117 / 131
絶望したハッソ男爵夫妻
しおりを挟む
「私たちは叶うなら、ここは引き上げて、領地で暮らす」
「私は嫌よ、でも婚約したらここにいてもしょうがないのか…」
男爵はまるで可能性があるような口振りに、段々と腹が立って来た。
「お前は唆されたとは思っていないのか?」
「お二人は叶うわけもないと思っていたのでしょう?でも分からなくなったじゃない。そうでしょう?」
「そうじゃない、受け入れるわけがないだろう」
「でも、折角、能力があるのに、可哀想だと思ってくれたはずよ」
「そんなものはない」
「あるわ!」
「許可が下りたら、アリナは寮にでも入りなさい。後のことは私たちは関与しない」
本当なら首を括りたい、邸に火を放ちたいくらいであったが、今は出来ないとどうにか堪えた。
アリナには5つ年下の妹・ミーナがおり、どちらかに婿を取ってと思っていたが、そんなことはしないほうがいいだろう。
ミーナだけはどうにか助けたいが、養子に迎えて貰うのは難しいだろう。
「婚約するには両親の何か、必要でしょう?困るわ」
「そんなことにはならないから、考えなくていい」
「もう夢がないのね!」
アリナは何も理解しないまま、勿論、コーランド王国には断られることになった。
「当たり前だが、断られた」
「ええっ、そんな、見る目がないのね」
いくら言っても理解していないことは、イスクにも伝わり、このまま王都に男爵家があるのは危険だろうということもあり、領地に戻ることは許された。
アリナは寮に入って、学園に通うことになったが、これまでちやほやしてくれていた人たちは、誰もアリナに近寄ろうともしなかった。
妃の幽閉も、アリナが婚約を申し込んだことも、一部しか知らなかったが、解読に関して披露するなどとしたために、翻訳も解読も出来なかったことは、コーランド王国では新聞にも載り、ほとんどの者が知ることになっていた。
さらにルスデン王国にあった、ルエルフ王国、コーランド王国の者が資本としている企業が、次々に撤退した。多くはなかったが、大企業であったために、失業者で溢れることになった。
王家も危惧していたために、雇用先も率先して動いたが、それでも失業者は多く、治安も悪くなっていった。
アリナは学園でファミラを見付けて、声を掛けた。
「ファミラ様」
「あなた…」
「皆が変わってしまって、私、何かしたのでしょうか?」
「あなた、本当に分かっていないの?分かっていないのなら、どうかしてるわよ」
「え?どうして?」
アリナはファミラにそのような言い方をされたことがなく、驚いた。
アリナにとって、ファミラは真面目が取り柄の何でも教えてくれるいい人だと思っており、試験の結果を見た時はあんなに勉強しているのに、出来ないのかと思ったが、口には出さなかった。
それからはちょっと馬鹿にするような気持ちにはなっていたが、ファミラは親切だから離れたくはなかったので、Aクラスに一緒に移ることにした。
きっと感謝しているだろうと思っていたが、ファミラは変わらず、帰国する時は会うこともなかった。それからもクラスが違うので、会わなかったが、ようやく会えたと嬉しくなった。
だから、親切なファミラに聞いてみようと思ったのである。
「披露の時のことを覚えていないの?」
「覚えているけど、ファミラ様だって嘘ではないことは知っているでしょう?」
「嘘ではないけど、本当でもなかったじゃない」
ファミラはアリナが記憶力が良いことは、事実だろうと思っていた。だが、ヨルレアン第一王女の説明に、納得し、それ以上に感心したのである。
18歳であの知識と、古代語学者となっているお姿に、これこそが才の聖女ではないかと思った。
そう思うと、アリナがハリボテのような、薄っぺらく感じた。
「それは…でも、これから学べば」
「そんなことは知らないわ。もう話し掛けて来ないで頂戴」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時にも1話、投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
「私は嫌よ、でも婚約したらここにいてもしょうがないのか…」
男爵はまるで可能性があるような口振りに、段々と腹が立って来た。
「お前は唆されたとは思っていないのか?」
「お二人は叶うわけもないと思っていたのでしょう?でも分からなくなったじゃない。そうでしょう?」
「そうじゃない、受け入れるわけがないだろう」
「でも、折角、能力があるのに、可哀想だと思ってくれたはずよ」
「そんなものはない」
「あるわ!」
「許可が下りたら、アリナは寮にでも入りなさい。後のことは私たちは関与しない」
本当なら首を括りたい、邸に火を放ちたいくらいであったが、今は出来ないとどうにか堪えた。
アリナには5つ年下の妹・ミーナがおり、どちらかに婿を取ってと思っていたが、そんなことはしないほうがいいだろう。
ミーナだけはどうにか助けたいが、養子に迎えて貰うのは難しいだろう。
「婚約するには両親の何か、必要でしょう?困るわ」
「そんなことにはならないから、考えなくていい」
「もう夢がないのね!」
アリナは何も理解しないまま、勿論、コーランド王国には断られることになった。
「当たり前だが、断られた」
「ええっ、そんな、見る目がないのね」
いくら言っても理解していないことは、イスクにも伝わり、このまま王都に男爵家があるのは危険だろうということもあり、領地に戻ることは許された。
アリナは寮に入って、学園に通うことになったが、これまでちやほやしてくれていた人たちは、誰もアリナに近寄ろうともしなかった。
妃の幽閉も、アリナが婚約を申し込んだことも、一部しか知らなかったが、解読に関して披露するなどとしたために、翻訳も解読も出来なかったことは、コーランド王国では新聞にも載り、ほとんどの者が知ることになっていた。
さらにルスデン王国にあった、ルエルフ王国、コーランド王国の者が資本としている企業が、次々に撤退した。多くはなかったが、大企業であったために、失業者で溢れることになった。
王家も危惧していたために、雇用先も率先して動いたが、それでも失業者は多く、治安も悪くなっていった。
アリナは学園でファミラを見付けて、声を掛けた。
「ファミラ様」
「あなた…」
「皆が変わってしまって、私、何かしたのでしょうか?」
「あなた、本当に分かっていないの?分かっていないのなら、どうかしてるわよ」
「え?どうして?」
アリナはファミラにそのような言い方をされたことがなく、驚いた。
アリナにとって、ファミラは真面目が取り柄の何でも教えてくれるいい人だと思っており、試験の結果を見た時はあんなに勉強しているのに、出来ないのかと思ったが、口には出さなかった。
それからはちょっと馬鹿にするような気持ちにはなっていたが、ファミラは親切だから離れたくはなかったので、Aクラスに一緒に移ることにした。
きっと感謝しているだろうと思っていたが、ファミラは変わらず、帰国する時は会うこともなかった。それからもクラスが違うので、会わなかったが、ようやく会えたと嬉しくなった。
だから、親切なファミラに聞いてみようと思ったのである。
「披露の時のことを覚えていないの?」
「覚えているけど、ファミラ様だって嘘ではないことは知っているでしょう?」
「嘘ではないけど、本当でもなかったじゃない」
ファミラはアリナが記憶力が良いことは、事実だろうと思っていた。だが、ヨルレアン第一王女の説明に、納得し、それ以上に感心したのである。
18歳であの知識と、古代語学者となっているお姿に、これこそが才の聖女ではないかと思った。
そう思うと、アリナがハリボテのような、薄っぺらく感じた。
「それは…でも、これから学べば」
「そんなことは知らないわ。もう話し掛けて来ないで頂戴」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時にも1話、投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
3,878
あなたにおすすめの小説
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路
今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。
すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。
ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。
それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。
そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ……
※短い……はず
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる