攻略なんてしませんから!

梛桜

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潜む闇

大好きなあなた(ルチル視点)

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 教室に荷物を忘れていた私は、ハウライト様とオブシディアン様について貰って、魔法特進科へと向かっていました。が、その途中の貴族科で何故か足止めされています。同じ学年だとは思うのですが、貴族科の女生徒となると男爵家の私には分からない人が多いのです。

「男爵家の分際で、身の程を弁えになられたらいかが?」
「そうですわよ、王子様達だけでなく、侯爵家のアイドクレーズ様やマウシット様にまで!」
「ジャスパー様にも近付くなんて!はしたないと思いませんの!?」

(囲まれてるわね、アメーリア様をお待たせしているのに…)

『ルチルレイ』
『無視していけばいいのではありませんか?アリアは無視しますよ』

 キョトンとした顔であっさりと言われてしまいましたが、アメーリア様は侯爵令嬢であって、囲んでいる令嬢方より身分が上なのです。貴族といっても下位貴族の男爵家といえば、無視することは出来ないのです。
 心なしか薄っすらと靄が掛かっているような、そんな嫌な気配も感じてしまいます。これは私が怖がっているからなのでしょうか。

『面倒』
『ですね。』

 子猫の姿なのに言葉が分かるからでしょうか、溜息を零してやれやれとした顔をしているハウライト様とオブシディアン様が可愛いです。周りを取囲んでいる令嬢方がいなければ、ほのぼのと和めるのでしょうけど、今は無理ですね。

(どうして、ギベオンがいない時にばかり…)

『違いますよ、ギベオンがいないから取囲んでいるんですよ』
『ギベオンいない、ルチルレイ怖くない』

 それもそうでしたね。
 ハウライト様とオブシディアン様に言われて思い出すなんて、私もかなりアメーリア様達と一緒にいる事に馴染んでいたのですね。ダンスの試験でマウシット様にお誘いを受けた時も、背後に感じる殺されるような視線があったはずなのに、その時の私は気がつきもしなかったのです。

「何か言ったらどうですの?」
「そうですわ、もうお近くに行かないとお約束して頂きませんと」
「試験が終わったのですから、もう貴女は用無しでしてよ!聖獣様がいるから貴女に誘いがきただけではありませんか」

(そうですね、分不相応なのは分かっています。勘違いしているのだって、分かっているんです。だけど、だけど…っ)

 ジワリと目の前が涙で滲んでいく。身分を考えると、私からは何も反論できないし、逆らう事だって許されない。分かってる、分かってるけど。

(分かってるけど、アメーリア様は、こんな一方的に言ってなんて来なかった。こんな見下した目で見てこなかった。いつも、ニコニコと優しい微笑みで温かくて…)

「いい加減にして貰えますか」
「…っ、は、う、ライト、様」
「ルチルレイ、我慢しなくてもいいですよ。貴女はおかしくありません」

 子猫の姿から、少年の姿へと変化したハウライト様。小さくて華奢な背中なのに、その背中がとても頼もしい。オブシディアン様は普段から喜怒哀楽を出さない方なのに、尻尾を膨らませて怒ってくださっている。

「あらあら、弱い者いじめだなんて『はしたない』ですわね?」
「あ、アトランティ侯爵令嬢!?」
「どうして此方に」
「聞くまでも有りませんわー、ハウライト・オブシディアンいらっしゃい」

 よく通る艶やさを含んだ綺麗な声、只の軽い声だけではなくて、私を取囲んでいる令嬢方は皆顔色を青くしている。ふわりとした羽の付いた扇子で口元を隠し、にっこりと目元だけ笑みを浮かべていますが、怖いのです。
 ハウライト様とオブシディアン様は喜んで側へと走って行きますが、アメーリア様の視線は令嬢方から動きません。

「侯爵家といっても、お姉様とは違いますのね。貴女のお母様を貶めたい訳ではありませんが、お育ちが卑しい所為かしら?と言われても仕方有りませんわね?」
「…っ!!」

 扇子を閉じながら薄っすらと微笑みを浮かべる其の姿は、気高い貴族の令嬢そのもの。今まで私を取囲んでいた令嬢達が、その迫力に押されているのが分かります。

「待たせたな、ルチルレイ」
「ぎ、ギベオン」

 私を背後からすっぽりと抱き締めて、令嬢達に向けた視線はとても冷たい。ギベオンとアメーリア様に睨まれた令嬢達は、蜘蛛の子を散らす勢いで逃げていきました。この二人が組んだら、恐ろしいとしか言いようがありません。

(だけど、かっこいい…)

「怪我は無い?私も最初から御一緒すれば良かったわ」
「大丈夫です、ハウライト様もオブシディアン様も守ってくださいました」
「まぁ!二人共なんて良い子ー!!」
『アリア、私はいつも良い子ですよ!』
『アリアのぎゅー』

 先程の氷の微笑みは何処へやら。嬉しそうに守護聖獣様を抱き締めるアメーリア様は、とても可愛くて、家柄も身分も関係なく助けてくれた。私を見てくれた事が嬉しくて、私はアメーリア様に抱き付いて泣き出していた。

「大好きです、アメーリア様」




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