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第一部
第26話
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ドラッグストアで薬や病人食を買い込んだ。本当は瀬尾君を家まで送って、自宅で療養させるのが一番だとは思うが、ここからでは1時間以上かかってしまうし、一人暮らしの人間を放り出すことはできない。悩んだ末に結局三目君とともに、我が家に迎え入れることにした。
家の前まで着いたのでお金を払おうとしたが、三目君が断固として財布を出させてくれない。彼と押し問答している間に、なんと瀬尾君が勝手に料金を払ってしまった。そして、そのまま一人ですたすたとタクシーを降りてしまう。どう見ても元気そうなのでやっぱり仮病だったのかと慌てて追いかける。
「せ、瀬尾君!?」
しかし、それは思い違いだった。外に出た途端、瀬尾君はその場にしゃがみこんでしまったのだ。慌てて駆け寄ると「なんかフラフラします」と言って自分にもたれかかってくる。彼の額に手を当ててみると、先程よりも熱が上がっている。これは一刻も早くベッドに寝かせた方がいいだろう。
「三目君、俺の荷物頼む。」
「は、はい!」
手に持っていた荷物を三目君に手渡して、瀬尾君へと向き直る。「少し我慢して」と伝えた後、彼の身体の下に潜り込み、力をいれて立ち上がった。
「幸尚さん!?」
「もう少しだから我慢して。」
おんぶされたことが恥ずかしいのか、瀬尾君が身体をよじらせた。「落ちるから暴れない!」と叱りつけるとモゴモゴと小さな声で文句を言いながらも大人しくなった。
自分より体格の良い人間を運ぶのは一苦労だが、三目君よりも自分の方が力がある。体勢を崩さないようにゆっくりと歩き出した。
「山口さん、男前…。」
よたよたと歩く自分の後ろでは、三目君がそんな情けない自分を見て頬を赤く染めていた。
「はい、ここが俺の部屋です。ようこそー。」
本当は2人を部屋に入れる前に少しでも掃除をしたかったのだが、瀬尾君の体調が悪い以上仕方がない。すぐに中へと招き入れた。
「うわぁ、ここが山口さんのおうちかぁ。」
三目君がキョロキョロと部屋を見渡している。正直あまり見ないでほしい。インテリアのセンスなどは皆無なので、特にこだわりはない。2LDKの部屋で、玄関には小さめのシューズボックスがあり、リビングへと続く廊下がある。途中を右に入るとトイレ、左に入るとバスルームだ。リビングは少し広め。背の低いテーブルとソファーを置いている。リビングからは洋室と和室どちらにも行けるような造りで、洋室は書斎、和室はベッドルームにしている。
三目君に適当に荷物を置くように頼んだ後、ソファーに瀬尾君を寝かせた。
「大丈夫、瀬尾君?起きられる?」
「だ、いじょうぶ…です。」
目をつむっていた瀬尾君がゆっくりと起き上がろうとするが、やはりよろめいてソファーに倒れこんでしまう。体温計を持ってきて計ってみると、38℃まで熱が上がっていた。これは大変だと、三目君と協力して和室まで瀬尾君を運ぶ。自分のベッドは床とほぼ同じ高さなので、彼の身体を持ち上げる必要がないのは良かった。寝相が悪いために大きめのベッドを使っているので、瀬尾君が寝てもあと1人は寝られるぐらいの余裕はある。
瀬尾君に食欲はあるのか聞いてみると、お腹が空きましたという返事が返ってきたので、キッチンに戻りお粥を作ることにした。
「三目君は先にシャワー浴びてきて。さっぱりしたいでしょ?」
「いや、僕は後でいいですよ。山口さんの方がお先に!」
「俺はお粥を作っちゃうから。三目君のあとに入るよ。」
説得すると、やっと頷いてくれた。タオルや服は勝手に使っていいことを伝えて早速調理にとりかかる。冷蔵庫を開けてみると、卵がたくさん残っている。正直瀬尾君より美味しく作れるとは思っていないが、何か腹にいれないと薬も飲めない。
「よーし、ちゃっちゃとやるかぁ。」
鍋を取り出して気合を入れたのだった。
家の前まで着いたのでお金を払おうとしたが、三目君が断固として財布を出させてくれない。彼と押し問答している間に、なんと瀬尾君が勝手に料金を払ってしまった。そして、そのまま一人ですたすたとタクシーを降りてしまう。どう見ても元気そうなのでやっぱり仮病だったのかと慌てて追いかける。
「せ、瀬尾君!?」
しかし、それは思い違いだった。外に出た途端、瀬尾君はその場にしゃがみこんでしまったのだ。慌てて駆け寄ると「なんかフラフラします」と言って自分にもたれかかってくる。彼の額に手を当ててみると、先程よりも熱が上がっている。これは一刻も早くベッドに寝かせた方がいいだろう。
「三目君、俺の荷物頼む。」
「は、はい!」
手に持っていた荷物を三目君に手渡して、瀬尾君へと向き直る。「少し我慢して」と伝えた後、彼の身体の下に潜り込み、力をいれて立ち上がった。
「幸尚さん!?」
「もう少しだから我慢して。」
おんぶされたことが恥ずかしいのか、瀬尾君が身体をよじらせた。「落ちるから暴れない!」と叱りつけるとモゴモゴと小さな声で文句を言いながらも大人しくなった。
自分より体格の良い人間を運ぶのは一苦労だが、三目君よりも自分の方が力がある。体勢を崩さないようにゆっくりと歩き出した。
「山口さん、男前…。」
よたよたと歩く自分の後ろでは、三目君がそんな情けない自分を見て頬を赤く染めていた。
「はい、ここが俺の部屋です。ようこそー。」
本当は2人を部屋に入れる前に少しでも掃除をしたかったのだが、瀬尾君の体調が悪い以上仕方がない。すぐに中へと招き入れた。
「うわぁ、ここが山口さんのおうちかぁ。」
三目君がキョロキョロと部屋を見渡している。正直あまり見ないでほしい。インテリアのセンスなどは皆無なので、特にこだわりはない。2LDKの部屋で、玄関には小さめのシューズボックスがあり、リビングへと続く廊下がある。途中を右に入るとトイレ、左に入るとバスルームだ。リビングは少し広め。背の低いテーブルとソファーを置いている。リビングからは洋室と和室どちらにも行けるような造りで、洋室は書斎、和室はベッドルームにしている。
三目君に適当に荷物を置くように頼んだ後、ソファーに瀬尾君を寝かせた。
「大丈夫、瀬尾君?起きられる?」
「だ、いじょうぶ…です。」
目をつむっていた瀬尾君がゆっくりと起き上がろうとするが、やはりよろめいてソファーに倒れこんでしまう。体温計を持ってきて計ってみると、38℃まで熱が上がっていた。これは大変だと、三目君と協力して和室まで瀬尾君を運ぶ。自分のベッドは床とほぼ同じ高さなので、彼の身体を持ち上げる必要がないのは良かった。寝相が悪いために大きめのベッドを使っているので、瀬尾君が寝てもあと1人は寝られるぐらいの余裕はある。
瀬尾君に食欲はあるのか聞いてみると、お腹が空きましたという返事が返ってきたので、キッチンに戻りお粥を作ることにした。
「三目君は先にシャワー浴びてきて。さっぱりしたいでしょ?」
「いや、僕は後でいいですよ。山口さんの方がお先に!」
「俺はお粥を作っちゃうから。三目君のあとに入るよ。」
説得すると、やっと頷いてくれた。タオルや服は勝手に使っていいことを伝えて早速調理にとりかかる。冷蔵庫を開けてみると、卵がたくさん残っている。正直瀬尾君より美味しく作れるとは思っていないが、何か腹にいれないと薬も飲めない。
「よーし、ちゃっちゃとやるかぁ。」
鍋を取り出して気合を入れたのだった。
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