26 / 56
第一部
第26話
しおりを挟む
ドラッグストアで薬や病人食を買い込んだ。本当は瀬尾君を家まで送って、自宅で療養させるのが一番だとは思うが、ここからでは1時間以上かかってしまうし、一人暮らしの人間を放り出すことはできない。悩んだ末に結局三目君とともに、我が家に迎え入れることにした。
家の前まで着いたのでお金を払おうとしたが、三目君が断固として財布を出させてくれない。彼と押し問答している間に、なんと瀬尾君が勝手に料金を払ってしまった。そして、そのまま一人ですたすたとタクシーを降りてしまう。どう見ても元気そうなのでやっぱり仮病だったのかと慌てて追いかける。
「せ、瀬尾君!?」
しかし、それは思い違いだった。外に出た途端、瀬尾君はその場にしゃがみこんでしまったのだ。慌てて駆け寄ると「なんかフラフラします」と言って自分にもたれかかってくる。彼の額に手を当ててみると、先程よりも熱が上がっている。これは一刻も早くベッドに寝かせた方がいいだろう。
「三目君、俺の荷物頼む。」
「は、はい!」
手に持っていた荷物を三目君に手渡して、瀬尾君へと向き直る。「少し我慢して」と伝えた後、彼の身体の下に潜り込み、力をいれて立ち上がった。
「幸尚さん!?」
「もう少しだから我慢して。」
おんぶされたことが恥ずかしいのか、瀬尾君が身体をよじらせた。「落ちるから暴れない!」と叱りつけるとモゴモゴと小さな声で文句を言いながらも大人しくなった。
自分より体格の良い人間を運ぶのは一苦労だが、三目君よりも自分の方が力がある。体勢を崩さないようにゆっくりと歩き出した。
「山口さん、男前…。」
よたよたと歩く自分の後ろでは、三目君がそんな情けない自分を見て頬を赤く染めていた。
「はい、ここが俺の部屋です。ようこそー。」
本当は2人を部屋に入れる前に少しでも掃除をしたかったのだが、瀬尾君の体調が悪い以上仕方がない。すぐに中へと招き入れた。
「うわぁ、ここが山口さんのおうちかぁ。」
三目君がキョロキョロと部屋を見渡している。正直あまり見ないでほしい。インテリアのセンスなどは皆無なので、特にこだわりはない。2LDKの部屋で、玄関には小さめのシューズボックスがあり、リビングへと続く廊下がある。途中を右に入るとトイレ、左に入るとバスルームだ。リビングは少し広め。背の低いテーブルとソファーを置いている。リビングからは洋室と和室どちらにも行けるような造りで、洋室は書斎、和室はベッドルームにしている。
三目君に適当に荷物を置くように頼んだ後、ソファーに瀬尾君を寝かせた。
「大丈夫、瀬尾君?起きられる?」
「だ、いじょうぶ…です。」
目をつむっていた瀬尾君がゆっくりと起き上がろうとするが、やはりよろめいてソファーに倒れこんでしまう。体温計を持ってきて計ってみると、38℃まで熱が上がっていた。これは大変だと、三目君と協力して和室まで瀬尾君を運ぶ。自分のベッドは床とほぼ同じ高さなので、彼の身体を持ち上げる必要がないのは良かった。寝相が悪いために大きめのベッドを使っているので、瀬尾君が寝てもあと1人は寝られるぐらいの余裕はある。
瀬尾君に食欲はあるのか聞いてみると、お腹が空きましたという返事が返ってきたので、キッチンに戻りお粥を作ることにした。
「三目君は先にシャワー浴びてきて。さっぱりしたいでしょ?」
「いや、僕は後でいいですよ。山口さんの方がお先に!」
「俺はお粥を作っちゃうから。三目君のあとに入るよ。」
説得すると、やっと頷いてくれた。タオルや服は勝手に使っていいことを伝えて早速調理にとりかかる。冷蔵庫を開けてみると、卵がたくさん残っている。正直瀬尾君より美味しく作れるとは思っていないが、何か腹にいれないと薬も飲めない。
「よーし、ちゃっちゃとやるかぁ。」
鍋を取り出して気合を入れたのだった。
家の前まで着いたのでお金を払おうとしたが、三目君が断固として財布を出させてくれない。彼と押し問答している間に、なんと瀬尾君が勝手に料金を払ってしまった。そして、そのまま一人ですたすたとタクシーを降りてしまう。どう見ても元気そうなのでやっぱり仮病だったのかと慌てて追いかける。
「せ、瀬尾君!?」
しかし、それは思い違いだった。外に出た途端、瀬尾君はその場にしゃがみこんでしまったのだ。慌てて駆け寄ると「なんかフラフラします」と言って自分にもたれかかってくる。彼の額に手を当ててみると、先程よりも熱が上がっている。これは一刻も早くベッドに寝かせた方がいいだろう。
「三目君、俺の荷物頼む。」
「は、はい!」
手に持っていた荷物を三目君に手渡して、瀬尾君へと向き直る。「少し我慢して」と伝えた後、彼の身体の下に潜り込み、力をいれて立ち上がった。
「幸尚さん!?」
「もう少しだから我慢して。」
おんぶされたことが恥ずかしいのか、瀬尾君が身体をよじらせた。「落ちるから暴れない!」と叱りつけるとモゴモゴと小さな声で文句を言いながらも大人しくなった。
自分より体格の良い人間を運ぶのは一苦労だが、三目君よりも自分の方が力がある。体勢を崩さないようにゆっくりと歩き出した。
「山口さん、男前…。」
よたよたと歩く自分の後ろでは、三目君がそんな情けない自分を見て頬を赤く染めていた。
「はい、ここが俺の部屋です。ようこそー。」
本当は2人を部屋に入れる前に少しでも掃除をしたかったのだが、瀬尾君の体調が悪い以上仕方がない。すぐに中へと招き入れた。
「うわぁ、ここが山口さんのおうちかぁ。」
三目君がキョロキョロと部屋を見渡している。正直あまり見ないでほしい。インテリアのセンスなどは皆無なので、特にこだわりはない。2LDKの部屋で、玄関には小さめのシューズボックスがあり、リビングへと続く廊下がある。途中を右に入るとトイレ、左に入るとバスルームだ。リビングは少し広め。背の低いテーブルとソファーを置いている。リビングからは洋室と和室どちらにも行けるような造りで、洋室は書斎、和室はベッドルームにしている。
三目君に適当に荷物を置くように頼んだ後、ソファーに瀬尾君を寝かせた。
「大丈夫、瀬尾君?起きられる?」
「だ、いじょうぶ…です。」
目をつむっていた瀬尾君がゆっくりと起き上がろうとするが、やはりよろめいてソファーに倒れこんでしまう。体温計を持ってきて計ってみると、38℃まで熱が上がっていた。これは大変だと、三目君と協力して和室まで瀬尾君を運ぶ。自分のベッドは床とほぼ同じ高さなので、彼の身体を持ち上げる必要がないのは良かった。寝相が悪いために大きめのベッドを使っているので、瀬尾君が寝てもあと1人は寝られるぐらいの余裕はある。
瀬尾君に食欲はあるのか聞いてみると、お腹が空きましたという返事が返ってきたので、キッチンに戻りお粥を作ることにした。
「三目君は先にシャワー浴びてきて。さっぱりしたいでしょ?」
「いや、僕は後でいいですよ。山口さんの方がお先に!」
「俺はお粥を作っちゃうから。三目君のあとに入るよ。」
説得すると、やっと頷いてくれた。タオルや服は勝手に使っていいことを伝えて早速調理にとりかかる。冷蔵庫を開けてみると、卵がたくさん残っている。正直瀬尾君より美味しく作れるとは思っていないが、何か腹にいれないと薬も飲めない。
「よーし、ちゃっちゃとやるかぁ。」
鍋を取り出して気合を入れたのだった。
25
あなたにおすすめの小説
孤独なライオンは運命を見つける
朝顔
BL
9/1番外編追加しました。
自分はアルファであると信じて生きてきたのに、発情したことがキッカケで、オメガだったと発覚してしまった。
アルファだと思っていた時も、孤独で苦しかったのに、オメガになったことで俺の人生はより厳しいものになった。
そんな時、俺は運命と呼べる相手と出会うことになる。
※※※※※
高校生×高校生で、オメガバースの設定をお借りしています。
設定はよくあるものだと思いますが、おかしなところがあったら、すみません。
オメガバースについて詳しい説明などは省略しています。
シリアスあり、ラブコメもあり、淡くて青い恋愛がメインのお話です。
※重複投稿
全十話完結済み
【完結】変態αのフェロモン観測記録
加賀ユカリ
BL
欠陥Ωが使用済みマスクを落としたら、変態αにフェロモン値を実況されるようになった話
大学生の天橋瑞樹(あまはし みずき)は、帰り道でうっかり使用済みマスクを落としてしまう。拾ったのは、モデルのようなスタイルと整った顔立ちを持つ青年──神代慧(かみしろ けい)。だが、彼はただのαではなかった。
「このマスクは僕の宝物です」そう言って笑う慧は、瑞樹のマスクを返さないどころか、初対面で「君は僕の運命の番だ」と宣言してくる。
だが瑞樹は、自分が“欠陥Ω”──フェロモン値が極端に低い存在であることを知っていた。
そして、計測器と共に瑞樹のフェロモン数値を実況する“変態α”との、奇妙で騒がしい日々が始まった。
そんなある日。
瑞樹に人生で初めてのヒートが訪れる──
攻め:神代慧(かみしろ けい)。α。瑞樹のマスクを返さないヤバい男。
受け:天橋瑞樹(あまはし みずき)。欠陥Ω。
・オメガバースの独自設定があります
・性描写のある話には※を付けています
・最終話まで執筆済みです。(全35話)
・19時更新
・ムーンライトノベルズにも掲載しています
※過去作『番になれなくても』の主人公(天橋和樹)の兄の話です。本作品は『番になれなくても』の本編より前の時間軸になります。それぞれの話は独立しているので、読んでいなくても大丈夫です
【完結】番になれなくても
https://www.alphapolis.co.jp/novel/166551580/588945232
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ちゃんちゃら
三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…?
夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。
ビター色の強いオメガバースラブロマンス。
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
俺は完璧な君の唯一の欠点
一寸光陰
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。
そんな彼にも、唯一の欠点がある。
それは、平凡な俺に依存している事。
平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。
手に入らないモノと満たされる愛
小池 月
BL
櫻井斗真は喘息持ちの高校二年生。健康でスポーツが得意な弟と両親の四人家族。不健康な斗真は徐々に家族の中に自分の居場所がなくなっていく。
ある日、登校中に喘息発作で倒れる斗真。そんな斗真を高校三年の小掠隆介が助ける。隆介は小児科医院の息子。喘息発作の治療が必要な斗真は隆介の家で静養することとなる。斗真は隆介の優しさを素直に受け入れられず、自分と比べて惨めな思いに陥っていく。そんな斗真の気持ちを全て受け止めて寄り添う隆介と、徐々に距離を縮める斗真。
斗真に安心できる場所が出来たかと思われた頃、斗真が襲われる事件が起きて……。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる