攻略なんてしませんから!

梛桜

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潜む闇

誤魔化すのは大変です。

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「アリア」
「は、はい…。リィ様」
「後で、ゆっくりと話聞かせてくれるかな?」

 にっこりと天使の微笑みを浮かべているはずなのに、逃がさないからと訴えてる瞳が怖いです。そのリモナイト殿下の視線を見ているアズラはといえば、オロオロとしつつも、涙目で私を見てくるとか!あざと可愛くて大変けしからん。

(も、モフモフしたい!ぐりぐりとアズラを撫で回した…っ)

 危ない危ない、変態さんになってしまいます。リモナイト殿下の笑顔には引きつった微笑みをかえしつつ、密かにアズラの尻尾を狙うことにします。涎は大丈夫ですよ、意地でも零さない!

「それで、何を調べさせたのかな?アリア」
「まぁ、流石ラズーラ殿下ですわ」
「その件は、まだ調査中ですので、後程私がご報告させて頂きます」
「そうだな」

 ギベオンを動かしたのが、ルチルレイではなく私だというのに目敏く興味を示したのは、流石のラズーラ殿下です。守護聖獣の言葉は聞こえない筈なのですが、マウシット様のあの言葉だけで察しをつけるなんて、どうして未だに第一王子なのでしょうね?

「という事で、何かご存知の事がありましたら教えてくださいませ」
「そうだね…、王族の事はやたらと嗅ぎまわってくるのに、隙を与えない連中でね。こっちとしても困っていたんだ、結界が厄介すぎてね」
「あら、魔力量は然程ではないと仰ってましたわよね?」

 にっこりと微笑みを浮かべると、敵わないと溜息を零したラズ様。この人数ではカフェに行くわけにも行きませんので、皆で執務室へと向かうことにしました。
 それにしても、さっきからルチルレイがそわそわとした顔をして、私をチラチラ見てくるんですけど。何か言いたい事でもあるのかしら?可愛いからもう少しこのままにしておきたい。

「そういえばアリア、さっき言ってた事なんだけど」
「はい?何でしょうアイクお兄様」
「騎士団専属魔術師希望というのは、何処まで本気なのかな?」

 (にっこりと微笑みを浮かべているのに、寒いですわアイクお兄様)

 喧嘩上等といわんばかりに言い放った言葉、しっかり記憶されてましたよ。困ったねこりゃ。アイクお兄様から視線を逸らしてしまいますよ。アズラの方を見れば、瞳がキラキラとしていますが、何かを思い出したのか耳が微かに後ろへと向いてしゅんとしています。

(やっぱり思い出しますよねー)

 私が王宮魔術師ではなく、騎士団専属魔術師を目指す理由の一つでもあるのは、なんといっても『獣騎士団』です。魔術師が乗れるかは騎獣によりますが、乗れるとかなり強力な相方になります。騎獣できれば即採用だってあります!

(最悪騎獣は無理でも、ハウライトもオブシディアンも居ますもの。二匹の身体が何処まで大きくなるか分かりませんけど、乗れるようになったら叶うかも!獣化したアズラに乗るのは反則ですわよね…)

 物の怪○には遠いですわね。
 うーんと違う事も考えつつも、頭の隅っこでは一応ルミエール様のことも考えています。又学園で魔が現れる可能性があるかもしれないとなると、神官に会うのは避けられませんから。

「侯爵令嬢が目指す進路とは思えないんだけどね?ラーヴァがいいだすならまだしも」
「ですけど、折角の重複属性持ちですから、何かをしたいとは思っていますの」
「じゃあ王宮魔術師でもいいじゃない?僕だって入ると思うし」
「リィ様…」

(そのウルウルした瞳は反則です、だって、獣騎士団にはモフモフが!最高品質ともいえるウルフオウガがいますのよ!)

 私の葛藤にアイクお兄様はやれやれと困った顔をしていますが、リモナイト殿下はどこか不満顔です。同じ騎士団だけど狙いは獣騎士団だというのを知ったアズラは、複雑そうですね。

「アメーリア嬢が平気なら、後でウルフオウガになら会わせてやれるけどなぁ」
「ジャスパー!駄目!それ内緒!」

 なんですと?

 ポロリと出たジャスパー様の言葉に、アズラが慌ててジャスパー様の口を塞ごうとしますが、そう簡単にはいきません。目を光らせた私はとてもよい笑顔です。ジャスパー様、言質頂きましたわ。

「はいはい、それは後でアズライトが案内してやれ。ルチルレイ嬢、ギベオンがいつ戻るかわかるか?」
「今は…、凄く気配が離れているのは分かります。だけどいつ戻るかまでは」
「なら、ギベオンが戻り次第だな。アイク任せる」
「はい、ラズ殿下」

 モフモフのウルフオウガは名残惜しいかったですが、話をしているとゾワゾワと背中を伝っていく悪寒を感じ視線を彷徨わせました。隣に居たアズラも何かを感じ取ったのか、周りを見渡して気配を探っている。

(何かしら、瞠られているような嫌な感じがする)

「『魔』が進入できている以上、学園で話し合いをするのは危険ですわ」
「そうだな、私達は王宮へと戻ろう。アリアはルチルレイ嬢をしっかりと守るように」
「はい、勿論ですわ」

 張り切り顔をしているハウライトとオブシディアンをひと撫でし、私はラズーラ殿下に礼をしてとっとと屋敷へと帰る事にしました。
 執務室を出ても、粘着質な悪寒を感じる。学園を出るまでの護衛となってくれたアズラもそうらしく、そわそわと落ち着かないようです。ルチルレイは教室に荷物があるようで、ハウライトとオブシディアンを連れて向かいました。

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