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あなたの隣
いつまでも
心の中でオブシディアンとハウライトを引きとめても、新しく守護聖獣となったギベオンに、薄情者!と罵っても、私を抱き締めるアズラの腕は緩むこともなく、それどころかグルグルと喉を鳴らしてるし!猫か!あ、猫科だったわ!
しかも頬をスリスリと摺り寄せてくるし、ニコッと笑みを浮かべてまたゴロゴロとされたら
これ、可愛がったらいけないのどんな拷問ですか!?
(リアルに耳と尻尾があるから!可愛い、あざとい!何よこれ、私を萌えころす気なの!?)
もう頭の中は混乱してますよ!
だって、キラキラした瞳で期待の眼差しをむける猫科の可愛いこと可愛いこと。私が何に弱いかなんて知り尽くしてるんだから、幼馴染みですものね!昔からよくモフモフモフモフと飽きること無く可愛がってきましたものね!
「…~っ」
「…アズラ、貴方何を笑ってますの?」
「ふふっ、だって、ごめん。アリアが凄く可愛いから」
「はぁ!?」
一人混乱しているのに、アズラがプルプル震えていると思ったら、私の肩に顔を埋めて笑いを堪えて居ました。じとっと睨みつけても、前みたいにオロオロしないのが不満です。
(昔は『可愛い』とか『大好きですわ』って口癖みたいに言ってもオロオロ、オドオドして可愛かったのに!解せぬ)
「アリアが、やっと僕を見てくれたってつい嬉しくて」
「私は昔からアズラを見ていましたわよ?」
「そうじゃなくて、昔は可愛い愛玩動物とか、弟のラーヴァ様を可愛がってる感じと一緒だったんだよ」
アズラの言葉に『はて?』と首を傾げましたが、よくよく考えてみると、アズラだけじゃなくてお兄様も含めて関係者全員、近所のおばちゃんみたいな感覚で微笑ましく見て居ましたわ。ラーヴァにいたっては、我が子というか孫みたいな感覚で甘やかして可愛がってましたわね。
納得したと手をぽんと叩くと、苦笑を浮かべるアズラ。仕方無いじゃないですか、自覚が無かったとはいえ、私はずっと意識が前世の私だったのです。この世界で生きるといいながら、全然覚悟なんてしてい無かったのです。
(オブシディアンが只の子猫になって、前世の夢から醒めたのですよ)
「やっとね、アリアが僕を男だと見てくれたって嬉しくなったんだよ。意味、分かる?」
「私はそんな馬鹿では有りませんわ、アズラは昔から男の子ではありませんか」
「うーん…、ちょっと違うんだよね」
首を傾げつつも、ふわりと浮かぶ体に慌ててアズラの首に腕を回すと、またにっこりと笑みを浮かべて歩き出す。誰かが見ていたらと思うけど、今は試験の練習で誰も他人事ではないと思い出し、コツンと頭をぶつける程度で『怒ってますよ?』と意思表示しました。
「アリア。アメーリア=アトランティ様、私は貴女をお慕い申しあげております。どうか、私の妻になって頂けませんか?貴女の為なら、私は何でも出来ます。生涯貴女を御守りしたいのです」
見つめる瞳は優しいのに、真剣な表情と言葉に、やっと落ち着いたはずの体温が上昇する。驚きに目を瞠っていた所為か、ぽろぽろと涙が勝手に零れ落ちていく。
「あ、あず、アズラっ」
「泣かないで、アリア」
アズラの柔らかい舌先が、零れる涙を舐め取っていく。猫と違ってざらざらしてないと、見当違いな事を考えて逃避行したいのも山々なのですが、私の頭はもう真っ白で、何も考えるなんて出来なくて、心の赴くまま、そっとアズラの唇へと口付けたのです。
「…っ」
「アリア、好き。愛してる」
触れるだけの口付けをして、逃げようとした私の頭をそっと阻止して、今度はアズラから深く口付けられる。舌先が唇を押し開き、舌先が私のそれをザラリと擦り合わせ、絡め取られる。
息苦しさよりも気持ちよさが勝ってしまって、魔力譲渡とは全然違う幸福感に胸が一杯で、飢えた獣が水を欲するかのように、何度も角度を変えて口付けられるのを止める事が出来なかった。
「ふ…っ、ぁ」
「ん、アリア…っ、ね、もっとしていい?」
「…アズラ」
離されて繋がる糸を舐め取って、アズラの唇が首筋へと降りていく。項を甘く噛まれて、舌を這わせて、強請る視線を向けられてしまっては、どうやって断れというのですか。
(私は、昔からアズラのお強請りには弱いのに…っ)
制服の胸元を寛げて、首元が緩やかになる。熱い息が首筋に掛かって、激しい痛みを項に感じた。
「…っ!」
「誰にも渡さない、アリアは僕のだからね」
じくじくと痛む首筋、ぺろぺろと舐め続ける舌先が伝う何かも舐め取っていく。獣人の習性をこんな時に思い出してしまって、お兄様やラーヴァになんて言えばいいのかしらと考えていたら、拗ねた顔をしたアズラに又口付けられてしまった。
「僕以外の他の男の事、考えないで」
「兄弟も駄目なの?」
「駄目、獣人は嫉妬深いんだからね。アリアと一緒にいられるのなら、僕は氷漬けにだってなるよ」
「氷漬けは、困りますわね。私からも、お願い致しますわ」
「アリア大好き」
微笑みを交わし、時折感じるアズラの舌先の擽ったさに幸せを感じ、そのままテンションが上がってしまったアズラに抱き上げられたまま、アトランティ家へと運ばれてしまったのです。
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