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飛竜探しの旅
新たな旅立ち
俺が話を終えたところで、アデルが理解を示すような様子で口を開いた。
「エルフの村に帰る予定はなかったけれど、マルクが飛竜を捕まえたいなら案内するわ。王都に行くよりも遠いから、馬車を頼むよりも一人ずつ馬に乗った方がいいわね。それと道中で野宿はなしよ。これだけは譲れないから」
彼女の話す内容は具体的なものだった。
見合い話の時は帰る気がなさそうだったのに、こちらのために同行してくれるのはありがたい限りだ。
「おれも行こう。飛竜は比較的おとなしいとはいえ、ドラゴンであることに違いはねえ。おれの力が必要になると思うぜ」
「二人が協力してくれるのは心強いです。明日では準備の時間が足りないので、何日か経ってからの出発でもいいですか?」
「それで大丈夫だと思うけれど、馬の状況次第ね。人数分確保しておくから、私に任せてもらえるかしら」
「はい、もちろん」
話に区切りがついたところで、ハンクが椅子から立ち上がった。
「飛竜を捕まえに行くなんて考えたら、やる気がみなぎってきた。今から身体を動かしに行ってくる!」
「はい、行ってらっしゃい」
「それじゃあ、私も失礼するわね。馬の準備が整ったら、また伝えるわ」
「ありがとうございます。お願いします」
アデルとハンクが店から去っていった。
店の敷地に一人残った状態で、等間隔に並んだテーブルを眺める。
「……新しい食材を仕入れて、ここで出せるようになったら繁盛するだろうな」
アデルやハンク、エスカ、そして店に足を運んでくれる人たちの顔が浮かんだ。
飛竜で遠くに行けるようになれば、ドラゴンの肉だけでなく色んな食材を取り扱うことができるようになるはずだ。
それから、アデルが馬を調達できるまで十日ほど要した。
彼女の動きに合わせて店の営業日を調整して、出発日が決まってからはよく来てくれるお客にはしばらく休みになることを伝えた。
残念がってくれる人が大半で新しい食材を探しに行くと伝えると、楽しみにしていると励ましの言葉が返ってきた。
迎えた出発当日。
町の外周に馬を係留できる場所があり、そこで集まることになっていた。
アデルが調達してくれた馬のうち一頭は町の人から有償で譲ってもらったもので、二頭はギルドから買い取ったものだと聞いている。
俺は遠征用の荷物を持って、アデルとハンクを集合場所で待った。
しばらくして、二人がやってきた。
「おはようございます」
「おはよう。晴れてよかったわね」
「おう、出発が楽しみで昨晩はなかなか眠れなかったぜ。はははっ」
二人ともいつも通りのようで安心した。
俺自身も今日に向けて身体の状態を整えてきた。
長距離移動に加えて飛竜と対峙することを考えれば、万全の状態であることに越したことはない。
「それで肝心の馬だけれど、あそこで三頭並んでいる馬がそうよ」
この場所は一時的な係留に使われることが多く、アデルが示した方向に馬が並んでいた。
三頭のうち一頭は赤茶色の立派な毛並みで、二頭は黒っぽい毛色だった。
二頭の方はギルドが管理しているのを見たことがある。
「あっ、鞍や装具を揃えてくれたんですね」
「出発の日に用意していたら出足が悪いもの。左右に荷物をかけられるから、必要なら使えるわよ」
「おれはどれでも気にしねえが、誰がどの馬に乗る?」
三人で馬に近づいたところで、ハンクが切り出した。
感覚的ではあるが、赤い髪色のアデルには赤茶色の馬が似合うように思った。
「俺は黒い方でいいですよ。赤茶色の馬はアデルが乗ったらどうです?」
「それじゃあ、あの馬に乗らせてもらうわね」
「よしっ、おれとマルクが残った黒い方か」
馬を係留する縄を外した後、乗りやすい位置に移動させた。
この馬は色んな冒険者を乗せて人に慣れているようで、初見の俺が乗ろうとしてもそこまで抵抗する様子は見られなかった。
荷物を背中に背負ったまま、慎重に鞍に上がった。
アデルとハンクはすでに出発できるようになっていた。
シルバーゴブリンの時、馬に乗る姿を目にしたハンクはともかく、アデルの乗馬姿を珍しく思った。
彼女の赤くきれいな髪と馬の整った毛並みと相まって、とても絵になる光景だ。
「お待たせしました。道案内をお願いします」
「ええ、任せて」
アデルが手綱を引くと、赤茶色の馬は軽やかに動き出した。
黒い馬は平均的な佇まいに見えるが、アデルの乗る馬は力強いオーラを感じさせる。
「よしっ、出発だな」
「はい、行きましょう」
アデルが俺とハンクを先導するかたちで町の外周から街道に向かった。
街道に出てからは同じ並びのまま、三人で馬を走らせた。
久しぶりの乗馬ということもあり、遅れないようにすることで手一杯だった。
それでも、しばらく走らせるうちに少しずつ余裕が出てきた。
風を切る感覚を全身で体感して、周囲の風景に目を向けることができた。
バラムの近くにいるうちは見慣れた景色が続いていたが、途中からはほとんど通ったことのない道に入っていた。
今まで縁がなく赴く機会がなかったメルツ――ランス王国の北東にある国――方面に向かっているように思われた。
途中で小休憩を取りながら、昼頃になったところで通りがかった町で昼食を済ませて、さらに移動を続けた。
俺とハンクが乗る馬は途中から少し疲れが見え始めたが、アデルの乗る馬は快調に足を運んでいた。
遠くの空に夕日の気配を感じた頃、進行方向にバラムと同規模の町が見えた。
前方のアデルが馬の速度を緩めて、会話がしやすい距離まで近づいてきた。
「今夜はあの町の宿に泊まるわ」
「分かりました」
彼女からは野宿禁止令が出ているため、これ以上先に進まない方がいいだろう。
次に宿屋がある町まで、どれぐらい離れているのか分からない。
「エルフの村に帰る予定はなかったけれど、マルクが飛竜を捕まえたいなら案内するわ。王都に行くよりも遠いから、馬車を頼むよりも一人ずつ馬に乗った方がいいわね。それと道中で野宿はなしよ。これだけは譲れないから」
彼女の話す内容は具体的なものだった。
見合い話の時は帰る気がなさそうだったのに、こちらのために同行してくれるのはありがたい限りだ。
「おれも行こう。飛竜は比較的おとなしいとはいえ、ドラゴンであることに違いはねえ。おれの力が必要になると思うぜ」
「二人が協力してくれるのは心強いです。明日では準備の時間が足りないので、何日か経ってからの出発でもいいですか?」
「それで大丈夫だと思うけれど、馬の状況次第ね。人数分確保しておくから、私に任せてもらえるかしら」
「はい、もちろん」
話に区切りがついたところで、ハンクが椅子から立ち上がった。
「飛竜を捕まえに行くなんて考えたら、やる気がみなぎってきた。今から身体を動かしに行ってくる!」
「はい、行ってらっしゃい」
「それじゃあ、私も失礼するわね。馬の準備が整ったら、また伝えるわ」
「ありがとうございます。お願いします」
アデルとハンクが店から去っていった。
店の敷地に一人残った状態で、等間隔に並んだテーブルを眺める。
「……新しい食材を仕入れて、ここで出せるようになったら繁盛するだろうな」
アデルやハンク、エスカ、そして店に足を運んでくれる人たちの顔が浮かんだ。
飛竜で遠くに行けるようになれば、ドラゴンの肉だけでなく色んな食材を取り扱うことができるようになるはずだ。
それから、アデルが馬を調達できるまで十日ほど要した。
彼女の動きに合わせて店の営業日を調整して、出発日が決まってからはよく来てくれるお客にはしばらく休みになることを伝えた。
残念がってくれる人が大半で新しい食材を探しに行くと伝えると、楽しみにしていると励ましの言葉が返ってきた。
迎えた出発当日。
町の外周に馬を係留できる場所があり、そこで集まることになっていた。
アデルが調達してくれた馬のうち一頭は町の人から有償で譲ってもらったもので、二頭はギルドから買い取ったものだと聞いている。
俺は遠征用の荷物を持って、アデルとハンクを集合場所で待った。
しばらくして、二人がやってきた。
「おはようございます」
「おはよう。晴れてよかったわね」
「おう、出発が楽しみで昨晩はなかなか眠れなかったぜ。はははっ」
二人ともいつも通りのようで安心した。
俺自身も今日に向けて身体の状態を整えてきた。
長距離移動に加えて飛竜と対峙することを考えれば、万全の状態であることに越したことはない。
「それで肝心の馬だけれど、あそこで三頭並んでいる馬がそうよ」
この場所は一時的な係留に使われることが多く、アデルが示した方向に馬が並んでいた。
三頭のうち一頭は赤茶色の立派な毛並みで、二頭は黒っぽい毛色だった。
二頭の方はギルドが管理しているのを見たことがある。
「あっ、鞍や装具を揃えてくれたんですね」
「出発の日に用意していたら出足が悪いもの。左右に荷物をかけられるから、必要なら使えるわよ」
「おれはどれでも気にしねえが、誰がどの馬に乗る?」
三人で馬に近づいたところで、ハンクが切り出した。
感覚的ではあるが、赤い髪色のアデルには赤茶色の馬が似合うように思った。
「俺は黒い方でいいですよ。赤茶色の馬はアデルが乗ったらどうです?」
「それじゃあ、あの馬に乗らせてもらうわね」
「よしっ、おれとマルクが残った黒い方か」
馬を係留する縄を外した後、乗りやすい位置に移動させた。
この馬は色んな冒険者を乗せて人に慣れているようで、初見の俺が乗ろうとしてもそこまで抵抗する様子は見られなかった。
荷物を背中に背負ったまま、慎重に鞍に上がった。
アデルとハンクはすでに出発できるようになっていた。
シルバーゴブリンの時、馬に乗る姿を目にしたハンクはともかく、アデルの乗馬姿を珍しく思った。
彼女の赤くきれいな髪と馬の整った毛並みと相まって、とても絵になる光景だ。
「お待たせしました。道案内をお願いします」
「ええ、任せて」
アデルが手綱を引くと、赤茶色の馬は軽やかに動き出した。
黒い馬は平均的な佇まいに見えるが、アデルの乗る馬は力強いオーラを感じさせる。
「よしっ、出発だな」
「はい、行きましょう」
アデルが俺とハンクを先導するかたちで町の外周から街道に向かった。
街道に出てからは同じ並びのまま、三人で馬を走らせた。
久しぶりの乗馬ということもあり、遅れないようにすることで手一杯だった。
それでも、しばらく走らせるうちに少しずつ余裕が出てきた。
風を切る感覚を全身で体感して、周囲の風景に目を向けることができた。
バラムの近くにいるうちは見慣れた景色が続いていたが、途中からはほとんど通ったことのない道に入っていた。
今まで縁がなく赴く機会がなかったメルツ――ランス王国の北東にある国――方面に向かっているように思われた。
途中で小休憩を取りながら、昼頃になったところで通りがかった町で昼食を済ませて、さらに移動を続けた。
俺とハンクが乗る馬は途中から少し疲れが見え始めたが、アデルの乗る馬は快調に足を運んでいた。
遠くの空に夕日の気配を感じた頃、進行方向にバラムと同規模の町が見えた。
前方のアデルが馬の速度を緩めて、会話がしやすい距離まで近づいてきた。
「今夜はあの町の宿に泊まるわ」
「分かりました」
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