攻略なんてしませんから!

梛桜

文字の大きさ
69 / 71
あなたの隣

守護聖獣の壁

しおりを挟む



『それなら、アリアの守護獣達の前で言ってみよ』

 アズラの言葉に真っ白になっている私の背後に、急に現れたのは猫型のハウライトを抱えた人型のギベオン。抱えられているハウライトは凄く不満顔をしているけど、走りよっていったオブシディアンには尻尾を振って答えて見せていた。

「ハウライト様は分かりますけど、どうしてギベオン様まで?」
「それは…」

 ハウライトが猫型をしているのは、運びやすいからではなく、猫型のほうがオブシディアンと意思疎通が出来るからです。猫語ですね。最もな指摘をしているアズラですが、唇を尖らせて拗ねてますとやってると、やっぱり可愛いアズラだとホッと安心する。

(…安心?困ってたわけではないんですけど…?あれ?)

 ギベオンと話をしているからか、冷静になって考えてみると、どうしてあんなに動揺していたのか不思議になってしまう。今までの可愛いアズラのままだと安心して、大人になった、いえ、男だと感じてしまったその瞬間、頭が混乱してしまった……。

「ええええええー!?」

「アリア、お前聞いているのか?」

「は?え?」

「聞いていなかっただろう?お前の闇属性が消えてい無かった原因だ」
「あ、ああ。そうですわね、オブシディアンの影響ではないのですか?」

 首を傾げる私に、『やっぱり聞いていなかったのか』と呆れた顔をしたギベオンですが、これは悪いのは私なので素直に謝りました。ごめんなさい、アズラに気を取られてたんです。

「それで、原因でもありましたの?」
「オブシディアンは完全に只の黒猫だ、お前の闇属性の力は、我のものだといっている」
「……はぁ?」

 訳が分からないと首を傾げる私に、ギベオンは口元に笑みを浮かべて、近付いてきた。ってちょっと待て!必要以上に、近い近い近い!!
 耳元にギベオンの息が掛かる距離、この狼は相変わらず対人距離と言う名のパーソナルスペースが近いのよ!

「何度も、貰っただろう?お前の魔力を」
「…奪ったの間違いでは有りませんの?」

 楽しさが混じる声色に、からかっているのだと睨みつける。確かにルチルが『魔』に憑かれていた時期に私の魔力を与えた事はあるけど、それで私にもギベオンの闇属性の加護がついたと?まぁ、好き勝手に顎で扱き使っていたのは反論しない。

「ルチルに比べれば、アリアは守護聖獣の主人として的確だったからな。我の加護も自然と身についたのであろう」
「だからって、アリアに近付いてもいいとはなりませんから!離れてください、ギベオン様」
「アズラ!」
「聖獣様の守るべき主人であろうとも、アリアの事は譲りません!」

 勢い良くギベオンから引き離されて、今度はなんとアズラの腕の中です。


(ぎゅっとだきしめられてるううううぅっ!)


 今まで考えてもいなかった、ふわりと香ってくる爽やかな草原のそうな良い匂いとか。力強く、でも、私が痛くないように加減されている腕だとか。


 もう、私の頭は真っ白とおり越えてオーバーヒートです。


 意識をしてしまったんです。


 ゲームだと、有りもしなかった壁を自分で作っていた。前世と同じ様に、画面の向こう側に自分から入って、誰の言葉も本気にしようとしなかった。だから、家族だけは安心していたんです。アイクお兄様もラーヴァも家族だからと、家族だから全力で愛してもいいのだと。

 アズラは伯爵家の二男で幼馴染で、今では騎士科の将来有望株で

 私とオブシディアンを、最後まで『魔』から守ってくれた人で、私の心を守ってくれた人。

「アリア?」
「…っ!!」

 呼ばれる名前に、一気に体温が上昇した。

(わたし、私、どうして今まで平気でいられたの!?)

 温かい腕の中、耳に心地良い大好きな声、優しいエメラルドグリーンの瞳、惹き付けてやまない愛しいもふもふの耳に尻尾。こんなにもドストライクな人が現実とか!!
 私の態度の変化をダイレクトに感じたのか、アズラが瞬きを繰り返して、瞳がキラキラと輝きだす。あ、ちょっと待って、これ、駄目なやつ。


『にゃあーん』
『……仕方ありませんね、闇の狼、引きますよ』
「守護獣の役目はいいのか?」
『うにゃ』
『ですね、馬に蹴られるそうですよ』
「仕方無い、此方も忘れているようだからな」

 耳に届いた呆れた声、ぎこちなく首を動かして手を伸ばす。待って、待って三人共!私のHPはもう0なんですよ!置いていかないで、オブシディアン、ハウライト!!いつもは人の話も聞かずに連れ去るのに、何で空気読んでるんですか、ギベオン!

 私の味方は何処にもいないのですか!!

    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

処理中です...