118 / 131
聖女の絶望1
しおりを挟む
アリナはファミラや、他の人にも一生懸命、誤解なのだと話をしようと思ったが、もういいと言われてしまい、事情を深く知っている者には相手にもされなかった。
アリナは期待されなくなったことで、学ぼうとすることもなく、居心地の悪い学園生活を送っていた。邸に帰りたくても、男爵領までの旅費がなく、学園の費用だけは支払われているという状況であった。
手紙に帰りたいからお金を送って欲しいと書いても、返事もなかった。
半年後、ハッソ男爵家に火が放たれ、使用人はどうにか逃げ出させたが、夫妻とミーナはそのまま邸に残って、亡くなった―――。
その知らせを聞いたイスク国王陛下は、逃げなかったのだろうと思った。
「警護を付けるべきだったか…」
「いえ、いずれ起きたことでしょう」
王妃であるメリーが、答えた。
「親の責任だと思ったのだろうな」
「ええ、我々も馬鹿な真似をしたのです」
「ああ…」
犯人は失業のせいで、病気の妻の薬が買えなくなり、妻を亡くした平民の男であった。男は企業に勤めていた自国の役員を殺そうとしたが、事情を知っていた役員は殺されたくないために、全てを話した。
王太子妃や王子妃は幽閉されており、入り込むのは難しいために、アリナ・ハッソもいると思い、ハッソ男爵家に火を放った。
男はすぐに捕まったが、動機が失業のせいで、薬が買えず妻が亡くなり、婚約に横やりを入れたアリナ・ハッソ、王太子妃、王子妃を狙ったことを自供した。
アリナにも騎士団から両親の妹の死、そして動機が伝えられることになった。
「どうして…私のせいなの…でも、私は求められてしたことで」
「そうではありません。あなたが他国の王族の婚約に横やりを入れたからです」
「…え」
「婚約というのは貴族でも契約です、王族となればもっと重いものになります」
「申し込んだだけでも?」
「はい、本当に分かっていなかったのですね?」
「だって、婚約を申し込むのは自由ではありませんか…」
アリナはそう思っていた。だが、相手が王家だと父は怯んで、申し込まないのではないかと考えていた。
「格というものがあります。王家ですから、知識や教養、マナー、言語、そしてお金も必要でしょう。そして、上に立つ責任もあります。それをあなたは反故にしろと言ったのです」
「私は役に立ちたくて…」
凄い凄いと、才の聖女、聖女と呼ばれることが本当に嬉しかった。もっと役に立ちたいと思った。
「ならば、この国で王宮に勤めるなどすれば良かったではありませんか」
「それは…」
両親にも教師にも勧められたが、あまり魅力的には思えず、もっと相応しい場所があるのではないかと思った。それで王太子妃様と王子妃様に言われて、これだと思ったのだ。
「王家に嫁いで、ちやほやして貰いたかったのですか?能力もなかったのに?」
「能力はあります」
「なかったと証明されているではありませんか」
「あの時は、出来なかっただけで」
「王家の方が見ている前で、あの時はなんて通用しませんよ。マナーだってそうでしょう?今日は出来なくて、なんて通用しないのと同じです。あなたはコーランド王国、ルエルフ王国を馬鹿にしたんですよ」
「そんなことはしていません」
たまたま披露は出来なかっただけで、どうして受け入れてくれないのだろうかとは思ったが、馬鹿になんてしていない。
「何を言っても否定されるのでしょう。殺したのは犯人ですが、ご両親と妹君は使用人を逃がして、自分たちは邸に留まって、亡くなったそうです」
「………えっ」
「死を受け入れたのでしょう。犯人はアリナ・ハッソのせいで、妻は死んだと怒鳴っていたそうです」
逃がされた使用人が、そう証言していた。
「そ、んな…」
「あなたのせいで、親戚や領民からも中傷も酷かったそうです。心労もおありになったでしょう」
「う、そ…」
「嘘ではありません。貴方もきちんと向き合ってください」
アリナは期待されなくなったことで、学ぼうとすることもなく、居心地の悪い学園生活を送っていた。邸に帰りたくても、男爵領までの旅費がなく、学園の費用だけは支払われているという状況であった。
手紙に帰りたいからお金を送って欲しいと書いても、返事もなかった。
半年後、ハッソ男爵家に火が放たれ、使用人はどうにか逃げ出させたが、夫妻とミーナはそのまま邸に残って、亡くなった―――。
その知らせを聞いたイスク国王陛下は、逃げなかったのだろうと思った。
「警護を付けるべきだったか…」
「いえ、いずれ起きたことでしょう」
王妃であるメリーが、答えた。
「親の責任だと思ったのだろうな」
「ええ、我々も馬鹿な真似をしたのです」
「ああ…」
犯人は失業のせいで、病気の妻の薬が買えなくなり、妻を亡くした平民の男であった。男は企業に勤めていた自国の役員を殺そうとしたが、事情を知っていた役員は殺されたくないために、全てを話した。
王太子妃や王子妃は幽閉されており、入り込むのは難しいために、アリナ・ハッソもいると思い、ハッソ男爵家に火を放った。
男はすぐに捕まったが、動機が失業のせいで、薬が買えず妻が亡くなり、婚約に横やりを入れたアリナ・ハッソ、王太子妃、王子妃を狙ったことを自供した。
アリナにも騎士団から両親の妹の死、そして動機が伝えられることになった。
「どうして…私のせいなの…でも、私は求められてしたことで」
「そうではありません。あなたが他国の王族の婚約に横やりを入れたからです」
「…え」
「婚約というのは貴族でも契約です、王族となればもっと重いものになります」
「申し込んだだけでも?」
「はい、本当に分かっていなかったのですね?」
「だって、婚約を申し込むのは自由ではありませんか…」
アリナはそう思っていた。だが、相手が王家だと父は怯んで、申し込まないのではないかと考えていた。
「格というものがあります。王家ですから、知識や教養、マナー、言語、そしてお金も必要でしょう。そして、上に立つ責任もあります。それをあなたは反故にしろと言ったのです」
「私は役に立ちたくて…」
凄い凄いと、才の聖女、聖女と呼ばれることが本当に嬉しかった。もっと役に立ちたいと思った。
「ならば、この国で王宮に勤めるなどすれば良かったではありませんか」
「それは…」
両親にも教師にも勧められたが、あまり魅力的には思えず、もっと相応しい場所があるのではないかと思った。それで王太子妃様と王子妃様に言われて、これだと思ったのだ。
「王家に嫁いで、ちやほやして貰いたかったのですか?能力もなかったのに?」
「能力はあります」
「なかったと証明されているではありませんか」
「あの時は、出来なかっただけで」
「王家の方が見ている前で、あの時はなんて通用しませんよ。マナーだってそうでしょう?今日は出来なくて、なんて通用しないのと同じです。あなたはコーランド王国、ルエルフ王国を馬鹿にしたんですよ」
「そんなことはしていません」
たまたま披露は出来なかっただけで、どうして受け入れてくれないのだろうかとは思ったが、馬鹿になんてしていない。
「何を言っても否定されるのでしょう。殺したのは犯人ですが、ご両親と妹君は使用人を逃がして、自分たちは邸に留まって、亡くなったそうです」
「………えっ」
「死を受け入れたのでしょう。犯人はアリナ・ハッソのせいで、妻は死んだと怒鳴っていたそうです」
逃がされた使用人が、そう証言していた。
「そ、んな…」
「あなたのせいで、親戚や領民からも中傷も酷かったそうです。心労もおありになったでしょう」
「う、そ…」
「嘘ではありません。貴方もきちんと向き合ってください」
4,232
あなたにおすすめの小説
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
何も決めなかった王国は、静かに席を失う』
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。
だが――
彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。
ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。
婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。
制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく――
けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。
一方、帝国は違った。
完璧ではなくとも、期限内に返事をする。
責任を分け、判断を止めない。
その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。
王国は滅びない。
だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。
――そして迎える、最後の選択。
これは、
剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。
何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる