22 / 71
二人のヒロイン
組み分けしましょう。
しおりを挟むでも、本当なら私だってルチルレイと一緒にチームを組みたかったですよね。ゲームの中ではヒロイン同士が組みになるなんて、絶対に出来ませんでしたから。今回だってルチルレイに魔が獲り憑いているのでは疑惑がなければ、対戦相手としてエントリーしませんよ。
(現実になったんだから、女の子でキャッキャしてもいいじゃない…、させてよ!このゲームは確かにヒロイン同士の友情EDもあったけど、すっごい大変だったんだから!そのくせシナリオは大変薄味でした。物足りないいいい!!)
「他にも組み込みたい人間はいるが、目的を考えるとそうそう引き込めないな」
「魔法特進科と騎士科のみですからね、ジャスパーに相談をして騎士科の誰かを護衛につけましょうか?」
「そうだな…、ジャスパーとアイクの力を見たい目的もある。騎士科の誰かでもいいが、去年のように貴族科から引き込んで名前だけを入れればいいだろう」
試験のメンバー登録用紙と、紙に書き出した名前を前に意見を出し合うラズーラ殿下とアイクお兄様を眺めていると、向かいに座っているリモナイト殿下がにっこりと微笑みを浮かべて、じっと私を見つめているのに気がつきました。
「…リモナイト殿下?」
「リィでいいって言ってるのに、いつになったら呼んでくれるの?」
「いえ、あの、それは学園ですので…」
ラズーラ殿下もリモナイト殿下も、婚約者の座を開けたまま学園に通っているのです。迂闊に噂を立てられてしまっては、公式の設定補正に乗ってしまうかもしれないじゃないですか!そんな怖いこと出来ないんです。
特に親しく名前を呼び合うのは、好感度が高い証拠なのです。まぁだからって私だけが頑なに『リィ様』と呼ばなくても、リモナイト殿下がアリアと呼んでいる時点で好感度上がってますよって言ってるようなもんですけどね。餌付け、しすぎたかしら?
いやでも、本当に偏食ばっかりでやせっぽちだし病弱だしで、困り果ててた王妃様に涙ながらに頼まれてしまっては、流石に作ってるのは小娘ですのでって断れないじゃない?精神年齢それなりですし、母の苦労も心配もわかるから尚更断れないじゃない!
(でもでも、私が目指しているのは、騎士団専属魔術師EDです!)
リモナイト殿下の蕩けるような甘い微笑み攻撃を受けつつも、表面はニコニコと笑顔で受け流し、心の中では呪文のように目標を唱えて居ました。そうこうしていると入り口の方から聞こえて来る足音と、視界に入ってくる私の癒しでもあるモフモフがやってきたではありませんか!オブシディアンとハウライトも十分癒しのモフモフですが、アズラはまた別です。
「騎士科の授業終わりましたー!」
「お待たせして申し訳ありません、アズラちゃんと挨拶しないか!」
「言わなくてもするから大丈夫だってば!ジャスパー兄上みたい」
「俺はグラッシュラー伯爵様からも、お前の面倒を頼まれているんだ。学園で大目に見てもらっているうちに、しっかりとだなー」
バタバタとやってきたのは、騎士科のジャスパー様とアズライトです。挨拶をしつつでも、しっかりと弟分でもあり後輩のアズラに説教をしている姿は、どこのオカンかな?あれ?ジャスパー様ってこんなに面倒見てたっけ?
頬を膨らませて、さらに尻尾が機嫌悪いですって地面をバシバシ叩いてるの可愛い。その尻尾掴みたい弄らせて欲しい!
「ジャスパー、アズライトを弄るのは其処までにしておけ。お前とリィにはモルガ男爵令嬢を誘いに行ってもらわないとな」
「はっ、申し訳ありません。ラズーラ殿下」
「それと、組み分けを少し変更したい。ジャスパーは私の方に。アイクの組にはアズライト、お前が入るように」
「ぼ、僕ですか!?」
「モルガ男爵令嬢は大型の獣人や動物が苦手だからな、アズライトは大型とは言えないが、アイクの組に接近型の攻撃手が居ないのも不利だろう?」
「ジャスパーはラズ殿下とリィ殿下の護衛ですからね、私とジャスパーの力量は別の機会にいたしましょうか」
なんと、アズライトと同じ組み分けになりましたよ!やったね!ジャスパー様と組んでラズーラ殿下の炎の魔法と本気で戦えるとウキウキしていたアイクお兄様(まさかの戦闘狂?)には申し訳ありませんが、私のテンションが上がりました。
「ええー!?アズラばっかりずるい!」
「ジャスパーとリィは先にお誘いに行っておいで、貴族科でのマナー講座も終わっているだろうから、マウシットが確保してくれているはずだ」
(仮にも女の子を確保ってラズーラ殿下、おい)
追い出すようにリモナイト殿下とジャスパー様を貴族科へと向かわせ、楽しそうに笑顔で二人を見送っていたラズーラ殿下でしたが、私と目が合った瞬間、にっこりと綺麗な微笑みを浮かべられました。
「私だって、アリアとは組みたかったんだよ?アズラはずるいよね」
「は?」
「うえええ!?」
「決められたのはラズ殿下ですよ、今更無茶を言わないで下さい」
「はいはい、アイクの妹大好きには困ったよね」
「大切な妹を、王家の婚約者候補には出来ませんからね。冗談抜きで暗殺者が押し寄せてきます」
この腹黒様よ、流石に私も暗殺者大量発生イベントは嫌ですよ。ラズーラ殿下やリモナイト殿下との妃EDを目指そうとすると、高確率でおきる魔のイベントです。侯爵令嬢のアメーリアを選択すると、問答無用で全部倒さないといけないんですよ!?令嬢設定どこいった!と叫んだのは私だけではない。
それにしても、ラズーラ殿下と好感度を上げたつもりはないのですが、アイクお兄様と仲良しって事で補正でも掛かりましたかしら?ジャスパー様はラズーラ殿下が入ると自動的に組み込まれます。氷の貴公子と炎の王子に、騎士科の代表。負ける気がしない。
心惹かれる組み分けでしたが、ルチルレイがやってきて逃げ出さないように、私とアイクお兄様とアズライトは移動する事にしました。あ、お菓子はちゃんとテーブルに設置済みです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8,244
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる