異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

文字の大きさ
263 / 555
トリュフともふもふ

トリュフ料理へのアドバイス

しおりを挟む
 作業に区切りついたため、小休憩となった。
 それぞれ冷水を飲んだり、椅子に腰かけたりして休んでいる。
 使用済みの調理器具が残っているが、この後に下がってくる食器とまとめて洗ったとしても、そこまで時間はかからないだろう。

「来賓は町の関係者みたいですけど、今回の手応えはどうですかね」

 俺とパメラは調理台にもたれかかるようにして、小休止していた。
 特に意図はなく、彼女に問いかけた。

「口に合わないということはないでしょうが、どんな感想になるかまでは予想できません。本番は遠くの町から見知らぬ人が訪れるのなら、今日の時点で意見を聞いておける方が安心します」

「うんうん、それはもっともです。遠方から来てくれるのに、いい加減な料理は出せませんよね」

 パメラの言葉に頷きつつ、グラスに入った水を口に含んだ。
 慌ただしかった名残りで火照った身体に、透き通るような清涼感が注がれる。

「――今日の料理人はいるかい」

 ホールの方からこちらへ呼びかける声が聞こえた。 
 何ごとかと視線を向けると、見知らぬ中年の男が料理を出すための提供台のところに立っていた。

 俺とパメラは互いの顔を見合わせた後、同時に立ち上がって、男の方に近づいた。
 招待されたうちの一人のようで、高級感のある衣服を身につけている。

「私と彼がそうですが、何かご用でしょうか?」

「そうか、君たちか。とても美味しかった、十分に満足している」

「そうでしたか、ご丁寧にありがとうございます」

 二人同時に話すわけにもいかず、パメラに対応を任せるかたちになった。

「トリュフ料理に目がなくてね、アスタール山で採れるものを食べることもある。差し出がましいかもしれないが、今後のために伝えておきたいことがある」

「おやっ、それは何でしょうか?」

 パメラは招待客を相手にしても、ほどよい丁寧さで接している。
 卑屈になりすぎず、かといって無礼に取られるような態度もない。

「おそらく、パスタの面が少し太いと思う。ソースにパスタが絡まりきらず、ちょっとばかし薄味に感じられた」

「それは申し訳ございません。ご教授頂き、ありがとうございます」

「いやいや、文句が言いたいわけじゃない。今後は王都の方から舌の肥えた者が来ることもあるだろう。そのことを考えるなら、料理は最善であるに越したことはない」

「「ありがとうございます」」

 俺とパメラは同時に感謝を述べていた。
 目の前の男から気遣いを感じた故の言葉だったが、彼女も同じように受け取ったのだろう。 

「それじゃあ、邪魔したね。君たちのことを応援しているよ」

 男の名前も立場も分からなかったが、有益に助言をもらえたと思った。 

 それから少しして、トレーを手にした給仕係がホールからやってきた。

「お疲れ様です。食事を終えた方の食器を下げていきます」

「はい、了解です」

 調理場の方に食器の乗ったトレーが一つずつ戻ってきた。
 近づいて確かめると、食べ残しはほとんど見られなかった。 

「トレーが溜まったら、片づけを始めますか」

「ええ、そうしましょう」

 パメラの後にクレマン、ベランの二人に声をかけると、彼らも同意を示した。
 その後、返却された食器を置くためのスペースに、続々とトレーが運びこまれてきた。

「六人分揃いました。それじゃあお願いします」

 洗い場で食器や調理器具を洗う係、先に仕分けたり、食べかすを捨てたりするか係に分かれた。
 この場にいる全員が経験者ということもあり、自然と分担するかたちになった。



 片づけは順調に終わり、クレマンとベランの二人には帰ってもらった。
 人数が少なくなり、静かになった調理場に俺とパメラは残っている。

「町長さんから食材は好きに使っていいと伺っているので、細いパスタを試作してみようと思います。よかったら、味見をお願いできますか?」

「はい、もちろんです。手伝えることがあったら、言ってくださいね」

「ふふっ、お気遣いありがとうございます」

 パメラは温かい笑みを見せた後、調理を開始した。

 用意する量が多いわけではないので、手伝えることは少ないと思われる。
 何もしないのも手持ち無沙汰なため、トリュフを洗って下ごしらえを手伝うことにした。

 結局、アスタール山ではまとまった量の白トリュフが採れるようで、この店のストックもそこそこあった。
 今から試食に使うぐらいなら、在庫切れになってしまうことはないだろう。
 パメラの様子を見守りつつ、こちらはトリュフペーストの味つけを調整しながら待った。
  
 やがてパスタがが完成して、二人分の皿が用意された。
 俺たちは順番にトリュフをカッターで削ずって振りかけた。

「何度嗅いでも飽きない香りですね」

「ええ、高級食材の一つであることに納得です」

 調理台の一角に陣取って、パスタの試食を始めた。
 麺とソースが口の中に入ると、バターとトリュフの風味が組み合わさる。
 芳醇な香りに思わず、身体の力が抜けてしまいそうだった。 

「……あっ、麺が細い方が味が濃く感じますよ」

「私も同じ感想です。今回の方が風味がしっかりしているので、今度からはこの太さで作ろうと思います」

「料理のクオリティが上がって、よかったですね」

「ちょっとした違いなのですが、こういう変化につながるとやる気が出ます」

 パメラは普段の言葉よりも、力がこもるような言い方だった。
 そこまで表に出すことはないものの、料理に対して熱い人なのだと再認識した。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

処理中です...