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トリュフともふもふ
エディとの再会と開店準備
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焼肉店とのかけ持ちが続く中、ついにオープンの日が訪れた。
自宅を出てレストランに向かって歩くと、見覚えのある人影が目に入った。
サミュエルがエディを散歩させているところだった。
「マルクくん、あの店に向かうところかな」
「はい、今日が初日で」
「やっぱり、そうだったか。町長からまとまった量のトリュフがいると言われて、つい最近エディと駆り出されたばかりだよ」
サミュエルは疲れをにじませるような声で言った。
一方のエディはつぶらな瞳でこちらを見て、控えめにしっぽを振っている。
「相変わらず、エディは愛くるしいですね」
「さすがだね。この子の魅力を分かってる」
サミュエルは喜ばしいと言わんばかりに表情を緩めた。
正直なところ、そこまでエディに懐かれているように見えないものの、飼い主として愛情を注いでいる点は好感が持てる。
エディは毛並みが整っており、健康的な体格から十分に食べさせられていることが見て取れた。
「ちょっと触っても大丈夫ですか?」
「そりゃ、もちろん。エディ、一緒にトリュフを採りに行ったマルクくんだぞ」
「ワンッ」
サミュエルが促した後、エディは楽しそうに短く吠えた。
こちらが姿勢を低くして近づくと、撫でてほしそうに寄ってくる。
「ところで、バラムの町ではあんまり犬を見かけませんね」
「それなら、犬を売っているのは都市部だけだからだよ。禁じられているわけではないけど、バラムみたいに周囲に壁がない上に野山が近い町ではいい顔はされないだろうね。逃げた犬が野犬化したら大問題だから」
「ああっ、なるほど」
本格的に犬を飼おうと考えたことがないため、そういったことは初めて聞いた。
過去に聞いたことがあるかもしれないが、日常的に考えるようなことではない。
「トリュフ採りは競争率が高いけど、狩猟はけっこう狙い目だから、相棒に必要になった時は声をかけてよ。信用できる業者を紹介する」
「狩猟はいいですね。シカの肉は好きなんですよ」
「いいね、シカ肉」
俺はエディをもう一度撫でてから、サミュエルと別れた。
朝からいい気分だと思いつつ、目的地に向かって歩いた。
レストランに到着すると、立派な花飾りが入り口に置かれていた。
開店祝いに贈る文化はないため、町長辺りが取り寄せて設置したのだろう。
店が始動する空気を感じつつ、店内へと足を運んだ。
「おはよう、マルクくん」
「おはようございます」
声のした方に振り向くと、町長自らテーブルを拭いていた。
彼の近くでは給仕係も一緒に準備を進めている。
「プレオープンは好調だったから、今日もよろしく頼むよ」
「はい、頑張ります」
町長に会釈をして、給仕係にも声をかけてから調理場へと移動した。
荷物置き場で身支度を整えてから、在庫確認のために簡易冷蔵庫を開く。
「トリュフは常温保存で、冷蔵保存してある分のストックは十分っと」
うんうんと二、三度頷いて扉を閉めた。
今度はかまどに火をつけておくか確認するために向かう。
「マルクさん、おはようございます」
「あっ、おはようございます」
パメラが先に来ていた。
彼女はかまどの手入れをしている。
「今朝は早いですね」
「従業員の皆さんが私の負担が減るようにしてくれて、こちらを優先しても大丈夫になりました」
そう話すパメラの顔は誇らしげに見える。
彼女の気持ちは十分に理解できるものだった。
「うちの店も似たような感じです。新しく入った人たちがどんどん仕事を覚えて、最近は開店前の準備まで任せられるようになって」
「従業員の成長を見られるのは経営者の醍醐味ですね」
「あははっ、言われてみればたしかに」
焼肉店を始めた頃を思えば、ここまで進展することは予想できなかった。
それに同じ経営者同士で意見を交わせるようになることも。
「話の途中ですみません、今日の予約の話をしてもよろしいでしょうか?」
「はい、大事なことなので、続けてください」
今回はトリュフという高級食材を使うこと、遠方から足を運んでもらうことを考慮して、完全予約制をすることになっている。
期間限定とはいえ、バラム随一の高級店が誕生したことになる。
「開店初日で評判が出ていないことで、まだ様子見をされていたり、そもそも知らなかったりという状況みたいです。ただ、王都には私やマルクさんの顔見知りがいるので、興味を示す方がちらほらといるように聞きました」
「そうですね。王城の関係者に何人かいます」
大臣のカタリナ、城仕えのブルームに優れた衛兵のリリア。
彼らの顔をすぐに思い浮かべることができる。
「……それでいきなり高貴な方がいらっしゃるのですが、カタリナ様が来られるそうです」
「えっ、カタリナが来るんですか!?」
「はい。カタリナ様とお連れの方がもう一名と記載がありました」
「もう一人……誰だろう」
考えてみても答えが出るはずはなかった。
誰が来るにせよ、万全の準備をして備えたい。
「その後に地元の方が一組、予約が入っています」
「とりあえず、合計二組分の下準備が必要ですね」
「開店する時間にはクレマンさんとベランさんも来てくださるので、そこまでバタバタせずに済むと思います」
パメラは意見を述べてから、ホッとしたような表情を浮かべた。
彼女も人間なので、過密スケジュールは避けたいのだと思うと微笑ましい気持ちになる。
自宅を出てレストランに向かって歩くと、見覚えのある人影が目に入った。
サミュエルがエディを散歩させているところだった。
「マルクくん、あの店に向かうところかな」
「はい、今日が初日で」
「やっぱり、そうだったか。町長からまとまった量のトリュフがいると言われて、つい最近エディと駆り出されたばかりだよ」
サミュエルは疲れをにじませるような声で言った。
一方のエディはつぶらな瞳でこちらを見て、控えめにしっぽを振っている。
「相変わらず、エディは愛くるしいですね」
「さすがだね。この子の魅力を分かってる」
サミュエルは喜ばしいと言わんばかりに表情を緩めた。
正直なところ、そこまでエディに懐かれているように見えないものの、飼い主として愛情を注いでいる点は好感が持てる。
エディは毛並みが整っており、健康的な体格から十分に食べさせられていることが見て取れた。
「ちょっと触っても大丈夫ですか?」
「そりゃ、もちろん。エディ、一緒にトリュフを採りに行ったマルクくんだぞ」
「ワンッ」
サミュエルが促した後、エディは楽しそうに短く吠えた。
こちらが姿勢を低くして近づくと、撫でてほしそうに寄ってくる。
「ところで、バラムの町ではあんまり犬を見かけませんね」
「それなら、犬を売っているのは都市部だけだからだよ。禁じられているわけではないけど、バラムみたいに周囲に壁がない上に野山が近い町ではいい顔はされないだろうね。逃げた犬が野犬化したら大問題だから」
「ああっ、なるほど」
本格的に犬を飼おうと考えたことがないため、そういったことは初めて聞いた。
過去に聞いたことがあるかもしれないが、日常的に考えるようなことではない。
「トリュフ採りは競争率が高いけど、狩猟はけっこう狙い目だから、相棒に必要になった時は声をかけてよ。信用できる業者を紹介する」
「狩猟はいいですね。シカの肉は好きなんですよ」
「いいね、シカ肉」
俺はエディをもう一度撫でてから、サミュエルと別れた。
朝からいい気分だと思いつつ、目的地に向かって歩いた。
レストランに到着すると、立派な花飾りが入り口に置かれていた。
開店祝いに贈る文化はないため、町長辺りが取り寄せて設置したのだろう。
店が始動する空気を感じつつ、店内へと足を運んだ。
「おはよう、マルクくん」
「おはようございます」
声のした方に振り向くと、町長自らテーブルを拭いていた。
彼の近くでは給仕係も一緒に準備を進めている。
「プレオープンは好調だったから、今日もよろしく頼むよ」
「はい、頑張ります」
町長に会釈をして、給仕係にも声をかけてから調理場へと移動した。
荷物置き場で身支度を整えてから、在庫確認のために簡易冷蔵庫を開く。
「トリュフは常温保存で、冷蔵保存してある分のストックは十分っと」
うんうんと二、三度頷いて扉を閉めた。
今度はかまどに火をつけておくか確認するために向かう。
「マルクさん、おはようございます」
「あっ、おはようございます」
パメラが先に来ていた。
彼女はかまどの手入れをしている。
「今朝は早いですね」
「従業員の皆さんが私の負担が減るようにしてくれて、こちらを優先しても大丈夫になりました」
そう話すパメラの顔は誇らしげに見える。
彼女の気持ちは十分に理解できるものだった。
「うちの店も似たような感じです。新しく入った人たちがどんどん仕事を覚えて、最近は開店前の準備まで任せられるようになって」
「従業員の成長を見られるのは経営者の醍醐味ですね」
「あははっ、言われてみればたしかに」
焼肉店を始めた頃を思えば、ここまで進展することは予想できなかった。
それに同じ経営者同士で意見を交わせるようになることも。
「話の途中ですみません、今日の予約の話をしてもよろしいでしょうか?」
「はい、大事なことなので、続けてください」
今回はトリュフという高級食材を使うこと、遠方から足を運んでもらうことを考慮して、完全予約制をすることになっている。
期間限定とはいえ、バラム随一の高級店が誕生したことになる。
「開店初日で評判が出ていないことで、まだ様子見をされていたり、そもそも知らなかったりという状況みたいです。ただ、王都には私やマルクさんの顔見知りがいるので、興味を示す方がちらほらといるように聞きました」
「そうですね。王城の関係者に何人かいます」
大臣のカタリナ、城仕えのブルームに優れた衛兵のリリア。
彼らの顔をすぐに思い浮かべることができる。
「……それでいきなり高貴な方がいらっしゃるのですが、カタリナ様が来られるそうです」
「えっ、カタリナが来るんですか!?」
「はい。カタリナ様とお連れの方がもう一名と記載がありました」
「もう一人……誰だろう」
考えてみても答えが出るはずはなかった。
誰が来るにせよ、万全の準備をして備えたい。
「その後に地元の方が一組、予約が入っています」
「とりあえず、合計二組分の下準備が必要ですね」
「開店する時間にはクレマンさんとベランさんも来てくださるので、そこまでバタバタせずに済むと思います」
パメラは意見を述べてから、ホッとしたような表情を浮かべた。
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