬ気で走れ!!」

 背後から迫るベアマウスたちの足音を聞きながら、二人は暗い地下道を一目散に駆け抜けた。
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