落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす

文字の大きさ
27 / 56
第一部

第27話

しおりを挟む
「うーん、こんなものかな?」

 瀬尾君のために作ったのは卵粥。料理は得意ではないし、ほとんど作らないから不安だったが、インターネットで調べながらなんとか食べられるものができた。味見をしてみたが、まずいことはないと思う。


「あ!おいしそう!」

「うわっ!」

 急に後ろから声がしたので飛び上がってしまう。振り向こうとしたが、背中にぴったりと張り付かれてしまってできなかった。

「山口さんってあんまり料理をするイメージなかったですけどできるんですね。」

「ちょっと、三目君!まだ濡れてる!」

 引っ付いてきたのはお風呂上がりの三目君だった。背中が濡れてくる感覚がするのでまだしっかり拭ききれてないのだろう。まとわりつこうとする彼の腕を振り払って後ろを向く。

「三目君、ちゃんと!っ…!」

「はいはい、ふざけました。ごめんなさい。」

 ヘラヘラと笑う三目君に思わず見とれてしまった。上半身は裸で、下はボクサーパンツしか履いていない。そのせいで身体のラインがしっかり見えるのだ。
 瀬尾君よりも体格は劣るものの、全身にしなやかな筋肉がついている。いつもきっちりセットされた髪は濡れていて、彼の幼い顔立ちをさらに強調している。キラキラと子供のように輝く瞳と、引き締まった男の身体のギャップに思わずときめいてしまった。照れてしまい何も言えずに黙っていると、怒っていると勘違いしたのか、三目君が不安そうに顔を覗き込んできた。

「山口さん?ごめんなさい、濡れるの嫌でしたよね?もうしないので、そんなに怒らないで……っあ。」

「み、見るな!」

 顔を赤くしていた自分に気付いたのか、三目君の表情がパアッと明るくなった。そして、一旦離れたのにまた身体を寄せてくる。

「山口さん、僕の勘違いじゃないですよね?僕のこと見て赤くなってくれたんですよね?」

「はっきりと口に出すな!」

 図星をつかれてさらに顔が赤くなる。もうやめてくれと後ろに一歩下がるが、すると三目君は一歩距離を詰めてくる。

「嫌です。口に出します。山口さんに自覚してほしいから。僕のこと、ただの部下としか見てませんでしたよね?最初はそれで良かったんですよ。でもどんどんあなたのことが好きになって。もう信頼できる部下って立場じゃ満足できないんです。」

「うわぁっ!えっ!ちょ、嘘でしょ!」

 三目君よりも自分の方が身長が高い。そのはずなのに、なぜ自分は今、彼にお姫様抱っこされているのか。しかも彼はフラフラすることもなく、しっかり自分の身体を支えている。

「嘘じゃないですよ。あなたを抱えているのが誰なのかちゃんと見てください。…Ωだってちゃんと男なんだってこと、その目に焼き付けてください。」

「ひゃあ!」

 三目君が首筋に唇を寄せてきたかと思うと、チュッと音をたてて吸い上げる。女の子のような悲鳴をあげてしまったことが恥ずかしくって思わず縮こまる。

「瀬尾のこと、抱えあげてた山口さんはすごくかっこよかったけど、可愛らしいあなたも見てみたいんです、幸尚さん。」

 彼に初めて名前を呼ばれたことに気付き、顔をあげる。三目君は蕩けるような瞳で自分を見つめている。

(瀬尾君と同じ目…。)

 思い出すのは、瀬尾君の家で過ごした夜。終始自分に優しげな視線を向けていた彼がどうしてあんなひどいことをしたのか。彼は本当に自分のことが好きなのか。

 そんなことを頭の中でグルグル考えていると、なぜだか三目君が大きなため息をついた。


「まだ瀬尾には勝てないみたいですね。今、あいつのこと考えてたでしょ?」

「へっ?い、いや!!」

「あなた、分かりやすすぎるんですよ。」


 呆れ顔をした三目君がソファーの上におろしてくれる。

「あいつが治ったら僕は容赦しません。問答無用で奪いにいきますから。」

  自分の目の前に跪いたお姫様のような可愛らしさを持つ三目君は、自分の手を取り、そこに王子様のようにキスをした。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

α、β、Ωで結婚したら無敵だった

月田朋
BL
政府の少子化対策のためのお見合いシステム、「マッチングサービス」。α、β、Ωの男三人。 ビッグデータの解析結果によると、三人で結婚すれば相性はバッチリ!!だったら結婚してみよう。恋はその後すればいい。 【登場人物】 鳥飼誠(34歳)α 男性 井岡イオ(31歳)β 男性 淵 流助(21歳)Ω 男性 ※結婚後の姓は選択制の世界です。(彼らは別姓を選択しています)

ほたるのうんめい

ruki
BL
長年の『発情期の相手』と言う役目を終えた誠也は、結婚に向けて再び婚活をすることにした。そして新たに入った婚活サイトで出会ったのは、訳がありそうな黒髪美人のオメガだった。 『ほたるのゆめ』の誠也さんのお話です。『ほたるのゆめ』を読んでいなくても楽しめるとは思いますが、そちらも読んでいただけると幸いです。 ちなみに読んでくださるなら 『さかなのみるゆめ』→『ほたるのゆめ』→『ほたるのうんめい』 が分かりやすいかと思います。

君と運命になっていく

やらぎはら響
BL
母親から冷遇されている町田伊織(まちだいおり)は病気だから薬を欠かさず飲むことを厳命されていた。 ある日倒れて伊織はオメガであり今まで飲むように言われていたのは強い抑制剤だと教えられる。 体調を整えるためにも世界バース保護機関にアルファとのマッチングをするよう言われてしまった。 マッチング相手は外国人のリルトで、大きくて大人の男なのに何だか子犬のように可愛く見えてしまい絆されていく。

【完結】変態αのフェロモン観測記録

加賀ユカリ
BL
欠陥Ωが使用済みマスクを落としたら、変態αにフェロモン値を実況されるようになった話 大学生の天橋瑞樹(あまはし みずき)は、帰り道でうっかり使用済みマスクを落としてしまう。拾ったのは、モデルのようなスタイルと整った顔立ちを持つ青年──神代慧(かみしろ けい)。だが、彼はただのαではなかった。 「このマスクは僕の宝物です」そう言って笑う慧は、瑞樹のマスクを返さないどころか、初対面で「君は僕の運命の番だ」と宣言してくる。 だが瑞樹は、自分が“欠陥Ω”──フェロモン値が極端に低い存在であることを知っていた。 そして、計測器と共に瑞樹のフェロモン数値を実況する“変態α”との、奇妙で騒がしい日々が始まった。 そんなある日。 瑞樹に人生で初めてのヒートが訪れる── 攻め:神代慧(かみしろ けい)。α。瑞樹のマスクを返さないヤバい男。 受け:天橋瑞樹(あまはし みずき)。欠陥Ω。 ・オメガバースの独自設定があります ・性描写のある話には※を付けています ・最終話まで執筆済みです。(全35話) ・19時更新 ・ムーンライトノベルズにも掲載しています ※過去作『番になれなくても』の主人公(天橋和樹)の兄の話です。本作品は『番になれなくても』の本編より前の時間軸になります。それぞれの話は独立しているので、読んでいなくても大丈夫です 【完結】番になれなくても https://www.alphapolis.co.jp/novel/166551580/588945232

運命の君

沢渡奈々子
BL
【はじめに】このお話はBL(Boy's Love)です。他の投稿作品(NL)から来られた方はご注意くださいませ。【注意】 【オメガバース】設定捏造&造語あり注意。 ごくごく普通のベータである蒼は、ある日超美形のアルファ・鳴海から友達になってほしいと言われ快諾する。それからしばらくして、蒼はオメガと間違えられてアルファの小野塚に襲われるが……。

政略結婚制度に怒っています

河野彰
BL
「政略結婚法」が施行されて十余年。政治家や俳優、高額納税者などの著名人は三十歳までに結婚をしなければならないという法律だ。  主人公末永遥(すえながはるか)はごく一般家庭に育った地味なサラリーマンだったが、ある日一通の通知が政府から届く。それは、高額納税者である久堂清継(くどうきよつぐ)との婚姻が成立したという決定通知だった。  男同士で結婚!? と驚く遥。間違いかと思い、すぐに異議申し立てをしに市役所へ行ったが、そこで事実だと告げられてしまう。トボトボと帰路につく遥の前に清継が現れて……。

ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。 立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。 ※攻めと女性との絡みが何度かあります。 ※展開かなり遅いと思います。

【本編完結】期限つきの恋

こうらい ゆあ
BL
神崎葵は、聖桜病院の特別病棟で静かな日々を送っていた。 Ω性特有の難病『フェロモン崩壊症』に冒された彼は、かつてイラストレーターとして活躍していたが、今では病室でひとり、スケッチブックに心を刻む。 余命わずかな時間の中、担当医・佐藤悠真との出会いが、閉ざされた白い病室に温かな光を灯す。 葵の海への憧れ、恋への憧憬が色鮮やかに花開くが、時間は無情にも迫ってくる。 限られた時間の中での、儚い恋のお話。

処理中です...