スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第78話 パーティみんなで嵐の夜に、です #1

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「今日はいいもの作ってきたんだっ」
ダンジョンに入る前、昨日作ったアレを渡そうとみんなに声を掛けたんだけど……

「このタイミングって事は、やっぱり戦闘関連の何かかしらね」
「武器か? それでなくてもここの魔物は弱すぎるんだが」
「カル師、ぬるゲー厨? つよくて?」
「うーん、強化とかだったらまた今度がいいかな」

大丈夫、これはきっとみんな嬉しいと思うよ!

「作ってきたのはその逆の、手加減するための武器なんだ。剣の代わりに使ってよ!」

「何よ、ホントにいいものじゃない! 流石はカルア、あたしは信じてたわよ!」
「む、手加減出来るというのは有り難い」
「わたし、分かってた。カル師はぬるくない」
「昨日の問題点をその日のうちに解消するなんて凄いね」

よかった。じゃあどうぞ!
「これは撲撲ボコボコ棒って言って、打撃タイプの武器だよ!」
「……かわいい響きで物騒な名前ね」

全員に手渡し、そして――
「今回はクーラ先生の分も用意してきました」
「えっ、引率の私にも?」

意外そうな顔のクーラ先生。でもちゃんと理由があるんですよ。

「これ、訓練にも使えるかと思って」
「成程……そうね、使わせてもらうわ。これでネッガーをボコればいいのね?」

……あの、訓練ですよ?

「それでカルア、どうせあんたの事だからコレ……ただの棒じゃないんでしょ?」
流石はアーシュ、お見通しだね。
「うん、ちゃんといい感じの機能を付けてきたよ」

「そう自信たっぷりに言われると、聞くのが怖くなってくるわね」

軽く引いたような表情になるアーシュ。大丈夫、今から説明するね。

「この武器は打撃型だから、最後まで気持ちよく振り抜けるようにって考えたんだ。ほら、相手が固かったりすると、手が痺れたり痛かったり、酷い時には武器を落としちゃったりするでしょ? そうならないようにって、相手に当たった瞬間に【ベクトル】が働くようにしたんだ」

「【ベクトル】が……働く?」

「うん。手には相手を打った感触だけ残して、発動した【ベクトル】が棒のスイングを継続させる。棒に受けた衝撃を【ベクトル】が全部跳ね返すから、最後まで気持ちよく棒を振り抜けるってわけ」

説明を聞いたアーシュは、さっきまでの不審な表情から難しげな表情に変わった。
「何て言うか、分かるような分からないような説明ね」

やっぱり体感しなきゃ分からないだろうな。
僕も試してみて感動したし。

「実際説明が難しいからね。でもやってみればすぐ分かると思うよ。昨日の試し打ちだって凄く楽しかったし」
「試し打ちって……どこでやってきたのよ」
「宿の部屋から王都の森に転移してね。やっぱテストもゴブリンがいいかなって、あそこのゴブリンで試したんだ」
「成程ね」

「ああそう……部屋から王都に転移……相変わらず普通に言うわね」
クーラ先生が少し遠い目をするけど、モリスさんとかも普通にやってますからね?

「相手は固さや重さによって吹っ飛ぶか壊れるかのどちらになると思うけど、相手が固くて重い時はその分使う魔力が増えるから気を付けて。あとこれは訓練用にだけど、撲撲棒同士がぶつかった時は、お互い逆方向の【ベクトル】が働いて静止するようにしてあるから。でなきゃお互い跳ね飛ばされちゃって、まともに打ち合えないからね」

「んーー、やっぱ分かんない! とりあえず使ってみるわよ」
「うん、試してみて。一度体感すればすぐ分かるから」



そんな感じで、みんなで撲撲棒を装備してダンジョンに入ったんだけど――

「あはははは! 何コレ!? 超気持ちいい!!」
アーシュが棒を振るとゴブリンはポーーンと吹っ飛んでいく。

「むぷぷぷ、ほーむらん」
ワルツが棒を振るとゴブラットはスパーーンと吹っ飛んでいく。

「これ楽しいね!」
ノルトは斜め上に棒を振り、ゴブリンが天井にドチャッと張り付いてから落ちてくる。

「ああ。本来の戦いとは全く違う爽快感だ」
ネッガーが飛び掛かってきたゴブラット目掛けて上から叩き付けるように棒を振ると、ゴブリンは地面と天井の間でバウンドを繰り返す。

「カルア、あんたの言ってた『気持ちよく振り抜ける』って意味がよく分かったわ。この棒、すっごくいいじゃない!」
「でしょ? 絶対気に入ってくれると思ったんだ!」

だって手に残る感触も気持ちいいし、相手が吹っ飛んでいく爽快感も!!

「……ねえ、私もちょっと試してみていい?」
楽しそうな僕達を見てるうちに我慢が限界を突破したのか、ここでクーラ先生も参戦!

という事で、次のエンカウントはクーラ先生にお任せし――
「!? あははははははははははは! これスゴっ! あははははははははっ!」

クーラ先生、そのまま奥に走って行っちゃった……
だんだん遠ざっていく笑い声――と時折それに混じって聞こえてくる打撃音、そしてゴブリン達の悲鳴。

ええっと……
これ、僕達はどうしたら……

「多分これ、暫く帰ってこないわね。転移の間まで戻って帰りを待つわよ」



それから約20分後――
「みんなゴメンね! 何だか楽しくなっちゃって暴走しちゃった……てへっ」
クーラ先生は良い笑顔で戻ってきた。
「……それで先生、どこで正気を取り戻したんですか?」
「ええっと……2層に降りる階段の前で『あれっ?』って……」

この超短時間で階層ひとつ踏破してきたようだ。

「この階の魔物、何だか一匹もいなくなっちゃったみたいだから、一度外に出てから入り直しましょうか」
「――なっちゃった?」
「え……ええっと……殲滅、しちゃった……から……ね?」

あれ? もしかして僕、クーラ先生にあげちゃいけないモノを、あげちゃった……のかな?
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