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第一部
第27話
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「うーん、こんなものかな?」
瀬尾君のために作ったのは卵粥。料理は得意ではないし、ほとんど作らないから不安だったが、インターネットで調べながらなんとか食べられるものができた。味見をしてみたが、まずいことはないと思う。
「あ!おいしそう!」
「うわっ!」
急に後ろから声がしたので飛び上がってしまう。振り向こうとしたが、背中にぴったりと張り付かれてしまってできなかった。
「山口さんってあんまり料理をするイメージなかったですけどできるんですね。」
「ちょっと、三目君!まだ濡れてる!」
引っ付いてきたのはお風呂上がりの三目君だった。背中が濡れてくる感覚がするのでまだしっかり拭ききれてないのだろう。まとわりつこうとする彼の腕を振り払って後ろを向く。
「三目君、ちゃんと!っ…!」
「はいはい、ふざけました。ごめんなさい。」
ヘラヘラと笑う三目君に思わず見とれてしまった。上半身は裸で、下はボクサーパンツしか履いていない。そのせいで身体のラインがしっかり見えるのだ。
瀬尾君よりも体格は劣るものの、全身にしなやかな筋肉がついている。いつもきっちりセットされた髪は濡れていて、彼の幼い顔立ちをさらに強調している。キラキラと子供のように輝く瞳と、引き締まった男の身体のギャップに思わずときめいてしまった。照れてしまい何も言えずに黙っていると、怒っていると勘違いしたのか、三目君が不安そうに顔を覗き込んできた。
「山口さん?ごめんなさい、濡れるの嫌でしたよね?もうしないので、そんなに怒らないで……っあ。」
「み、見るな!」
顔を赤くしていた自分に気付いたのか、三目君の表情がパアッと明るくなった。そして、一旦離れたのにまた身体を寄せてくる。
「山口さん、僕の勘違いじゃないですよね?僕のこと見て赤くなってくれたんですよね?」
「はっきりと口に出すな!」
図星をつかれてさらに顔が赤くなる。もうやめてくれと後ろに一歩下がるが、すると三目君は一歩距離を詰めてくる。
「嫌です。口に出します。山口さんに自覚してほしいから。僕のこと、ただの部下としか見てませんでしたよね?最初はそれで良かったんですよ。でもどんどんあなたのことが好きになって。もう信頼できる部下って立場じゃ満足できないんです。」
「うわぁっ!えっ!ちょ、嘘でしょ!」
三目君よりも自分の方が身長が高い。そのはずなのに、なぜ自分は今、彼にお姫様抱っこされているのか。しかも彼はフラフラすることもなく、しっかり自分の身体を支えている。
「嘘じゃないですよ。あなたを抱えているのが誰なのかちゃんと見てください。…Ωだってちゃんと男なんだってこと、その目に焼き付けてください。」
「ひゃあ!」
三目君が首筋に唇を寄せてきたかと思うと、チュッと音をたてて吸い上げる。女の子のような悲鳴をあげてしまったことが恥ずかしくって思わず縮こまる。
「瀬尾のこと、抱えあげてた山口さんはすごくかっこよかったけど、可愛らしいあなたも見てみたいんです、幸尚さん。」
彼に初めて名前を呼ばれたことに気付き、顔をあげる。三目君は蕩けるような瞳で自分を見つめている。
(瀬尾君と同じ目…。)
思い出すのは、瀬尾君の家で過ごした夜。終始自分に優しげな視線を向けていた彼がどうしてあんなひどいことをしたのか。彼は本当に自分のことが好きなのか。
そんなことを頭の中でグルグル考えていると、なぜだか三目君が大きなため息をついた。
「まだ瀬尾には勝てないみたいですね。今、あいつのこと考えてたでしょ?」
「へっ?い、いや!!」
「あなた、分かりやすすぎるんですよ。」
呆れ顔をした三目君がソファーの上におろしてくれる。
「あいつが治ったら僕は容赦しません。問答無用で奪いにいきますから。」
自分の目の前に跪いたお姫様のような可愛らしさを持つ三目君は、自分の手を取り、そこに王子様のようにキスをした。
瀬尾君のために作ったのは卵粥。料理は得意ではないし、ほとんど作らないから不安だったが、インターネットで調べながらなんとか食べられるものができた。味見をしてみたが、まずいことはないと思う。
「あ!おいしそう!」
「うわっ!」
急に後ろから声がしたので飛び上がってしまう。振り向こうとしたが、背中にぴったりと張り付かれてしまってできなかった。
「山口さんってあんまり料理をするイメージなかったですけどできるんですね。」
「ちょっと、三目君!まだ濡れてる!」
引っ付いてきたのはお風呂上がりの三目君だった。背中が濡れてくる感覚がするのでまだしっかり拭ききれてないのだろう。まとわりつこうとする彼の腕を振り払って後ろを向く。
「三目君、ちゃんと!っ…!」
「はいはい、ふざけました。ごめんなさい。」
ヘラヘラと笑う三目君に思わず見とれてしまった。上半身は裸で、下はボクサーパンツしか履いていない。そのせいで身体のラインがしっかり見えるのだ。
瀬尾君よりも体格は劣るものの、全身にしなやかな筋肉がついている。いつもきっちりセットされた髪は濡れていて、彼の幼い顔立ちをさらに強調している。キラキラと子供のように輝く瞳と、引き締まった男の身体のギャップに思わずときめいてしまった。照れてしまい何も言えずに黙っていると、怒っていると勘違いしたのか、三目君が不安そうに顔を覗き込んできた。
「山口さん?ごめんなさい、濡れるの嫌でしたよね?もうしないので、そんなに怒らないで……っあ。」
「み、見るな!」
顔を赤くしていた自分に気付いたのか、三目君の表情がパアッと明るくなった。そして、一旦離れたのにまた身体を寄せてくる。
「山口さん、僕の勘違いじゃないですよね?僕のこと見て赤くなってくれたんですよね?」
「はっきりと口に出すな!」
図星をつかれてさらに顔が赤くなる。もうやめてくれと後ろに一歩下がるが、すると三目君は一歩距離を詰めてくる。
「嫌です。口に出します。山口さんに自覚してほしいから。僕のこと、ただの部下としか見てませんでしたよね?最初はそれで良かったんですよ。でもどんどんあなたのことが好きになって。もう信頼できる部下って立場じゃ満足できないんです。」
「うわぁっ!えっ!ちょ、嘘でしょ!」
三目君よりも自分の方が身長が高い。そのはずなのに、なぜ自分は今、彼にお姫様抱っこされているのか。しかも彼はフラフラすることもなく、しっかり自分の身体を支えている。
「嘘じゃないですよ。あなたを抱えているのが誰なのかちゃんと見てください。…Ωだってちゃんと男なんだってこと、その目に焼き付けてください。」
「ひゃあ!」
三目君が首筋に唇を寄せてきたかと思うと、チュッと音をたてて吸い上げる。女の子のような悲鳴をあげてしまったことが恥ずかしくって思わず縮こまる。
「瀬尾のこと、抱えあげてた山口さんはすごくかっこよかったけど、可愛らしいあなたも見てみたいんです、幸尚さん。」
彼に初めて名前を呼ばれたことに気付き、顔をあげる。三目君は蕩けるような瞳で自分を見つめている。
(瀬尾君と同じ目…。)
思い出すのは、瀬尾君の家で過ごした夜。終始自分に優しげな視線を向けていた彼がどうしてあんなひどいことをしたのか。彼は本当に自分のことが好きなのか。
そんなことを頭の中でグルグル考えていると、なぜだか三目君が大きなため息をついた。
「まだ瀬尾には勝てないみたいですね。今、あいつのこと考えてたでしょ?」
「へっ?い、いや!!」
「あなた、分かりやすすぎるんですよ。」
呆れ顔をした三目君がソファーの上におろしてくれる。
「あいつが治ったら僕は容赦しません。問答無用で奪いにいきますから。」
自分の目の前に跪いたお姫様のような可愛らしさを持つ三目君は、自分の手を取り、そこに王子様のようにキスをした。
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