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「でも!」
「アリナ嬢、きちんと話は聞くから黙ってくれ」
「…はい」
「ラリオ王太子殿下と大臣、グルダイヤ侯爵も、ハッソ嬢も交えて話をしよう」
ダズベルトが大きな瞳の強い眼差しで、3人に声を掛け、ラリオと大臣、グルダイヤ侯爵は黙って頷いた。
「これにて終了とする!」
ようやく、何だったのか?という気持ちしか残らない解読披露は終わり、ダズベルトとオーバンと宰相は3人を連れて、応接室に向かった。
「お姉様、お疲れさまでした」
「ええ、分かり易かったかしら?」
「十分よ」
サリージュは、大勢の前で優雅に説明を行うヨルレアンにうっとりしていた。
「ヨルレアン嬢、本当にお疲れ様。サリージュ殿下も、お茶でも用意しよう」
「ありがとうございます」
「まあ!ありがとうございます」
ローレルがヨルレアンとサリージュに声を掛け、エルドールとメイラン、デュランズと学園長にも声を掛けて、別の応接室に向かった。
観覧席も誘導されて出て行っており、ファミラはずっと黙って見ていたが、終わって雑踏の中で呟いた。
「馬鹿なことを言ったものだわ」
オマリーはアリナが出来なかったことに、やはりあんな文字が解読が出来るはずがないという気持ちと、古代語学者として登場したヨルレアンに驚き、気持ちがぐちゃぐちゃだった。
そして、ヨルレアンの説明にただただ唖然としていたが、まさかアリナが王太子殿下かエルドール殿下と結婚するなどと思っていたことには、自分も同じ男爵令嬢であることを忘れて、男爵令嬢の癖にと苛立ちを覚えた。
「出来ないって、分かっていたの?」
オマリーも絶対に出来るとまでは思っていなかったが、ファミラは今日のことについて、頑張ってねとしか言わなかった。
「いいえ、でもあの子は驕っていたでしょう?」
「驕って?」
「自分は出来ると思い込んでいたのは確かだもの。先程の発言も否定されているのに、認めないなんて、驕りがないと出て来ないと思わない?」
「それはそうね」
ファミラは半年、アリナと一緒にいて、自信がないと言いながらも、自分は特別な才能があると思っていることに気付いていた。
「私が必死で勉強しているのを、自分はせず、私の方が試験は一応は良い点ではあったけど、試験勉強せずにだと言っていたでしょう?」
「こっそり勉強していたってこと?」
「いえ、本当にしていないの。試験勉強してなくてと言って、実はしていて、良い点を取る子と変わりないわ」
ファミラが吐き捨てる様に言う様に、オマリーは二人の関係は仲良しという感じではなかったが、同志のように思っているのではないかと考えていた。
だが、言葉から馬鹿にされていると思っているのではないかと、感じた。
「嫌いだったの?」
「どちらでもないわ、だってこの留学だけの関係だもの」
「え?」
「だって母国に戻れば、伯爵令嬢と男爵令嬢よ?立場も、周りの環境だって違うわ。社交場でもなかなか会うこともないと思うわ」
確かにそうではあるが、ファミラがそんな風に考えていることに、オマリーは少なからず胸が痛んだ。
「でも彼女は聖女…だったなら?」
「それでもよ、認められて、尊敬される上の立場になったら、それはそれで関係のない存在になるでしょうし」
「そうなのね」
どうなったとしても、ファミラはアリナとの関係性を始めから割り切っていたのだと、分かった。
「このまま帰ることになりそうだから、荷物の準備をすることにします。オマリーさん、勉強を教えてくれてありがとうございました」
「いえ、いいのよ」
オマリーはもし、アリナが無事に披露を終えて、勉強を教えて貰ったのだと紹介して貰って、エルドールと話が出来るかもしれないと考えていたが、その目論見は絶望的となった。
二人との時間は悪くはなかったが、結局、何も出来ないままであった。
「アリナ嬢、きちんと話は聞くから黙ってくれ」
「…はい」
「ラリオ王太子殿下と大臣、グルダイヤ侯爵も、ハッソ嬢も交えて話をしよう」
ダズベルトが大きな瞳の強い眼差しで、3人に声を掛け、ラリオと大臣、グルダイヤ侯爵は黙って頷いた。
「これにて終了とする!」
ようやく、何だったのか?という気持ちしか残らない解読披露は終わり、ダズベルトとオーバンと宰相は3人を連れて、応接室に向かった。
「お姉様、お疲れさまでした」
「ええ、分かり易かったかしら?」
「十分よ」
サリージュは、大勢の前で優雅に説明を行うヨルレアンにうっとりしていた。
「ヨルレアン嬢、本当にお疲れ様。サリージュ殿下も、お茶でも用意しよう」
「ありがとうございます」
「まあ!ありがとうございます」
ローレルがヨルレアンとサリージュに声を掛け、エルドールとメイラン、デュランズと学園長にも声を掛けて、別の応接室に向かった。
観覧席も誘導されて出て行っており、ファミラはずっと黙って見ていたが、終わって雑踏の中で呟いた。
「馬鹿なことを言ったものだわ」
オマリーはアリナが出来なかったことに、やはりあんな文字が解読が出来るはずがないという気持ちと、古代語学者として登場したヨルレアンに驚き、気持ちがぐちゃぐちゃだった。
そして、ヨルレアンの説明にただただ唖然としていたが、まさかアリナが王太子殿下かエルドール殿下と結婚するなどと思っていたことには、自分も同じ男爵令嬢であることを忘れて、男爵令嬢の癖にと苛立ちを覚えた。
「出来ないって、分かっていたの?」
オマリーも絶対に出来るとまでは思っていなかったが、ファミラは今日のことについて、頑張ってねとしか言わなかった。
「いいえ、でもあの子は驕っていたでしょう?」
「驕って?」
「自分は出来ると思い込んでいたのは確かだもの。先程の発言も否定されているのに、認めないなんて、驕りがないと出て来ないと思わない?」
「それはそうね」
ファミラは半年、アリナと一緒にいて、自信がないと言いながらも、自分は特別な才能があると思っていることに気付いていた。
「私が必死で勉強しているのを、自分はせず、私の方が試験は一応は良い点ではあったけど、試験勉強せずにだと言っていたでしょう?」
「こっそり勉強していたってこと?」
「いえ、本当にしていないの。試験勉強してなくてと言って、実はしていて、良い点を取る子と変わりないわ」
ファミラが吐き捨てる様に言う様に、オマリーは二人の関係は仲良しという感じではなかったが、同志のように思っているのではないかと考えていた。
だが、言葉から馬鹿にされていると思っているのではないかと、感じた。
「嫌いだったの?」
「どちらでもないわ、だってこの留学だけの関係だもの」
「え?」
「だって母国に戻れば、伯爵令嬢と男爵令嬢よ?立場も、周りの環境だって違うわ。社交場でもなかなか会うこともないと思うわ」
確かにそうではあるが、ファミラがそんな風に考えていることに、オマリーは少なからず胸が痛んだ。
「でも彼女は聖女…だったなら?」
「それでもよ、認められて、尊敬される上の立場になったら、それはそれで関係のない存在になるでしょうし」
「そうなのね」
どうなったとしても、ファミラはアリナとの関係性を始めから割り切っていたのだと、分かった。
「このまま帰ることになりそうだから、荷物の準備をすることにします。オマリーさん、勉強を教えてくれてありがとうございました」
「いえ、いいのよ」
オマリーはもし、アリナが無事に披露を終えて、勉強を教えて貰ったのだと紹介して貰って、エルドールと話が出来るかもしれないと考えていたが、その目論見は絶望的となった。
二人との時間は悪くはなかったが、結局、何も出来ないままであった。
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