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潜む闇
捜査には代価が必要です。
しおりを挟む私の絶賛不機嫌に同意してくださっているのは、アトランティ家を貶されたアイクお兄様は勿論、可愛い可愛い弟殿下のリモナイト殿下を貶されたラズーラ殿下と、黙っては居ましたがマウシット様も結構イラついてると見た。
(腹の黒い者達を怒らせた罪は重い)
前世の私はゲームは全て攻略する派でしたから、ルチルレイのルートだって攻略はしてました。簡単だったから其処までしっかりやりこんでないですけどね、アズラもそんなに出てこなかったし。モフモフが大好きな身としましては、其処大事です。
ルチルレイルートでのルミエール様は、光の属性の神官で近寄りがたくはありましたが、静かな微笑みを浮かべて人形のように綺麗な人でした。まぁ理想的な神官だねーって感じ。其れがアメーリアルートで会ったら真っ黒のあの虫見るような目で見られた。
(好感度ゼロどころか絶対マイナスだったと思うんですよ、今回はハウライトが私に付いてたから普通の貴族への対応だったのかな?横柄・横暴だったけども)
『調べるのなら、手を貸すか?』
「出来ますの?」
『ルチルレイはアトランティ家で見てくれるのだろう?』
「それは勿論ですわ。ですけど、神殿といえば貴方の嫌いな結界がありますわよ」
「其れを突破する為に、アリアの魔力を寄こせ」
「は!?…んんっ」
瞬時に人型に変化したギベオンに顎をとられ、上を向かされたと思ったら重なる唇。この方法は嫌だと何度も言ってるのに、この駄犬が!
身体から抜けていく魔力と同時に、足から力が抜けていく。腰を支える腕に爪を立てて訴えては見るけど、なかなか離れないどころか咥内へと入り込んでくる舌先に肩が跳ねた。
「…っ、こ、このっ」
「ハウライトの光属性の魔力があれば、結界など抜けれる」
「後でお覚悟なさい、ハリセンで滅多打ちしてやるわ」
嫌みったらしく口元に笑みを浮かべ、ポンポンと人の頭を気安く撫でたかと思えば、私の拳がお腹にヒットする前にギベオンは姿を影へと隠した。くっそ逃げられたー!と怒りを出す私でしたが、ひんやりと背後からやってくる冷気に物理的な鳥肌が。
(あ、アイクお兄様の目の前で…!?しかも、ルチルレイもマウシット様もアズラもいるじゃない!?)
「アリア、さっきのは何?」
「いえ、あの…」
「ギベオンはルチルレイの守護聖獣ではなかったか?アメーリア嬢」
「も、もしかして、私…ギベオンに見放されて…」
「ち、違うのよ!全然そんなのじゃないから!落ちついてルチル!」
真っ青な顔で涙目をしているルチルを宥め、冷気を醸し出すアイクお兄様にも説明し、尻尾をたしーんたしーんとお怒りモードにしているハウライトとオブシディアンを抱き締めて、地面に埋まりそうなほどに落ち込んだアズラを慰めるのが、物凄く面倒だった。ギベオン覚えてろ!
そして其れを見て笑ってたジャスパー様とマウシット様も、いつか仕返しする。
(全部ギベオンの所為だ…!泣きたいのはこっちだ!)
「何をしている?執務室に先に戻ったのでは無かったのか?」
「ラズ殿下、リィ殿下。ルミエール様はお帰りに?」
「ああ、話を聞きもせずにさっさと帰ったよ」
溜息を零すラズーラ殿下の後ろには、落ち込んだ顔のリモナイト殿下がくっ付いています。もうこの二人に見られてなかったらいいや。うん。
「リィの光属性の魔力に、嫌味を言いにきたんだろう」
「リィ様に、嫌味ですか?」
「光属性を持つと報告されてしまったからな、ルミエール叔父のように神殿に取り込みたいを思っているのだろう。光属性だからといっても、必ず神殿に行く必要は無い」
「ラズ兄様…」
「それに、魔力量はリィの方が上なんだ、ルミエール叔父の魔力は殆ど無い。光属性という希少性を買われているんだよ」
気にしなくてもいいと言うように、ラズーラ殿下がリモナイト殿下のふわふわの髪を撫でています。神殿から勧誘がきてるなんて知りませんでしたよ、連れて行くのに丁度いいからってルミエール様が出向かされたって事かしら?
しかも、神殿に行くって事はリィ様があのルミエール様みたいになるんですの?絶対嫌ですわ、阻止したいです。ツンデレのツンだけ男のリィ様は可愛げがなくて嫌です。折角天使の笑顔そのままに育ってくださったのに、あんな哀しそうな顔ばかりのリィ様は嫌ですわ。
『アリア』
「どうしたの?オブシディアン、ハウライト」
『僕達もちゅー』
二匹がハモって私をじっと見ていたので、視線の高さを合わせてあげると、左右から擽られる子猫のヒゲの感触。いきなり頬にちゅーしてくる二匹に、ラズーラ殿下とリモナイト殿下は首を傾げているけど、アズラはあんぐりと口を開けて、アイクお兄様は笑っている。
「ルチル、何?あれ」
「あ、あの…」
「先程、ギベオンがアメーリア嬢から口移しで魔力を貰っていましたので、嫉妬したのではと思います」
(ああー!?マウシット様何チクってんですか!?)
マウシット様の言葉に、黒い微笑みを浮かべたリモナイト殿下が『ふーん』と言ってましたが、私にはその言葉がとても怖かったです。ギベオンお覚悟なさい。
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