スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第78話 パーティみんなで嵐の夜に、です #2

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一度外に出た僕達は、今そこで撲撲ボコボコ棒を使った感想を言い合っている。
「この棒、スイングの速度で手加減できるみたいなんだけど、それだと素早い魔物への手加減が難しいと思うのよね」
クーラ先生からの的確な指摘。これは棒一本で階層を踏破してきた経験によるものだろう。

「んーー、なら速さと関係ない手加減の仕方に改良しようか」
「そうね。あと吹っ飛ばしちゃうと次の攻撃にコンボを繋げにくい場合もあるわね。飛んでいったまま諸事情で帰ってこない奴もいるし」

成程、確かにみんなが攻撃してた時も派手に飛んでいってたっけ。

「ちょっと調整してみます。クーラ先生の撲撲棒を貸してもらえますか」

ええっと……
ベクトルの大きさは魔力の大きさかイメージで変えるとして……伝え方は、今の完全振り抜きを100パーセントとしてたイメージで……
棒君、こんな感じでよろしく!

「これでいいかな。さっきまでのが全開、その何割くらいの力でみたいなイメージで調整できると思います。あと一応流す魔力での調整も出来ますけど。ちょっと試してきてもらっていいですか?」
「分かった。すぐ戻るからちょっと待っててね」

そしてクーラ先生はダンジョンに入って行って……今度は5分くらいで戻ってきた。よかった、ちょっとだけ心配してたから。笑い声を上げながら踏破してきちゃうんじゃないかって。

「完璧な調整ね、申し分ないわ。それにしても全開での爽快感は堪らないものがあるわね。私もうこれ手放せないかも」
「あはは、そんなに気に入ってもらえるとは……」
「じゃあみんなのも同じように調整してあげて。そうしたら今日のアタックを開始しましょ」



今日は撲撲棒のおかげで、攻略速度がかなりスピードアップした。僕達の戦いをずっと見てたクーラ先生は途中うずうずしてたみたいだけど、そこはやっぱり我慢ができる大人、参戦も乱入も無かった。
後ろで素振りしてたのは……見ない振り見ない振りっと。
――って感じで最下層まで2周回ってきたんだけど……まだちょっと時間があるなあ。

「うーん、もう1周回れなくはないけど、ちょっと遅くなっちゃいそうね……」
「じゃあ3階層まで踏破して終了ってのはどう?」
「そうね、そうしましょう」
という事で、今日は2周半でした。
みんな最後までいい笑顔。楽しそうでよかった!

フタツメへの帰り道、道端に生えている一本の木を眺めながらアーシュが声を掛けてきた。
「ねえカルア、この棒ってあそこに生えてる木とかも吹っ飛ばせる?」

木かぁ……根が生えてるからなぁ。

「多分当たった所がえぐれるとか折れるくらいじゃないかな」
「そっか……でもそれって棒が細くて短いからよね? じゃあ棒の先に大きなハンマーみたいな結界を展開した場合は?」

棒の先には大きな結界……当たった物を問答無用で薙ぎ払い突き進む、大きな結界……

「いけるかも!」
「やっぱり! なら今度実験してみない?」
「凄いアイデアだよアーシュ! やろうやろう!」

「あは、ははは……、それ途轍もなく凶悪な武器なんじゃ……これって私、止めるべきなのかしら……」



翌日――
セカンケイブダンジョンに通って今日でもう4日、日が経つのって早いなあ。

踏破のスピードもどんどん上がってきて、なんと今日はお昼過ぎまでに2周出来ちゃったんだ。これって凄くない?

「このペースなら今日は4周いけるんじゃない? 新記録よ、新記録!」
「そうね、でも無理は禁物よ。今はちゃんとお昼を食べてちゃんと体を休める事。休息は意識してとりなさい。特にダンジョン攻略ではね」
「「「「「はい!」」」」」

という事でお昼休憩。みんな、頑張って一生懸命休息しよう!

「今日は風が気持ちいいわね」
「だね。最近ずっといい天気だったけど、昨日までは風が無くてちょっと暑かったから」

なんてみんなで話ながら……お昼ご飯も食べて、休息もしっかりとって……
「じゃあ午後の部、開始だね!」



……3周目もあっさり終了。
「さ、今日ラストの4周目! みんな気合い入れていくわよ!」

……そして4周目を終えてダンジョンを出たんだ……けど。
外の景色がさっきまでと全然違う!
さっきまで白い雲が浮かんでいた青空はもの凄い速さで流れる真っ黒な雲に覆われて薄暗く、地上ではジメっとした重い空気に包まれ、かと思うと突然の突風に体が打ち倒されそうになる。

「本格的な嵐が始まる前に急いで街に帰るわよ!」
焦った表情でアーシュが指示を出し、でもその時ノルトから制止の声が上がった。
「待ってアーシュ! ゴメン、僕はこのまま家に向かうよ! この嵐はヤバい……何とかしなくちゃ!」
「何とかって何?……あんたに何が出来るの? 何をしたいの!?」
「何が出来るかなんて分からないよ。でも……何をしたいかなんて決まってるだろ!」

アーシュの言葉は正しい。でもノルトの気持ちだってきっと正しい。だから――
「僕が何とかする。みんな、とりあえずノルトの家に転移するけど、いい?」

僕になら出来る事があるんだ。
あるんだよ。

「カルア、あんたなら何とか出来る――って事でいいのね?」

もちろんだよ。

「よし! ならあんたを信じる! みんな、ノルトの家に行くわよ!」
頷いた僕に笑顔を返してから指示を変更したアーシュ、そして笑顔でノルトの肩を叩くみんな。
そんなみんなに返すノルトの言葉はもちろん――
「みんな……ありがとう!!」

さあ、行こう!



ノルトの家に到着すると、そこはまるで戦場のようだった。
「急げ! 今のうちに収穫出来そうなものを全部収穫するんだ!」
「こっち! 籠とカート急いで!」
「落ちた実は諦めろ! 今は収穫を急げ!」

そんな中、ノルトが父親――タムボさんの元へと駆け寄り声を上げる。
「お父さんっ!」
「ノルト!? どうしてここに?」
思いも寄らないノルトの登場に驚くタムボさんに、ノルトは言葉を続ける。
「僕も手伝うよ! それにみんなも助けてくれるって」
「それは有り難いが……いやダメだ、この強風の中の作業は危険過ぎる。やらせるわけには――」
「大丈夫だよお父さん! 僕達は冒険者なんだ!」
「だが……」

二人が言い合っている間にも風はどんどん強まり、いよいよ嵐がやって来――
「父さん大変だ!!」
大声を上げて走ってきたのはノルトのお兄さんのハタさん。だけど……
背中に誰かを背負ってる?

「父さん、ブロッサが脚立ごと風に煽られて!!」
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