攻略なんてしませんから!

梛桜

文字の大きさ
52 / 71
潜む闇

誤魔化すのは大変です。

しおりを挟む



「アリア」
「は、はい…。リィ様」
「後で、ゆっくりと話聞かせてくれるかな?」

 にっこりと天使の微笑みを浮かべているはずなのに、逃がさないからと訴えてる瞳が怖いです。そのリモナイト殿下の視線を見ているアズラはといえば、オロオロとしつつも、涙目で私を見てくるとか!あざと可愛くて大変けしからん。

(も、モフモフしたい!ぐりぐりとアズラを撫で回した…っ)

 危ない危ない、変態さんになってしまいます。リモナイト殿下の笑顔には引きつった微笑みをかえしつつ、密かにアズラの尻尾を狙うことにします。涎は大丈夫ですよ、意地でも零さない!

「それで、何を調べさせたのかな?アリア」
「まぁ、流石ラズーラ殿下ですわ」
「その件は、まだ調査中ですので、後程私がご報告させて頂きます」
「そうだな」

 ギベオンを動かしたのが、ルチルレイではなく私だというのに目敏く興味を示したのは、流石のラズーラ殿下です。守護聖獣の言葉は聞こえない筈なのですが、マウシット様のあの言葉だけで察しをつけるなんて、どうして未だに第一王子なのでしょうね?

「という事で、何かご存知の事がありましたら教えてくださいませ」
「そうだね…、王族の事はやたらと嗅ぎまわってくるのに、隙を与えない連中でね。こっちとしても困っていたんだ、結界が厄介すぎてね」
「あら、魔力量は然程ではないと仰ってましたわよね?」

 にっこりと微笑みを浮かべると、敵わないと溜息を零したラズ様。この人数ではカフェに行くわけにも行きませんので、皆で執務室へと向かうことにしました。
 それにしても、さっきからルチルレイがそわそわとした顔をして、私をチラチラ見てくるんですけど。何か言いたい事でもあるのかしら?可愛いからもう少しこのままにしておきたい。

「そういえばアリア、さっき言ってた事なんだけど」
「はい?何でしょうアイクお兄様」
「騎士団専属魔術師希望というのは、何処まで本気なのかな?」

 (にっこりと微笑みを浮かべているのに、寒いですわアイクお兄様)

 喧嘩上等といわんばかりに言い放った言葉、しっかり記憶されてましたよ。困ったねこりゃ。アイクお兄様から視線を逸らしてしまいますよ。アズラの方を見れば、瞳がキラキラとしていますが、何かを思い出したのか耳が微かに後ろへと向いてしゅんとしています。

(やっぱり思い出しますよねー)

 私が王宮魔術師ではなく、騎士団専属魔術師を目指す理由の一つでもあるのは、なんといっても『獣騎士団』です。魔術師が乗れるかは騎獣によりますが、乗れるとかなり強力な相方になります。騎獣できれば即採用だってあります!

(最悪騎獣は無理でも、ハウライトもオブシディアンも居ますもの。二匹の身体が何処まで大きくなるか分かりませんけど、乗れるようになったら叶うかも!獣化したアズラに乗るのは反則ですわよね…)

 物の怪○には遠いですわね。
 うーんと違う事も考えつつも、頭の隅っこでは一応ルミエール様のことも考えています。又学園で魔が現れる可能性があるかもしれないとなると、神官に会うのは避けられませんから。

「侯爵令嬢が目指す進路とは思えないんだけどね?ラーヴァがいいだすならまだしも」
「ですけど、折角の重複属性持ちですから、何かをしたいとは思っていますの」
「じゃあ王宮魔術師でもいいじゃない?僕だって入ると思うし」
「リィ様…」

(そのウルウルした瞳は反則です、だって、獣騎士団にはモフモフが!最高品質ともいえるウルフオウガがいますのよ!)

 私の葛藤にアイクお兄様はやれやれと困った顔をしていますが、リモナイト殿下はどこか不満顔です。同じ騎士団だけど狙いは獣騎士団だというのを知ったアズラは、複雑そうですね。

「アメーリア嬢が平気なら、後でウルフオウガになら会わせてやれるけどなぁ」
「ジャスパー!駄目!それ内緒!」

 なんですと?

 ポロリと出たジャスパー様の言葉に、アズラが慌ててジャスパー様の口を塞ごうとしますが、そう簡単にはいきません。目を光らせた私はとてもよい笑顔です。ジャスパー様、言質頂きましたわ。

「はいはい、それは後でアズライトが案内してやれ。ルチルレイ嬢、ギベオンがいつ戻るかわかるか?」
「今は…、凄く気配が離れているのは分かります。だけどいつ戻るかまでは」
「なら、ギベオンが戻り次第だな。アイク任せる」
「はい、ラズ殿下」

 モフモフのウルフオウガは名残惜しいかったですが、話をしているとゾワゾワと背中を伝っていく悪寒を感じ視線を彷徨わせました。隣に居たアズラも何かを感じ取ったのか、周りを見渡して気配を探っている。

(何かしら、瞠られているような嫌な感じがする)

「『魔』が進入できている以上、学園で話し合いをするのは危険ですわ」
「そうだな、私達は王宮へと戻ろう。アリアはルチルレイ嬢をしっかりと守るように」
「はい、勿論ですわ」

 張り切り顔をしているハウライトとオブシディアンをひと撫でし、私はラズーラ殿下に礼をしてとっとと屋敷へと帰る事にしました。
 執務室を出ても、粘着質な悪寒を感じる。学園を出るまでの護衛となってくれたアズラもそうらしく、そわそわと落ち着かないようです。ルチルレイは教室に荷物があるようで、ハウライトとオブシディアンを連れて向かいました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。 学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。 「好都合だわ。これでお役御免だわ」 ――…はずもなかった。          婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。 大切なのは兄と伯爵家だった。 何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

処理中です...