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最終決戦
恐怖と温もり
しおりを挟むゲームでのハウライトの設定は、従順で無表情なルチルレイの守護聖獣。だけど、本当は消されそうになったオブシディアンが、ハウライトの力を貰って光の守護聖獣として従っていただけだった。
ルチルレイの初心者に優しい設定だと思っていた好感度半分からスタートは、オブシディアンの魅了の魔法の効果で、ルミエールルートにするには好感度を下げないといけない場合もあったんだけど、ギベオンがルチルの守護聖獣になったのなら、好感度は0スタートとなるわけで…。
(ルミエール様が早くに出てきたのも、『魔』に二人が憑かれたのも、光の守護がなかったから)
ゲームで最後にアメーリアが襲われたのは、アメーリアの魔力が目当てのオブシディアンだったのね。バッドエンドって言われているくらいに、その時のアメーリアは闇の属性持ちで、一番になれない劣等感や殿下達に認めて貰えない焦燥感とルチルへの憎しみでいっぱいだったから。
『アメーリアの魔力のおかげで、僕は本当の姿を取り戻す事が出来た。』
「では、アリアを利用したというのですか?オブシディアン。僕と一緒に生まれてきた兄弟ではないのですか!?」
『僕は、君から産まれた不要物。塵の成れの果て。光から不要な闇が生まれ、それは魔となる。逆もまた然り、言ったよね?闇の狼は既に其処にいるのだと。信じたのなら、それは君が愚かなだけだよハウライト』
「そんな、オブシディアン!」
『煩いよ、光の守護聖獣』
冷たく言い放ったオブシディアンの手から、黒い塊が現れそのままハウライトへと飛んで行く。当たる前にハウライトは避けたけど、塊がぶつかった地面はまるで爆弾でもつかったかのように抉れていた。
クスクスと笑うオブシディアンの姿に、危機感を感じたのはその場にいた全員だったのか、背後に気配を感じていたジャスパー様達の気配が消えている。アズライトの緊張感も空気から伝わってくる。
「ハウライト様、危険です此方に!」
『…チョロチョロと目障りだ』
「駄目!オブシディアン!」
ハウライトを助けようとしたアズラにも黒の塊が飛び、アズラはハウライトを抱きしめ後方へと飛ぶ。地面が抉れ土が飛び、それに気を取られていると、私の目の前にはいつの間にかオブシディアンがいて、真っ直ぐに手を差し出してきた。
(微笑みを浮かべているのに、どうして貴方はそんなに泣き出しそうなの…?)
『アメーリア、僕と一緒に行こう?』
「…え?」
『僕はアメーリアが大好きだ、愛しているといっても過言ではないよ。アメーリアを僕から離すなんて出来るはずがないよ、これは決められた運命なんだよアメーリア』
「オブシディアン……」
呆然としてしまう私に、オブシディアンはその底を感じさせない黒色の瞳で見つめ続けてくる。私が手を伸ばすまで、其の手を引こうともしない、力強い意志を感じる。
屋敷でも今までも、オブシディアンは『好き』という思いを伝えてくれていたけど、それは子供が親を好きだというのと同じ感覚だと思ってた。これはそれの延長なんだろうか、それとも、オブシディアンとしての真っ直ぐな思いなの?
「わ、私…は…」
『来るよね?アリア、僕がお願いしているんだから』
オブシディアンの言葉に、ふらりと意識が持っていかれる。哀しそうな笑顔を見てしまったから?にっこりと微笑みを浮かべて、甘い声で囁きかけてくるオブシディアンへと、私はゆっくりと震える手を伸ばして――
「アリア!駄目だ!」
「…っ!ぁ、アズラ…私」
「しっかりして、引っ張られちゃ駄目だよアリア」
腰に回された腕の強さと、抱き締められる苦しさに霞んでいた意識が元に戻る。今のは闇魔法の魅了とは違う、意識だけじゃなく、何もかも持っていかれそうになるくらいの。
(怖い――)
これが本気を出したオブシディアンの力なのかと、怖くなった。確かにオブシディアンの闇堕ちしたルートは知っていたけど、アメーリアは自分の意志でなく魔力を奪われた最後ということ?
『未熟な子猫の分際で、邪魔をするな』
ゾクリと、背中を冷たいモノが伝っていく。オブシディアンを取囲んでいた『魔』の気配が一層濃くなって、息が苦しくなって立っていられない。カタカタと震える手を、温かくて大きな手がゆっくりと覆い握り締められる。顔を上げれば、優しいエメラルドグリーンの瞳が見つめていた。
「大丈夫だよ、アリア。僕が絶対に渡さない」
「アズラ…」
アズラから伝わってくる少し高めの体温が、恐怖に震えていた身体を温める。今まで『魔』の気配と何度も対峙してきたのに、こんな恐怖は初めてで混乱していた気持ちが溶けていく。
甘えるように摺り寄せられる頬が温かくて、一人じゃないと足に力が籠もってくる。私は私。ゲームのアメーリアではない。
「ごめんなさい、オブシディアン。私は貴方の手を取ることは出来ない」
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