101 / 203
番外編1
カリー・カイサック4
しおりを挟む
カリーはそのまま結婚の際に持って来た物だけを使用人に鞄に詰められて、キイスとは別の馬車でカイサック男爵家に向かった。
カイサック男爵家には離縁することになったと先触れを出してはいたが、事情までは知らせていなかった。だが、これまでのことから、カイサック男爵もやっぱりという気持ちであった。
「何があったか聞くまでもないかもしれませんが」
「不貞ではありません」
「えっ」
カイサック男爵は完全に不貞で、出戻らされたのだと思っていた。
「いえ、私と結婚生活がという話ではないのです。それ以前、いえ、過去にしたことを償う時が来たというべきでしょうか。王族への不敬な発言で、カリーは王家の催しの招待から外されました。こちらが通達です」
「王家?」
間違いなく王家から通達に、キイスが言ったことが書かれており、唖然とした。過去に不作法をした者が通達されたことがあると聞いたことがある程度だ。
「私は何を言ったかは聞くつもりもありません。始めは憶えていないようでしたから、正直、信憑性に欠けます」
「でも妃殿下が勘違いされて、ということは」
「君はさっき認めただろう?勘違いだろうが、男爵令嬢が何か言うこと自体がおかしいのだ。まだ理解できていないのか?」
カリーも自身がおかしかったことは理解は出来ているが、こんなことになってしまったことに理解が追い付かない。
「私は子爵家、子爵領を守らなければなりません。結婚してからはよくやってくれていたので、非常に残念ですが、離縁させてください」
「待って、本当に離縁するしかないの?私たち上手くいっていたじゃない」
「だから言っただろう?私には守らなければならないものがあると」
「私は、守らなければいけない者ではないの?」
「君は自分の償いをすべきだろう?爵位が高い方たちは私たち以上に、重い責任を背負っているのだ。教育だって比べ物にならない。だからこそ敬うものだろう?」
「…それは」
考えたこともなかった、爵位が高くていいな、きっとお金も沢山持っているのだろうなとくらいにしか思っていなかった。
「その頂点に近い方にどのようなことを言ったのか知らないが、相応しくない発言をしたのなら、外されて当然だろう。妃殿下は語学を武器に、実績も実力もある方だ。そんな方に、王家に、君は敬意を払う気がない、そう判断されたということだよ」
「そんなこと思っていないわ」
「いくら言っても、君は不敬な発言をしたんだろう?そう取られても仕方ないことをしたんだ」
「許してもらえば、そうよ、許してもらえば」
「簡単に会えるものではない、そもそも招待から外されてどうやって会うのだい?そんな者が近づいた時点で、排除されるだけだ」
確かに会うことなど、数回しかなかった。学園でもたまに見掛ける程度。クラスメイトは遠くから見るだけで、きゃあきゃあと騒いでいる人もいた、爵位も関係なく、男子もだが、女子も多かった。そして、見れただけでも幸運だと、近づくなど恐れ多いとよく言っていた。
「万が一、許されたとしても結婚は続けらないよ」
「そんな…」
「キイス殿、離縁を認めます。申し訳ございませんでした。持参金を慰謝料としてお受け取りください、足りなければ」
カイサック男爵家も結婚するならばと、ロイル子爵家に持参金を渡していた。
「いえ、慰謝料は…」
「いえ、せめて持参金だけでも受け取ってください」
「分かりました、離縁の理由は不貞にして置きましょうか」
「っな、不貞なんて」
「その方がいいだろう、王族への不敬な発言で離縁されたと言って欲しいかい?」
「それは、でもバレるって」
「高位貴族にはだよ、元々関わることは少ない」
「そちらにお任せします」
「分かりました」
離縁の手続きが淡々と進められ。あっという間にキイスは帰って行った。つい数時間前まで笑い合っていたのに、旅行の計画を立てようなどと話していたのに。
カイサック男爵家には離縁することになったと先触れを出してはいたが、事情までは知らせていなかった。だが、これまでのことから、カイサック男爵もやっぱりという気持ちであった。
「何があったか聞くまでもないかもしれませんが」
「不貞ではありません」
「えっ」
カイサック男爵は完全に不貞で、出戻らされたのだと思っていた。
「いえ、私と結婚生活がという話ではないのです。それ以前、いえ、過去にしたことを償う時が来たというべきでしょうか。王族への不敬な発言で、カリーは王家の催しの招待から外されました。こちらが通達です」
「王家?」
間違いなく王家から通達に、キイスが言ったことが書かれており、唖然とした。過去に不作法をした者が通達されたことがあると聞いたことがある程度だ。
「私は何を言ったかは聞くつもりもありません。始めは憶えていないようでしたから、正直、信憑性に欠けます」
「でも妃殿下が勘違いされて、ということは」
「君はさっき認めただろう?勘違いだろうが、男爵令嬢が何か言うこと自体がおかしいのだ。まだ理解できていないのか?」
カリーも自身がおかしかったことは理解は出来ているが、こんなことになってしまったことに理解が追い付かない。
「私は子爵家、子爵領を守らなければなりません。結婚してからはよくやってくれていたので、非常に残念ですが、離縁させてください」
「待って、本当に離縁するしかないの?私たち上手くいっていたじゃない」
「だから言っただろう?私には守らなければならないものがあると」
「私は、守らなければいけない者ではないの?」
「君は自分の償いをすべきだろう?爵位が高い方たちは私たち以上に、重い責任を背負っているのだ。教育だって比べ物にならない。だからこそ敬うものだろう?」
「…それは」
考えたこともなかった、爵位が高くていいな、きっとお金も沢山持っているのだろうなとくらいにしか思っていなかった。
「その頂点に近い方にどのようなことを言ったのか知らないが、相応しくない発言をしたのなら、外されて当然だろう。妃殿下は語学を武器に、実績も実力もある方だ。そんな方に、王家に、君は敬意を払う気がない、そう判断されたということだよ」
「そんなこと思っていないわ」
「いくら言っても、君は不敬な発言をしたんだろう?そう取られても仕方ないことをしたんだ」
「許してもらえば、そうよ、許してもらえば」
「簡単に会えるものではない、そもそも招待から外されてどうやって会うのだい?そんな者が近づいた時点で、排除されるだけだ」
確かに会うことなど、数回しかなかった。学園でもたまに見掛ける程度。クラスメイトは遠くから見るだけで、きゃあきゃあと騒いでいる人もいた、爵位も関係なく、男子もだが、女子も多かった。そして、見れただけでも幸運だと、近づくなど恐れ多いとよく言っていた。
「万が一、許されたとしても結婚は続けらないよ」
「そんな…」
「キイス殿、離縁を認めます。申し訳ございませんでした。持参金を慰謝料としてお受け取りください、足りなければ」
カイサック男爵家も結婚するならばと、ロイル子爵家に持参金を渡していた。
「いえ、慰謝料は…」
「いえ、せめて持参金だけでも受け取ってください」
「分かりました、離縁の理由は不貞にして置きましょうか」
「っな、不貞なんて」
「その方がいいだろう、王族への不敬な発言で離縁されたと言って欲しいかい?」
「それは、でもバレるって」
「高位貴族にはだよ、元々関わることは少ない」
「そちらにお任せします」
「分かりました」
離縁の手続きが淡々と進められ。あっという間にキイスは帰って行った。つい数時間前まで笑い合っていたのに、旅行の計画を立てようなどと話していたのに。
613
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらちん黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる