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贖罪
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「ご存じありませんでしたか?」
「引き取りに来たのは存じておりましたが、母の家具を持って公爵家に嫁がれたのでしょうか…?」
「メリーナ様が望まれたそうです」
「そうでしたか…でも、どうして」
リークスはてっきりスペンサ侯爵邸に運ばれたのだと思っていたが、ようやくメメリーの家具の行方が分かった。
「早くに亡くなり、あまり使われないままだったから、せめて引き継ぎたかったとおっしゃっていました」
「本当は私が大事にするべきだったのでしょうね…」
ローリアに言われて、そうするべきだったと、初めて罪悪感を感じた。
「女性と男性では違いますから」
「私はそういった思いを分かっていなかったと思います。メリーナ夫人の意見と反しますね…」
「正直ですね」
リークスについて悪い噂を聞くようなことはなかったが、元夫人がリークスのせいだと騒いでいることはローリアも知っていた。
「事実ですから…」
「私は弱い人間です。ですが、メリーナ様もそうおっしゃっていたのです。だからこそ、気持ちを考えられることもあると…強いだけでは救えない人もいると、それで少し強くなれたと…でも、同時に傷付けてもいい人なんていないともおっしゃっていました…私に優しくしてくれたのも、不甲斐ない自分の贖罪だと…」
「贖罪…」
リークスはその言葉で浮かんだのは、エンバーのことだった。
「私はその言葉で、信じられたのです」
「…え?」
「私のためではなく、外に出られなくなった私に、自分の贖罪に付き合って欲しいとおっしゃったのです」
「それが、良かったと?」
「私にはそのくらいが良かったのです…家族は優しく見守ってくれましたが、そうではない人はあなたのために言っていると、言われてきました。でも、メリーナ様は違ったのです」
ローリアのためを思っている方もいたと思うが、その言葉はさらに自分の不甲斐なさを実感することになり、追い詰められてしまった。
だから、あなたのためではなく、私のためにと言ったメリーナに、飛び出すことが出来た。
「そうでしたか…」
「メリーナ様でも、後悔することがあるのならと楽になれたのです」
エンバーは改めて、母であるメメリーのことを考えた。母親がいないという感覚を持っていなかったリークスには、あまり考えたことがなかった。
「父上、私は母上のことをもっと考えるべきでした…きちんと話を聞くこともしなかった」
「メメリーのことか」
「はい、あの家具はデートライ公爵邸にあるそうです」
「そうか…」
「知っていたのですか?」
「っいや、そうではないかと思っていただけだ」
メリーナがデートライ公爵に嫁いだと聞いた時に、あの家具を持って行ったのだと思った。
「なぜですか?」
「メリーナ夫人は、メメリーのことを色々聞いていただろうからな」
「そうだったのですね…では、きっとメリーナ夫人は私が思い入れがないことを不愉快に思っていたかもしれません」
「そんなことはないだろう」
証拠は出せないが、リークスを嫌うことは絶対にない。
成長し、婚約だって結婚だって、祝っていたはずである。こんな結果になるとは思っていなかったが、もうメメリーもメリーナもいない。
「ローリア嬢がメリーナ夫人と親しかったようです。ローリア嬢を外へ連れ出したのを贖罪だと言っていたそうです」
「贖罪か…」
後悔したと書かれていた…だが、カールスにはメリーナを責める気持ちは一切なかった。
一体、何のためにメメリーはメリーナとして生まれ変わったのかには、答えることは出来なかったが、何か意味があったのだと思いたい。
「引き取りに来たのは存じておりましたが、母の家具を持って公爵家に嫁がれたのでしょうか…?」
「メリーナ様が望まれたそうです」
「そうでしたか…でも、どうして」
リークスはてっきりスペンサ侯爵邸に運ばれたのだと思っていたが、ようやくメメリーの家具の行方が分かった。
「早くに亡くなり、あまり使われないままだったから、せめて引き継ぎたかったとおっしゃっていました」
「本当は私が大事にするべきだったのでしょうね…」
ローリアに言われて、そうするべきだったと、初めて罪悪感を感じた。
「女性と男性では違いますから」
「私はそういった思いを分かっていなかったと思います。メリーナ夫人の意見と反しますね…」
「正直ですね」
リークスについて悪い噂を聞くようなことはなかったが、元夫人がリークスのせいだと騒いでいることはローリアも知っていた。
「事実ですから…」
「私は弱い人間です。ですが、メリーナ様もそうおっしゃっていたのです。だからこそ、気持ちを考えられることもあると…強いだけでは救えない人もいると、それで少し強くなれたと…でも、同時に傷付けてもいい人なんていないともおっしゃっていました…私に優しくしてくれたのも、不甲斐ない自分の贖罪だと…」
「贖罪…」
リークスはその言葉で浮かんだのは、エンバーのことだった。
「私はその言葉で、信じられたのです」
「…え?」
「私のためではなく、外に出られなくなった私に、自分の贖罪に付き合って欲しいとおっしゃったのです」
「それが、良かったと?」
「私にはそのくらいが良かったのです…家族は優しく見守ってくれましたが、そうではない人はあなたのために言っていると、言われてきました。でも、メリーナ様は違ったのです」
ローリアのためを思っている方もいたと思うが、その言葉はさらに自分の不甲斐なさを実感することになり、追い詰められてしまった。
だから、あなたのためではなく、私のためにと言ったメリーナに、飛び出すことが出来た。
「そうでしたか…」
「メリーナ様でも、後悔することがあるのならと楽になれたのです」
エンバーは改めて、母であるメメリーのことを考えた。母親がいないという感覚を持っていなかったリークスには、あまり考えたことがなかった。
「父上、私は母上のことをもっと考えるべきでした…きちんと話を聞くこともしなかった」
「メメリーのことか」
「はい、あの家具はデートライ公爵邸にあるそうです」
「そうか…」
「知っていたのですか?」
「っいや、そうではないかと思っていただけだ」
メリーナがデートライ公爵に嫁いだと聞いた時に、あの家具を持って行ったのだと思った。
「なぜですか?」
「メリーナ夫人は、メメリーのことを色々聞いていただろうからな」
「そうだったのですね…では、きっとメリーナ夫人は私が思い入れがないことを不愉快に思っていたかもしれません」
「そんなことはないだろう」
証拠は出せないが、リークスを嫌うことは絶対にない。
成長し、婚約だって結婚だって、祝っていたはずである。こんな結果になるとは思っていなかったが、もうメメリーもメリーナもいない。
「ローリア嬢がメリーナ夫人と親しかったようです。ローリア嬢を外へ連れ出したのを贖罪だと言っていたそうです」
「贖罪か…」
後悔したと書かれていた…だが、カールスにはメリーナを責める気持ちは一切なかった。
一体、何のためにメメリーはメリーナとして生まれ変わったのかには、答えることは出来なかったが、何か意味があったのだと思いたい。
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