文字の大きさ
大
中
小
100 / 203
番外編1
カリー・カイサック3
「嘘だろ…関係を持っていたのか!何ということだ…」
「え?嘘だよね…?」
「一度、一度だけなんです」
何度も関係を持っていたように振舞っていたのに、一度だけだという日が来るとは思っていなかっただろう。王族と関係を持ったことが自身の中だけの自慢だったのに、それで今、失おうとしているのだ。
「ふげけるな!何て相手と…聞かなかったことにする」
「でもご結婚前で…」
「王太子殿下は妃殿下とは六歳の頃に婚約されているのだ、五歳の頃などというわけでないだろう!」
「それっは、そうですが」
カリーの脳裏にようやく、サリーへの暴言を発する自身が甦って来た。お酒を飲んでいたこともあり、何度か煽るようなことを言った。元々、カリーはお酒で気が大きくなる質だった。
「妃殿下も、王族ですか」
「王太子妃になられてからは王族だ、その前だとしても侯爵令嬢、王太子殿下の婚約者という立場から王族扱いとする場合もある。まさか妃殿下にも何かあるのか?」
「何だと!」
「父上、血圧が上がりますから落ち着きましょう」
子爵はもう血管が切れてしまいそうだ。カリーもその様子に只事ではないことは分かっている、分かってはいるが、もう何を言えばいいのか分からない。
「これが落ち着いていられるか!この家は終わるぞ」
「そんな…」
「妃殿下に何か言ったのか」
「でもそれは、あああ!」
記憶がはっきりして来た、これは王太子殿下ではない、妃殿下への不敬な発言だ。経験のなさそうな相手への卑猥な発言は気分が良かった。
「どうした?何だ?」
「妃殿下へ、だと、思います。不敬な発言は」
「何だと!」
「侯爵令嬢に男爵令嬢が言ったのか?なぜ、そんなことを…」
「妃殿下に他の令嬢が言っていたのを見たことがあって」
「誰だ?」
「ミアローズ・エモンド様です」
「彼女は公爵令嬢だ」
「でも、ルアンナ・アズラー様も」
「彼女は侯爵令嬢だ。男爵令嬢とは違う」
あるパーティーでミアローズ・エモンドが自身の方が美しいと、蔑んでいるのを見たことがあった。ルアンナ・アズラーは学園で、陰湿に取り巻きと取り囲んでいて、いじめているのかと思ったくらいだ。
だが、そうだ、侯爵令嬢と公爵令嬢である。取り巻きに男爵令嬢がいたかもしれないが、高位貴族の話だ。いくら関係を持っていても、カリーは所詮、男爵令嬢でしかないはずだったのだ。
「それは…」
「なんてことを…」
「私はどうしたら」
「謝罪はしなかったのか?」
「…」
「はあ…もうどうにもならない、事実なんだろう?妃殿下は非常に記憶力が良いと聞いている、おそらく君が憶えていなくても、憶えてらっしゃったのだろう」
「どうして今になって、最近は言っていません。あなたと出会った頃から、会ってもいません」
王族に会える機会など、そんなにはない。会っていなくても不思議ではない。誰にとっても弁解にはならない。
「王太子妃になられてから言ったことは?」
「…あります」
「完全に王族への不敬な発言だ、どうしてすぐに思い出せないんだ?君にとって妃殿下への不敬な発言は、大したことではないと思っていたのか?」
王族に暴言を吐いておいて、思い出せないなど、罪悪感のない者だと思われても仕方がない。事実、カリーは罪悪感を今の今まで感じてもいなかった。
「キイス、離縁だ。このままでは潰れてしまう。領民に示しが立たない」
「分かっています」
「待って、待ってください」
「すまない、でも領民を守らなくてはならないんだ。男爵家に送ろう、一緒に話を付けさせてもらう」
「それは、それだけは…」
「君のせいで子爵家がどうなってもいいというのか!庇うことは出来ない」
キイスはいくら嫁いでから問題のないカリーでも、家と領民を捨ててまで、助けたいとは思わなかった。人は変われると思っていたが、謝罪すらしてもいない、過去のことが消えるわけではなかった。王家がなぜここまでの処置をしたのかは分からないが、おそらく相当な力が動いてのことだろう。
「え?嘘だよね…?」
「一度、一度だけなんです」
何度も関係を持っていたように振舞っていたのに、一度だけだという日が来るとは思っていなかっただろう。王族と関係を持ったことが自身の中だけの自慢だったのに、それで今、失おうとしているのだ。
「ふげけるな!何て相手と…聞かなかったことにする」
「でもご結婚前で…」
「王太子殿下は妃殿下とは六歳の頃に婚約されているのだ、五歳の頃などというわけでないだろう!」
「それっは、そうですが」
カリーの脳裏にようやく、サリーへの暴言を発する自身が甦って来た。お酒を飲んでいたこともあり、何度か煽るようなことを言った。元々、カリーはお酒で気が大きくなる質だった。
「妃殿下も、王族ですか」
「王太子妃になられてからは王族だ、その前だとしても侯爵令嬢、王太子殿下の婚約者という立場から王族扱いとする場合もある。まさか妃殿下にも何かあるのか?」
「何だと!」
「父上、血圧が上がりますから落ち着きましょう」
子爵はもう血管が切れてしまいそうだ。カリーもその様子に只事ではないことは分かっている、分かってはいるが、もう何を言えばいいのか分からない。
「これが落ち着いていられるか!この家は終わるぞ」
「そんな…」
「妃殿下に何か言ったのか」
「でもそれは、あああ!」
記憶がはっきりして来た、これは王太子殿下ではない、妃殿下への不敬な発言だ。経験のなさそうな相手への卑猥な発言は気分が良かった。
「どうした?何だ?」
「妃殿下へ、だと、思います。不敬な発言は」
「何だと!」
「侯爵令嬢に男爵令嬢が言ったのか?なぜ、そんなことを…」
「妃殿下に他の令嬢が言っていたのを見たことがあって」
「誰だ?」
「ミアローズ・エモンド様です」
「彼女は公爵令嬢だ」
「でも、ルアンナ・アズラー様も」
「彼女は侯爵令嬢だ。男爵令嬢とは違う」
あるパーティーでミアローズ・エモンドが自身の方が美しいと、蔑んでいるのを見たことがあった。ルアンナ・アズラーは学園で、陰湿に取り巻きと取り囲んでいて、いじめているのかと思ったくらいだ。
だが、そうだ、侯爵令嬢と公爵令嬢である。取り巻きに男爵令嬢がいたかもしれないが、高位貴族の話だ。いくら関係を持っていても、カリーは所詮、男爵令嬢でしかないはずだったのだ。
「それは…」
「なんてことを…」
「私はどうしたら」
「謝罪はしなかったのか?」
「…」
「はあ…もうどうにもならない、事実なんだろう?妃殿下は非常に記憶力が良いと聞いている、おそらく君が憶えていなくても、憶えてらっしゃったのだろう」
「どうして今になって、最近は言っていません。あなたと出会った頃から、会ってもいません」
王族に会える機会など、そんなにはない。会っていなくても不思議ではない。誰にとっても弁解にはならない。
「王太子妃になられてから言ったことは?」
「…あります」
「完全に王族への不敬な発言だ、どうしてすぐに思い出せないんだ?君にとって妃殿下への不敬な発言は、大したことではないと思っていたのか?」
王族に暴言を吐いておいて、思い出せないなど、罪悪感のない者だと思われても仕方がない。事実、カリーは罪悪感を今の今まで感じてもいなかった。
「キイス、離縁だ。このままでは潰れてしまう。領民に示しが立たない」
「分かっています」
「待って、待ってください」
「すまない、でも領民を守らなくてはならないんだ。男爵家に送ろう、一緒に話を付けさせてもらう」
「それは、それだけは…」
「君のせいで子爵家がどうなってもいいというのか!庇うことは出来ない」
キイスはいくら嫁いでから問題のないカリーでも、家と領民を捨ててまで、助けたいとは思わなかった。人は変われると思っていたが、謝罪すらしてもいない、過去のことが消えるわけではなかった。王家がなぜここまでの処置をしたのかは分からないが、おそらく相当な力が動いてのことだろう。
感想
あなたにおすすめの小説
私が使うはずだった部屋に病弱令嬢を寝かせた婚約者とは、白紙に戻します
さんけい王家の意向で進められた婚約。
リーゼロッテ・エーレンフェルトは、婚約者ヒューバート・ラドクリフの屋敷を訪れた日、婚礼後に自分が使うはずだった部屋で、病弱な男爵令嬢アネットが眠っているのを見る。
「君なら分かってくれると思った」
ヒューバートはそう言った。
けれどリーゼロッテが問いたいのは、アネットが可哀想かどうかではない。
弱い方を助けるために、なぜ私の部屋を使ったのですか。
なぜ私の席を、あなたの優しさのために差し出したのですか。
部屋、席、茶会、呼び名。
少しずつずらされた扱いを、リーゼロッテは一つずつ確認していく。
善意を理由に他人の場所を使う婚約者とは、白紙に戻します。
※初日以外は6時・17時の更新といたします。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
私のことはお気になさらず
みおな 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
どうぞお好きになさってください
みおな学園に入学して一ヶ月。
婚約者の第一王子殿下は言った。
「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕はひとりの男として自由に過ごしたい」
公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。
「好きになさればよろしいわ」
彼女の離縁とその波紋
豆狸夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。