29 / 34
縁
しおりを挟む 30歳前になっていたとはいえ、さすがに周りも早過ぎるとは思った。
皆、ファイナを大人しい女性だと思っていたが、変わったのか、切羽詰まっているのだろうと、しかも離縁をリークスのせいだと周りに言っていたが、ハーライド伯爵家は無関係を貫くことにした。
ファイナのことで女性不信気味だったが、9ヶ月が過ぎる頃、ようやくリークスは社交界に復帰した。
そして、ある令嬢との縁談が持ち込まれた。相手はメリーナの継子であるルージスの妻・ミューリアの姉でるローリアあった。
他国の令息と婚約をしていたが、婚約を心変わりを理由に一方的に解消されて、恥ずかしい存在だからと、学園も自宅学習に切り替えて、邸に引き籠っていた。
そのローリアを外に連れ出したのは、他でもないメリーナであった。
ルージスとミューリアと喫茶店に行かないかと誘い、最初は断っていたが、美味しいものがあるのに、公爵夫人の予算を持て余していたメリーナがご馳走してあげるのにと、一度だけと行くことにした。
その一度がローリアは、とても楽しかった。
出掛けるのが怖いと思っていたが、そんなことはなかった。メリーナと同じ侯爵家の令嬢であり、婚約解消も理不尽なものであったことは、きちんと周知されていた。
何か思う者がいても、侯爵令嬢に嫌味を言う相手など、正直限られている。
気にし過ぎていたのだと、1年以上が経って、ようやく気付けた。家族でもなく、年上ではあるが、年の近いメリーナと、妹と妹の婚約者という、絶妙な関係性が良かったのかもしれないと、侯爵夫妻もホッとしていた。
だからと言って、婚約や結婚を無理強いをすることはなかった。ミューリアも子どもが生まれたら、家庭教師になってくれたらいいと言っていた。
メリーナの従兄妹で、ファイナのことで社交界から遠ざかっていたリークスなら、会ってみてもいいとローリアは思った。
ローリアは23歳で、婚約解消も相手のせいで、引き籠ってしまっただけで、自分は子どもが出来ないかもしれないのに、リークスは良いのだろうかと思った。
「メリーナ様に、とても良くしていただいたのです…」
「メリーナ夫人に」
「はい…まだ目覚めると、メリーナ様がいないなんて嘘ではないかと…思ってしまいます」
「私も、最近は親しくしていたわけではありませんが、そう思います」
「メリーナ様はリークス様もエンバー様も、人を思える素晴らしい方だとおっしゃっていました。だから、お話をしてみたかったのです」
「いえ、そのようなことは」
メリーナがそのように言うとは、信じられない気持ちだった。そして、自分よりもエンバーの方がいいのではないかとすら思った。
「エンバー様のことは、聞いております」
「え?」
「メリーナ様ではなく、妹から…メリーナ様を思ってらしたのですよね」
ミューリアから聞いた時は驚いたが、メリーナは一度も答える気はなかったそうだ。ルージスは良かったと言っていたが、素晴らしい方だと言っているのはなぜなのだろうかと思っていた。
だから、縁談よりも会ってみたかった。叔母の子であることから、どこかメリーナ様にも似た面差しであった。
「はい…」
「メリーナ様からは素晴らしい方だということ以外、聞いたことはありません」
「エンバーはずっと思っておりましたから、メリーナ夫人は線引きをされたのだと思います」
「リークス様のお母様の家具は、メリーナ様がデートライ公爵邸に大事にされており、これからは妹が大事にいたします」
「え…?」
皆、ファイナを大人しい女性だと思っていたが、変わったのか、切羽詰まっているのだろうと、しかも離縁をリークスのせいだと周りに言っていたが、ハーライド伯爵家は無関係を貫くことにした。
ファイナのことで女性不信気味だったが、9ヶ月が過ぎる頃、ようやくリークスは社交界に復帰した。
そして、ある令嬢との縁談が持ち込まれた。相手はメリーナの継子であるルージスの妻・ミューリアの姉でるローリアあった。
他国の令息と婚約をしていたが、婚約を心変わりを理由に一方的に解消されて、恥ずかしい存在だからと、学園も自宅学習に切り替えて、邸に引き籠っていた。
そのローリアを外に連れ出したのは、他でもないメリーナであった。
ルージスとミューリアと喫茶店に行かないかと誘い、最初は断っていたが、美味しいものがあるのに、公爵夫人の予算を持て余していたメリーナがご馳走してあげるのにと、一度だけと行くことにした。
その一度がローリアは、とても楽しかった。
出掛けるのが怖いと思っていたが、そんなことはなかった。メリーナと同じ侯爵家の令嬢であり、婚約解消も理不尽なものであったことは、きちんと周知されていた。
何か思う者がいても、侯爵令嬢に嫌味を言う相手など、正直限られている。
気にし過ぎていたのだと、1年以上が経って、ようやく気付けた。家族でもなく、年上ではあるが、年の近いメリーナと、妹と妹の婚約者という、絶妙な関係性が良かったのかもしれないと、侯爵夫妻もホッとしていた。
だからと言って、婚約や結婚を無理強いをすることはなかった。ミューリアも子どもが生まれたら、家庭教師になってくれたらいいと言っていた。
メリーナの従兄妹で、ファイナのことで社交界から遠ざかっていたリークスなら、会ってみてもいいとローリアは思った。
ローリアは23歳で、婚約解消も相手のせいで、引き籠ってしまっただけで、自分は子どもが出来ないかもしれないのに、リークスは良いのだろうかと思った。
「メリーナ様に、とても良くしていただいたのです…」
「メリーナ夫人に」
「はい…まだ目覚めると、メリーナ様がいないなんて嘘ではないかと…思ってしまいます」
「私も、最近は親しくしていたわけではありませんが、そう思います」
「メリーナ様はリークス様もエンバー様も、人を思える素晴らしい方だとおっしゃっていました。だから、お話をしてみたかったのです」
「いえ、そのようなことは」
メリーナがそのように言うとは、信じられない気持ちだった。そして、自分よりもエンバーの方がいいのではないかとすら思った。
「エンバー様のことは、聞いております」
「え?」
「メリーナ様ではなく、妹から…メリーナ様を思ってらしたのですよね」
ミューリアから聞いた時は驚いたが、メリーナは一度も答える気はなかったそうだ。ルージスは良かったと言っていたが、素晴らしい方だと言っているのはなぜなのだろうかと思っていた。
だから、縁談よりも会ってみたかった。叔母の子であることから、どこかメリーナ様にも似た面差しであった。
「はい…」
「メリーナ様からは素晴らしい方だということ以外、聞いたことはありません」
「エンバーはずっと思っておりましたから、メリーナ夫人は線引きをされたのだと思います」
「リークス様のお母様の家具は、メリーナ様がデートライ公爵邸に大事にされており、これからは妹が大事にいたします」
「え…?」
1,558
お気に入りに追加
1,628
あなたにおすすめの小説

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱
鍋
恋愛
私は10歳の時にファンタジー小説のライバル令嬢だと気付いた。
婚約者の王太子殿下は男装の騎士に心を奪われ私との婚約を解消する予定だ。
前世も辛い失恋経験のある私は自信が無いから王太子から逃げたい。
だって、二人のラブラブなんて想像するのも辛いもの。
私は今世も勉強を頑張ります。だって知識は裏切らないから。
傷付くのが怖くて臆病なヒロインが、傷付く前にヒーローを避けようと頑張る物語です。
王道ありがちストーリー。ご都合主義満載。
ハッピーエンドは確実です。
※ヒーローはヒロインを振り向かせようと一生懸命なのですが、悲しいことに避けられてしまいます。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる