40 / 553
レイドイベント開催(2)
しおりを挟むそして、ステージからやや離れた場所にビギナー狩りをしていたプレイヤーたちの顔も見えてしまう。
生身ならば真っ青になっていそうな驚愕の表情の五人。
名を騙っていたインディーズアイドルが、現在はプロとして活動している者、引退している者、関係なく勢揃いしているのだから。
レベル差もあるのに、ツルカミコンビと蔵梨柚子のたった三人に返り討ちに会った五人組は、星光騎士団のほぼ全員を敵に回したと宣言されたも同然。
顔を見合わせたあと、ビギナー狩りの五人はそそくさと広場を去った。
レイドイベントには参加するつもりだっただろうけれど、この人数を敵に回したと他のプレイヤーにバレたら袋叩きに遭うのは不可避。
まあ、レイドイベントに参加する際には特設フィールドに入らなければいけないし、そのフィールド内でランダムにプロ、セミプロのアイドルが歌でレイドイベント参加プレイヤーにバフを提供する。
そこにキルプレイヤ――も普通のプレイヤーも隔たりはない。
「はいはーい、SBOプロモーション担当の神野栄治と~」
「鶴城一晴ですぞ」
星光騎士団現役時代の衣装を纏ったツルカミコンビにチコ、淳の脳内フィーバー。
ちなみに今回淳たちも含めて纏っている星光騎士団衣装アバターは運営にお願いして作ってもらった。
自分たちでカスタマイズした衣装アバターとは完成度が違う。
一応裾や襟の色など個々のイメージカラーなどに変更はできるけれど。
スマートな騎士服のツルカミコンビに淳は「サイリウムと団扇がほしい……」と半泣きで呟いて周に肘で小突かれた。
「時間になりましたのでレイドイベント、開始しまーす」
「では! レイドイベント応援ライブも始めますぞ! 一曲目は星光騎士団初代――凛咲怜王、梅橋梓、酒牧始による星光騎士団ファーストシングル『Starlight』!」
SBO内で課金すればサブスクに登録されている曲が歌えるようになっている。
初代の歌声は力強い。
久しぶりのライブだろうが、三人の息はぴったり。
声量があるので聴き心地がよかった。
そのまま二代目、三代目、と歌い手が変わる。
その間プレイヤーたちはレイドモンスターへと挑む。
自分でも歌唱バフをかけることもできるけれど、星光騎士団メンバーの歌唱バフの方が大きかった。
歌い終わった星光騎士団メンバーは、空き時間を無理やり作って駆けつけていた者がほとんどで、一曲歌ったらログアウトするわ、と立ち去っていく。
本当に、たった一曲だけの復活に星光騎士団箱推しの古参はステージ前で硬直して泣いている。
チコや淳以外にも、やはり星光騎士団箱推しがSBOをプレイしていた。
「結構面白いなぁ。俺VRゲーム初めてだったけれど、時間ある時プレイしてみようかな」
「本当~。アタシもVRMMOって初めてだけれど、こんなに自然に体が動くものなのねぇ。空き時間にまたライブしに来ちゃおうかしら?」
「騎一ちゃんと閂ちゃんがゲームに興味持ってくれたの嬉しいやん~! やろやろ、ライブやろ! レイドイベント、今月末までやってるんやろ? 時間合せて歌いに来よ~!」
「実千ちゃん、ゲーム好きだものねぇ。ええ、ええ、いいわよぉ」
と、弾む会話をしているのは星光騎士団十代目、光原騎一、真歳閂、椎名実千。
光原はアクション俳優、真歳はモデル、椎名はテレビドラマを中心に活躍する俳優。
彼らの姿に手を合わせる淳。
十代目メンバーといえば、神野栄治と鶴城一晴を見初めて星光騎士団に引き入れたそうだ。
神野と真歳はモデルの先輩後輩。神野は真歳に逆らえないとかなんとか。
「日向ちゃんとまた歌えるの嬉しいな~。ねえねえ、また一緒にゲームしようよ。おれSBOは今レベル20になっているよ~」
「柚子、お前SBOもやってたのか? プライベートをゲームに消費しすぎじゃないか?」
「当たり前じゃん~。おれはねえ、ゲームの中でネカマプレイをしてネカマのおれに男たちが鼻の下伸ばしてるのを見るのがだ~~~~い好き♡ ぶりっ子プレイヤーのおれに女子やNPCに冷た~~~い目で見下されるのも気持ちいい~~~♡ この気持ちよさを日向ちゃんにも感じてほしい~」
「嫌。無理。お前のその歪んだゲームプレイ性癖につき合うつもりは一切ない」
「即答ひどくない?」
「でも、久しぶりに一緒にライブできるのは――楽しみ。順番早く来てほしいな」
「…………。え、もう日向ちゃん好き愛してる結婚しよう」
「無理。生理的に受けつけない」
「言い方ひど~~~~い♡」
その横では十三代目の蔵梨柚子と佐藤日向。
歴代の中でもツルカミコンビに匹敵する夫婦漫才ぶり。
あんな辛辣に拒絶されたというのに、蔵梨の表情は恍惚としている。
「はあ、はあ、すごい、本物の歴代星光騎士団団長と副団長とメンバーたちだ……引退した三代目の稲見晃大や八代目の原司、十三代目副団長の佐藤日向までいて……はあ、はあ……ああ、色紙とサインペンを持って回りたい……」
「淳ちゃん……」
「先日は淳だけオーディションに受かったことに嫉妬してしまいましたが、この熱意と知識量を見せつけられると納得してしまうというか……嫉妬する資格もなかったというか……」
「ちなみに淳くんが喜ぶと思って、このゲーム内ライブ映像は録画してあるので星光騎士団のワイチューブチャンネルにアップ予定だよ」
「マジですかぁぁぁあ!? 絶対に観ますー!」
綾城の言葉に生身の状態なら嬉し泣きしている自信がある。
この歴代メンバーの復活ライブ。
コレがいつでもまた見られるなんて!
75
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
妹に婚約者を取られるなんてよくある話
龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。
そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。
結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。
さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。
家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。
いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。
*ご都合主義です
*更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる