【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ

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 30歳前になっていたとはいえ、さすがに周りも早過ぎるとは思った。

 皆、ファイナを大人しい女性だと思っていたが、変わったのか、切羽詰まっているのだろうと、しかも離縁をリークスのせいだと周りに言っていたが、ハーライド伯爵家は無関係を貫くことにした。

 ファイナのことで女性不信気味だったが、9ヶ月が過ぎる頃、ようやくリークスは社交界に復帰した。

 そして、ある令嬢との縁談が持ち込まれた。相手はメリーナの継子であるルージスの妻・ミューリアの姉でるローリアあった。

 他国の令息と婚約をしていたが、婚約を心変わりを理由に一方的に解消されて、恥ずかしい存在だからと、学園も自宅学習に切り替えて、邸に引き籠っていた。

 そのローリアを外に連れ出したのは、他でもないメリーナであった。

 ルージスとミューリアと喫茶店に行かないかと誘い、最初は断っていたが、美味しいものがあるのに、公爵夫人の予算を持て余していたメリーナがご馳走してあげるのにと、一度だけと行くことにした。

 その一度がローリアは、とても楽しかった。

 出掛けるのが怖いと思っていたが、そんなことはなかった。メリーナと同じ侯爵家の令嬢であり、婚約解消も理不尽なものであったことは、きちんと周知されていた。

 何か思う者がいても、侯爵令嬢に嫌味を言う相手など、正直限られている。

 気にし過ぎていたのだと、1年以上が経って、ようやく気付けた。家族でもなく、年上ではあるが、年の近いメリーナと、妹と妹の婚約者という、絶妙な関係性が良かったのかもしれないと、侯爵夫妻もホッとしていた。

 だからと言って、婚約や結婚を無理強いをすることはなかった。ミューリアも子どもが生まれたら、家庭教師になってくれたらいいと言っていた。

 メリーナの従兄妹で、ファイナのことで社交界から遠ざかっていたリークスなら、会ってみてもいいとローリアは思った。

 ローリアは23歳で、婚約解消も相手のせいで、引き籠ってしまっただけで、自分は子どもが出来ないかもしれないのに、リークスは良いのだろうかと思った。

「メリーナ様に、とても良くしていただいたのです…」
「メリーナ夫人に」
「はい…まだ目覚めると、メリーナ様がいないなんて嘘ではないかと…思ってしまいます」
「私も、最近は親しくしていたわけではありませんが、そう思います」
「メリーナ様はリークス様もエンバー様も、人を思える素晴らしい方だとおっしゃっていました。だから、お話をしてみたかったのです」
「いえ、そのようなことは」

 メリーナがそのように言うとは、信じられない気持ちだった。そして、自分よりもエンバーの方がいいのではないかとすら思った。

「エンバー様のことは、聞いております」
「え?」
「メリーナ様ではなく、妹から…メリーナ様を思ってらしたのですよね」

 ミューリアから聞いた時は驚いたが、メリーナは一度も答える気はなかったそうだ。ルージスは良かったと言っていたが、素晴らしい方だと言っているのはなぜなのだろうかと思っていた。

 だから、縁談よりも会ってみたかった。叔母の子であることから、どこかメリーナ様にも似た面差しであった。

「はい…」
「メリーナ様からは素晴らしい方だということ以外、聞いたことはありません」
「エンバーはずっと思っておりましたから、メリーナ夫人は線引きをされたのだと思います」
「リークス様のお母様の家具は、メリーナ様がデートライ公爵邸に大事にされており、これからは妹が大事にいたします」
「え…?」
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