131 / 555
飛竜探しの旅
辺境フェルンの町
しおりを挟む
俺たちは町の入り口近くまで移動してから馬を下りた。
歩きながら馬を引くかたちで入り口に到着すると、外側に馬を係留できる場所を見つけた。
「……馬が一頭もいないなんて、町の規模にしてはずいぶん閑散としてますね」
そこに馬の気配はなかった。
バラムの町ならば日常的に出入りがあり、誰かしらの馬がいる印象だ。
「私もここを使うのは初めてだから、何とも言えないわ。地理的にエルフの村から出発すると通過地点になるのよ」
「けっこう使いこまれている様子からすると、何かの事情で使ってないか、夕方以降は馬を置かねえとか。何か理由がありそうだな」
アデルとハンクの二人も、俺と同じように立ち止まったままだった。
馬の旅の足としての価値を考えたら、代えの利く道具のような扱いはできない。
町の宿屋で一夜を明かす以上、一定の管理ができる状態にしておきたかった。
三人で判断のつかないような状態でいると、一人の男が通りがかった。
その男は四十代ぐらいで、俺たちに話しかけてきた。
「おっ、旅の人かね。ようこそ、フェルンへ」
フェルンとは町の名前のようだった。
そういえば、まだアデルから聞いていなかった。
「あのー、すみません。馬を留めておきたいんですけど、この町の人は夕方以降は厩舎に馬をしまう習慣でもあるんですか?」
「地元の者でなければ知らないだろうね。最近、この近くにワイバーンが現れるようになったんだよ。噂では暗殺機構に飼われていたものが逃げ出したらしい。繋がれた状態の馬なんか格好の食料になってしまう。少し前からそこは使わないんだ」
暗殺機構という単語を耳にして、身体に力が入るのを感じた。
ただ、今回は間接的にしか関係していないようだ。
「じゃあ、ここに留めるのはまずいですね」
「悪いことは言わん。厩舎が使えるように口添えするから、そちらへ馬を入れるようにしなさい」
「ご親切にありがとうございます」
「息子が冒険者の仕事に精を出していてね。あんたたちみたいな人を見たら、力になりたいと思っただけさ」
それから、男はトマと名乗り、馬を引いてついてくるように言った。
俺たち三人はトマに続いて、フェルンの町へと入った。
遠目に見たこの町はそこそこ栄えているように見えたが、入り口周辺は取り立てて何もなかった。
民家や店などが立ち並ぶのは中心部に近いところのようだ。
四人で歩いていると、徐々に周りに建物が増え始めた。
するとそこで、トマが足を止めた。
「普段、町の人間は盛り場の方まで馬を連れて歩くことはなくてね。厩舎が使えるように話してくるから、ここで待っていてくれるかい」
「はい、もちろんです」
地元民である彼の言うことは理解できた。
バラムでも荷馬車を入れなければいけないなどの理由でもない限り、市場があるような中心部で馬を歩かせるような人を見ることはない。
トマがどこかへ歩いていった後、アデルとハンクと話し始めた。
「何だか流れで代表して話しちゃいました」
「いや、構わねえよ。それにワイバーンのことが聞けてよかった」
「私はこの馬が食べられでもしたら、そのワイバーンを地の果てまで追いかけるわ。それぐらい気に入っているのよ」
「ははっ、頼もしいですね」
半ば冗談だと思うが、アデルの魔法なら簡単にワイバーンを倒せると思った。
さらにハンクがいることも考えれば、十分に討伐は可能なはずだ。
三人で談笑しているとトマが足早に戻ってきた。
「待たせたね。まだ空きがあるようだから、使っても大丈夫だそうだ」
「ありがとうございます。厩舎の管理はギルドですか?」
「いや、この町にギルドはないよ。冒険者になった息子も別の町で暮らしている」
「あっ、なるほど」
「それで厩舎は町の近くで牧畜を営む人のものだよ」
トマが厩舎へ向かうように促したので、俺たちは彼に続いて歩き出した。
フェルンの町の路地に夕日が降り注ぎ、地面が夕焼け色に染まっている。
「ギルドがないとなると、ワイバーンを追い払うのは大変じゃないですか?」
先ほどの会話で気になった点をトマにたずねた。
「そこまで小さな町ではないし、元冒険者みたいに腕に覚えのある者はいるんだよ。ただ、討伐できるわけもなくて、何度か町の近くを飛ぶもんだから、町は王都に遣いを出したところだね」
「ここからメルツは遠くないと思いますけど、この町はランス領ですよね」
「その通り。君たちはどこから来たのかな」
「ここから離れた町のバラムからです」
俺の言葉を聞いた後、トマに考えるような間があった。
だいぶ距離があるので、聞き覚えのない地名なのだろう。
「そこまで遠くに行ったことがなくて分からないね」
「気にしないでください。俺もフェルンを知ったばかりです」
トマと話しながら町の外れの方に歩いてくると小屋のようなものが見えてきた。
「あそこが厩舎だよ。空いているところはどこでも使っていいそうだ」
「はい、ありがとうございます」
俺たちは馬を引きながら、厩舎の中に入った。
屋内の様子を眺めると何頭かの馬が繋がれている状態だった。
「マルク、馬の係留はできそうか?」
「前にやったことがあるので、大丈夫です」
ハンクが気遣ってくれたが、無難に一頭分のスペースに収めることができた。
俺とハンクの馬は従順だったが、アデルの馬は元気が有り余っていて、乗馬に慣れていそうな彼女でも少し時間がかかった。
ワイバーンの件は気にかかるところだが、ひとまず馬を係留する場所が見つかって気分が落ちついた。
歩きながら馬を引くかたちで入り口に到着すると、外側に馬を係留できる場所を見つけた。
「……馬が一頭もいないなんて、町の規模にしてはずいぶん閑散としてますね」
そこに馬の気配はなかった。
バラムの町ならば日常的に出入りがあり、誰かしらの馬がいる印象だ。
「私もここを使うのは初めてだから、何とも言えないわ。地理的にエルフの村から出発すると通過地点になるのよ」
「けっこう使いこまれている様子からすると、何かの事情で使ってないか、夕方以降は馬を置かねえとか。何か理由がありそうだな」
アデルとハンクの二人も、俺と同じように立ち止まったままだった。
馬の旅の足としての価値を考えたら、代えの利く道具のような扱いはできない。
町の宿屋で一夜を明かす以上、一定の管理ができる状態にしておきたかった。
三人で判断のつかないような状態でいると、一人の男が通りがかった。
その男は四十代ぐらいで、俺たちに話しかけてきた。
「おっ、旅の人かね。ようこそ、フェルンへ」
フェルンとは町の名前のようだった。
そういえば、まだアデルから聞いていなかった。
「あのー、すみません。馬を留めておきたいんですけど、この町の人は夕方以降は厩舎に馬をしまう習慣でもあるんですか?」
「地元の者でなければ知らないだろうね。最近、この近くにワイバーンが現れるようになったんだよ。噂では暗殺機構に飼われていたものが逃げ出したらしい。繋がれた状態の馬なんか格好の食料になってしまう。少し前からそこは使わないんだ」
暗殺機構という単語を耳にして、身体に力が入るのを感じた。
ただ、今回は間接的にしか関係していないようだ。
「じゃあ、ここに留めるのはまずいですね」
「悪いことは言わん。厩舎が使えるように口添えするから、そちらへ馬を入れるようにしなさい」
「ご親切にありがとうございます」
「息子が冒険者の仕事に精を出していてね。あんたたちみたいな人を見たら、力になりたいと思っただけさ」
それから、男はトマと名乗り、馬を引いてついてくるように言った。
俺たち三人はトマに続いて、フェルンの町へと入った。
遠目に見たこの町はそこそこ栄えているように見えたが、入り口周辺は取り立てて何もなかった。
民家や店などが立ち並ぶのは中心部に近いところのようだ。
四人で歩いていると、徐々に周りに建物が増え始めた。
するとそこで、トマが足を止めた。
「普段、町の人間は盛り場の方まで馬を連れて歩くことはなくてね。厩舎が使えるように話してくるから、ここで待っていてくれるかい」
「はい、もちろんです」
地元民である彼の言うことは理解できた。
バラムでも荷馬車を入れなければいけないなどの理由でもない限り、市場があるような中心部で馬を歩かせるような人を見ることはない。
トマがどこかへ歩いていった後、アデルとハンクと話し始めた。
「何だか流れで代表して話しちゃいました」
「いや、構わねえよ。それにワイバーンのことが聞けてよかった」
「私はこの馬が食べられでもしたら、そのワイバーンを地の果てまで追いかけるわ。それぐらい気に入っているのよ」
「ははっ、頼もしいですね」
半ば冗談だと思うが、アデルの魔法なら簡単にワイバーンを倒せると思った。
さらにハンクがいることも考えれば、十分に討伐は可能なはずだ。
三人で談笑しているとトマが足早に戻ってきた。
「待たせたね。まだ空きがあるようだから、使っても大丈夫だそうだ」
「ありがとうございます。厩舎の管理はギルドですか?」
「いや、この町にギルドはないよ。冒険者になった息子も別の町で暮らしている」
「あっ、なるほど」
「それで厩舎は町の近くで牧畜を営む人のものだよ」
トマが厩舎へ向かうように促したので、俺たちは彼に続いて歩き出した。
フェルンの町の路地に夕日が降り注ぎ、地面が夕焼け色に染まっている。
「ギルドがないとなると、ワイバーンを追い払うのは大変じゃないですか?」
先ほどの会話で気になった点をトマにたずねた。
「そこまで小さな町ではないし、元冒険者みたいに腕に覚えのある者はいるんだよ。ただ、討伐できるわけもなくて、何度か町の近くを飛ぶもんだから、町は王都に遣いを出したところだね」
「ここからメルツは遠くないと思いますけど、この町はランス領ですよね」
「その通り。君たちはどこから来たのかな」
「ここから離れた町のバラムからです」
俺の言葉を聞いた後、トマに考えるような間があった。
だいぶ距離があるので、聞き覚えのない地名なのだろう。
「そこまで遠くに行ったことがなくて分からないね」
「気にしないでください。俺もフェルンを知ったばかりです」
トマと話しながら町の外れの方に歩いてくると小屋のようなものが見えてきた。
「あそこが厩舎だよ。空いているところはどこでも使っていいそうだ」
「はい、ありがとうございます」
俺たちは馬を引きながら、厩舎の中に入った。
屋内の様子を眺めると何頭かの馬が繋がれている状態だった。
「マルク、馬の係留はできそうか?」
「前にやったことがあるので、大丈夫です」
ハンクが気遣ってくれたが、無難に一頭分のスペースに収めることができた。
俺とハンクの馬は従順だったが、アデルの馬は元気が有り余っていて、乗馬に慣れていそうな彼女でも少し時間がかかった。
ワイバーンの件は気にかかるところだが、ひとまず馬を係留する場所が見つかって気分が落ちついた。
70
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~
月神世一
ファンタジー
紹介文
「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」
そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。
失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。
「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」
手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。
電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。
さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!?
森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、
罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、
競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。
これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。
……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる