攻略なんてしませんから!

梛桜

文字の大きさ
70 / 71
あなたの隣

いつまでも



 心の中でオブシディアンとハウライトを引きとめても、新しく守護聖獣となったギベオンに、薄情者!と罵っても、私を抱き締めるアズラの腕は緩むこともなく、それどころかグルグルと喉を鳴らしてるし!猫か!あ、猫科だったわ!
 しかも頬をスリスリと摺り寄せてくるし、ニコッと笑みを浮かべてまたゴロゴロとされたら

 これ、可愛がったらいけないのどんな拷問ですか!?

(リアルに耳と尻尾があるから!可愛い、あざとい!何よこれ、私を萌えころす気なの!?)

 もう頭の中は混乱してますよ!
 だって、キラキラした瞳で期待の眼差しをむける猫科の可愛いこと可愛いこと。私が何に弱いかなんて知り尽くしてるんだから、幼馴染みですものね!昔からよくモフモフモフモフと飽きること無く可愛がってきましたものね!

「…~っ」
「…アズラ、貴方何を笑ってますの?」
「ふふっ、だって、ごめん。アリアが凄く可愛いから」
「はぁ!?」

 一人混乱しているのに、アズラがプルプル震えていると思ったら、私の肩に顔を埋めて笑いを堪えて居ました。じとっと睨みつけても、前みたいにオロオロしないのが不満です。

(昔は『可愛い』とか『大好きですわ』って口癖みたいに言ってもオロオロ、オドオドして可愛かったのに!解せぬ)

「アリアが、やっと僕を見てくれたってつい嬉しくて」
「私は昔からアズラを見ていましたわよ?」
「そうじゃなくて、昔は可愛い愛玩動物とか、弟のラーヴァ様を可愛がってる感じと一緒だったんだよ」

 アズラの言葉に『はて?』と首を傾げましたが、よくよく考えてみると、アズラだけじゃなくてお兄様も含めて関係者全員、近所のおばちゃんみたいな感覚で微笑ましく見て居ましたわ。ラーヴァにいたっては、我が子というか孫みたいな感覚で甘やかして可愛がってましたわね。
 納得したと手をぽんと叩くと、苦笑を浮かべるアズラ。仕方無いじゃないですか、自覚が無かったとはいえ、私はずっと意識が前世の私だったのです。この世界で生きるといいながら、全然覚悟なんてしてい無かったのです。

(オブシディアンが只の子猫になって、前世の夢から醒めたのですよ)

「やっとね、アリアが僕を男だと見てくれたって嬉しくなったんだよ。意味、分かる?」
「私はそんな馬鹿では有りませんわ、アズラは昔から男の子ではありませんか」
「うーん…、ちょっと違うんだよね」

 首を傾げつつも、ふわりと浮かぶ体に慌ててアズラの首に腕を回すと、またにっこりと笑みを浮かべて歩き出す。誰かが見ていたらと思うけど、今は試験の練習で誰も他人事ではないと思い出し、コツンと頭をぶつける程度で『怒ってますよ?』と意思表示しました。

「アリア。アメーリア=アトランティ様、私は貴女をお慕い申しあげております。どうか、私の妻になって頂けませんか?貴女の為なら、私は何でも出来ます。生涯貴女を御守りしたいのです」

 見つめる瞳は優しいのに、真剣な表情と言葉に、やっと落ち着いたはずの体温が上昇する。驚きに目を瞠っていた所為か、ぽろぽろと涙が勝手に零れ落ちていく。

「あ、あず、アズラっ」
「泣かないで、アリア」

 アズラの柔らかい舌先が、零れる涙を舐め取っていく。猫と違ってざらざらしてないと、見当違いな事を考えて逃避行したいのも山々なのですが、私の頭はもう真っ白で、何も考えるなんて出来なくて、心の赴くまま、そっとアズラの唇へと口付けたのです。

「…っ」
「アリア、好き。愛してる」

 触れるだけの口付けをして、逃げようとした私の頭をそっと阻止して、今度はアズラから深く口付けられる。舌先が唇を押し開き、舌先が私のそれをザラリと擦り合わせ、絡め取られる。
 息苦しさよりも気持ちよさが勝ってしまって、魔力譲渡とは全然違う幸福感に胸が一杯で、飢えた獣が水を欲するかのように、何度も角度を変えて口付けられるのを止める事が出来なかった。

「ふ…っ、ぁ」
「ん、アリア…っ、ね、もっとしていい?」
「…アズラ」

 離されて繋がる糸を舐め取って、アズラの唇が首筋へと降りていく。項を甘く噛まれて、舌を這わせて、強請る視線を向けられてしまっては、どうやって断れというのですか。

(私は、昔からアズラのお強請りには弱いのに…っ)

 制服の胸元を寛げて、首元が緩やかになる。熱い息が首筋に掛かって、激しい痛みを項に感じた。

「…っ!」
「誰にも渡さない、アリアは僕のだからね」

 じくじくと痛む首筋、ぺろぺろと舐め続ける舌先が伝う何かも舐め取っていく。獣人の習性をこんな時に思い出してしまって、お兄様やラーヴァになんて言えばいいのかしらと考えていたら、拗ねた顔をしたアズラに又口付けられてしまった。

「僕以外の他の男の事、考えないで」
「兄弟も駄目なの?」
「駄目、獣人は嫉妬深いんだからね。アリアと一緒にいられるのなら、僕は氷漬けにだってなるよ」
「氷漬けは、困りますわね。私からも、お願い致しますわ」
「アリア大好き」

 微笑みを交わし、時折感じるアズラの舌先の擽ったさに幸せを感じ、そのままテンションが上がってしまったアズラに抱き上げられたまま、アトランティ家へと運ばれてしまったのです。


あなたにおすすめの小説

異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない

木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。 生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。 ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。 その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした

真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。 ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。 ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。 推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。 ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。 けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。 ※「小説家になろう」にも掲載中です

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない

As-me.com
恋愛
完結しました。 自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。 そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。 ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。 そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。 周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。 ※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。 こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。 ゆっくり亀更新です。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。