攻略なんてしませんから!

梛桜

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潜む闇

横柄ってより横暴だった。

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「リモナイト」
「はい」
「お前が祓えるのであれば、そのまま結界も張れるだろう。お前に任せる」
「え!?いえ、ぼ、私はまだそんなに強力な光魔法は使えません!試合で使っていた壁が精々で…」

 無茶振りしてきたよ、この神官!確かにリモナイト殿下はルチルレイの中にいた『魔』を祓いましたが、私と一緒にハウライトを媒介して、魔力を増量して使ったのです。私達では魔力が心許無いから、神殿へと助力を願ったのですが。

(神殿も、どうしてこんな人を送ってきたのですか。使えない、全く持って使えない!!仕事をやる気がないじゃないですか!)

「なら、どうして祓った?」
「ルミエール高位神官長様、ご報告は学園長を通じて神殿へ書類が行っているはずですが?」

 にっこりと微笑みを浮かべてラズーラ殿下が、ちゃんと報告してんだろ読んで無いのかよと、助け舟を出しましたが、ルミエール様は知らん顔です。この顔絶対読んでない、此処へ来る前にも読もうともしてないよこれ。
 
(あああー、こんな上司居たよ、人の話を聞け!と言いたくなる奴。この言いたくても言えないもどかしさが何とも…)

 表面上は侯爵令嬢として、瞳を伏せて話を聞いているだけ。神殿の神官といえど相手は王族なので、話しに口を出すなど出来ない。ねぇ、これ本気で水球ぶつけちゃ駄目かなぁ?
 じーっとラズーラ殿下に視線を向けていると、小さく溜息を零したラズーラ殿下がリモナイト殿下を助ける為に口を開いた。

「リモナイトと此方にいる、アメーリア嬢。そして、彼女の光の守護聖獣であるハウライトの三人が協力して『魔』を祓ったのです。その一度だけでも魔力量はギリギリでしたし、学園の結界は光属性の魔術師10人掛りであると過去の文献に記載されておりました」
「なら、今回もそうすればいい。祓うのと結界は別物だろう」
「ですから、魔力量の問題があります」
「そんな闇の獣などに力を与えているから、魔力量がいつまでも上がらないのではないか?」

 まさかの十人ですと!?それをリモナイト様だけでやれって、無茶振りなんてもんじゃなかった。横暴だ横暴!ラズーラ殿下も頑張ってくださっているけど、オブシディアンの所為にしないで下さい!

(ハウライトとオブシディアンは兄弟なんだから、一緒にいる事の何が悪い)

 ぎゅっと握り締めていた手に、更に力が入ってしまう。爪が食い込んでしまうと心配したオブシディアンが耳をしゅんとさせて手を包みこんでくれる。こんなにもいい子なのに、貶される理由なんてない。
 オブシディアンのお陰で力が抜けたのに、嫌悪感をそのままに出したルミエール様はそれだけで終わるはずがありませんでした。

「こんなに狭い部屋に何人も要らぬ、獣と闇のものは出ろ」
「でしたら、私も退出させて頂きますわ。私は闇の守護聖獣様からも守護を得ていますので」
「アメーリア嬢」
「そなたは光の守護だけにするべきだな、いつまでも中途半端なままだ。光だけにすれば、神殿でも聖女の地位を…」
「お言葉ですが、わたくし、将来の就職進路は騎士団専属魔術師ですの。神殿なんて、少しも考えておりませんわ。失礼いたします」

 制服の裾を軽く持ち上げ礼をすると、真っ先に出口を目指して部屋を出た。侯爵令嬢のする事じゃないですが、これ以上この部屋にいたくなかったんです。
 まぁ騎士団専属の辺りで嫌悪感をそのまま顔に出して隠す事もしない、高位神官長様に有りえないと言いたげな目で見られた。コレが隠しキャラって公式本当に何を考えてたんだ?世の乙女達は其処までドMじゃないと思いますよ!?蔑まれ愛なんて聞いた事もない!

(私絶対にあんなの攻略したくないわー、幾ら隠しでもないわー…。アズラとアイクお兄様とラーヴァを攻略相手に入れるべきじゃない?はいってたら真っ先に攻略してるわ)

 ギベオンが私の守護聖獣で、闇属性の力を思いっきり使えたのなら、とびっきりの悪夢をプレゼントして差し上げるのに残念ですわ。コレくらいの悪戯心なんて、ふんぞり返ってる方に比べれば可愛いものだと思いますわ。

『やるか?』
「できますの?」
『今のルチルレイなら出来る』
「ん?今の?」

 ギベオンの言葉にルチルレイを見ると、こちらも分かりやすくお怒り状態でした。プンプン!って感じ?可愛いなぁルチルレイは。

「それにしても、ルミエール様って…」
「どうかして?」
「あの、神官の法衣って真っ白って聞いていたのに、どこか暗いというかくすんで見えたんです」
「……え?」
「神殿って寄付ばかりですから、王族と言っても贅沢は出来ないんですね。戒律がとても厳しいからあのように他人にも厳しくなるのでしょうか?」
「くすんでた?」
「え?ええ、染み出してる感じで…」

 ルチルレイの言葉に、私だけでは無くギベオンもハウライトもオブシディアンも目を丸くした。ルミエール様の法衣は嫌味なくらい真っ白でした。きっと洗濯係のメイドさんか神官さんが頑張っているんですねって思うくらい真っ白です。

(なのに、ルチルレイの目にはくすんでみえた?)


 私達とルチルレイの違いは、魔に憑かれたかそうでないかです。一方的に怒りだけを煽られていた私達は、もしかして騙されていたのでしょうか?

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