攻略なんてしませんから!

梛桜

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二人のヒロイン

試験の前に

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 イベントでもある試験とは、学園に通っている学生には必ず有ると言っても過言ではありません。クラスター学園にも、学科別にテストがあるのです。貴族科でしたら規則としてのマナーを重点に、歴史や外交学に語学のテストを。騎士科は武術や乗馬のテスト、一般科は計算や読み書きなど、其々分かれて実施されます。
 其の中でも変わった試験といえば、魔法特進科と騎士科合同で行われる『合同実技試験』これがゲームでのイベントの一つなのです。

(確か好感度の高い相手と一緒にチームを組む設定だったから、その時の好感度を知るには丁度いいイベントだったんだけど、私は絶対ジャスパー様と一緒のチームになると思うのよね…)

 本当なら、このイベントで初めてアズライト様に出逢える予定でした。もう出会うどころか幼馴染みにまでなってますけどね!
    リモナイト殿下との好感度を上げて、ジャスパー様との好感度をほんの少し足りない程度にするのが決め手です。そうすると、ジャスパー様がアズライト様を『リモナイト様の護衛役』として紹介してくれるのが公式設定なんです。本来なら、リモナイト殿下はラズーラ殿下と同じ組になって、ジャスパー様が護衛という組み合わせですから。
 今でも思い出せます。白黒の丸い耳に、縞々の尻尾を揺らして、恥ずかしそうに『初めまして』と、笑みを浮かべるあの画像。偶然見れた初回のターンで、あの可愛い微笑みに堕ちたのです。

(スチルのアズライト様、本当に可愛かった…。しかも声優さんの演技がまたツボでね!いやー、萌えたのなんのって)

「上級マナー講座のテストが…」
「其の前に、合同試験に一緒に組んでくださる方を…」

 放課後のカフェテリアでは、近付いた試験の話で持ちきりです。魔法特進科は、マナーのテストもしっかりあります。なんたって、王宮に就職出来る可能性がありますからね。
    上級貴族なら、お抱えの護衛騎士がいたりもしますので、子息をこの学園に入れて主従で組を作ったり、一般民同士で声を掛け合ったりと、こういった交流もこの試験の醍醐味といえます。

(上手くいけば、将来の就職先になったりもしますからね…。マナーと実技を落とすと最悪ですよ)

「失礼アトランティ侯爵令嬢、合同試験ですが、もう護衛は見つけられましたかな?」
「……」
「にゃあ」
「うにゃあ」

 手にしていたティーカップをそっと置き、視線だけを向ける。何かを期待しているのかドヤ顔をしているけど、この人、誰かしら?
    学年関係無く声を掛けられるので、上級貴族の動向は逐一監視されているのが嫌なところですね。魔法特進科は合同試験だけではなく、筆記試験だってあるんですから、知らない騎士科の方に構ってる暇なんてありません。

(あ、でも女の子だったら考えたなぁ。かっこいいじゃないですか、男装の麗人)

 私に声を掛けてきたのは、騎士科の三年生でしょうか?見知っている貴族の方々の顔を思い出しても出てこないので、完全に知らない方です。そもそも声を掛けるなら名乗って欲しいです。
    迂闊に言葉を交わしたらアイクお兄様に氷の微笑みをもって怒られるんですよね。侯爵令嬢ですから。

(返事したほうがいいとは思うんだけど、悪役令嬢みたいな台詞しか出てこないわ。困った)

「アトランティ侯爵令嬢?」
「アリア、お待たせ」
「リモナイト殿下、授業お疲れ様で御座います」
「り、リモナイト王子…!?」

 いつもならにっこりと天使の微笑みを浮かべているのに、今のリモナイト殿下は、凍えそうな視線を騎士科の生徒に向けています。

(あら?珍しく機嫌が悪いですわね。まさにツンデレのツンだけ王子)

「無礼者、私を誰だと思っている?名も名乗れぬ者など、消え失せるがいい」
「し、失礼致しました!!」

    座っていた椅子から立ち上がり、礼をとる私に続いて騎士の礼でも取って名乗ってたら違ったのになぁ。
 失礼しましたと蒼白な顔をして逃げ出した騎士科の三年を見送ると、にこっと天使の微笑みを向けたリモナイト殿下お流石です。
    お茶とお菓子を用意して座りなおし、さて、と切り換えます。今日はラズーラ殿下とアイクお兄様を待って、合同試験の話し合いなのです。

「リモナイト殿下は、既にラズーラ殿下と組になられるのでは?」
「それも思ってたんだけどね、やっぱりアリアとも一緒にやりたいなって」
「嬉しいお申し出なのですが、守護聖獣が人数に組み込まれてしまう関係で、私一人で三人分になってしまいますの。とても分が悪いですわ」
「でも、アイクとは一緒に組むんでしょ?」
「はい、私だけでは心配だからと、アイクお兄様が仰って下さって。それと、ジャスパー様が剣撃要員について下さる予定ですわ」

    これも、公式だと私はギベオンだけだったので、二人分だったのよね。アイクお兄様と攻略対象者の好感度が高い順二人、それにアズラがお決まりのベストメンバーでした。

「六人での組だから、僕も入れるのにー」
「リィにはお願いしただろう?私の代わりに、モルガ男爵令嬢を誘って欲しいと」
「ラズ兄様」
「ラズーラ殿下、アイクお兄様お待ちしておりました。只今お茶のご用意を致しますわ」

    咄嗟に立ち上がり礼をするのが染み着いているのは、やはり我が家の美しくてお優しいけど、マナーには厳しいお母様の教育の賜物ですね。


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