スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第80話 死闘!激闘!パーティの戦いです #3

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「止まりやがれコラ!! このチャカが見えねえかオラ! 撃つぞコラ!?」
廊下の先で、雑魚リンが黒い何かを向けて叫んでる。
「『チャカ』ってあの黒いのかしら? あれって魔道具か何か? 撃つとか言ってるから試しに撃たせてみる?」
「そうだね。でも念のため【障壁】とか【結界】を張ってからにした方がいいと思うよ」
流石ノルト、慎重派。

「なら両方試しましょ。あたしが光の【障壁】を張るから、カルアはそのすぐ内側に【界壁】ね」
「了解」
そして――

パンッ!
雑魚リンが手に持った黒いのから何かが飛んできて……アーシュの【障壁】を貫通してから【界壁】で止まった。
「この【障壁】を抜けるって、結構威力があるわね。飛ばしたのは金属の塊かしら?」
「つまりつぶてを飛ばす魔道具って事か。普通に魔法を使った方が早そうだけど」
「案外そうとも限らないかもよカルア君。ふふふ、これは帰ったら分解が必要だね」

その雑魚リンはささっと【スティール】してあっさり終了。さぁ行こ行こ。
あ、でもみんなを囲う移動型の【界壁】を展開しとこうかな。チャカ対策に。

地図を見ながらあちこちの部屋を開けて探索してるんだけど……
さっきからずっと雑魚リンしか出てこなくて、『コラ』とか『オウ』とかずっと煩い。
この事務所階層は最後までこんな感じなのかなぁ。たまに撃ってくるチャカは界壁で防御出来るし、雑魚リンはスティール一発だし。

そろそろ何か違う事が起きないかなあ、って思ってたら――
「あれ? これって宝箱じゃない!?」
アーシュが宝箱を見つけた!
おおっ!!

ワクワク顔のアーシュがその宝箱を開けると――
「ちょっと何よコレぇ!?」
箱の中に入ってたのはチャカ。何種類かの大きなチャカや小さなチャカ。
それを見て一瞬で不機嫌になるアーシュ、そして楽しそうにチャカを収納してくノルト。

それを見ててふと気になったんだけど――
「ねぇ、アーシュは宝箱に何が入っていたら嬉しい?」
――欲しい物って人によって違うからね。

「そうねー、お金や宝石は別にいらないし……やっぱり珍しいアイテムとか伝説の武器とかね!」
「なるほど……あ、もしかしたら『チャカ』も伝説の武器とかかもよ。今まで見た事無かったし」
「ええー、アレがぁ!? でも、もしそうだとしても……アレ使ってたのって見るからに雑魚っぽいあいつらよ? 『オウ』とか言って」
「あははは……そう聞くと確かにあまり嬉しくないかも」
「でしょー?」



そんな感じで探索は進み、やがて目の前には重厚そうな大きな扉が現れた。いよいよボスの間に到着かな?
「お願い今度こそ……今度こそちゃんとしたボスがいますように!」

アーシュ、そのお願いが叶っちゃったらそれはそれでちょっと……
あとワルツとネッガー?
さっきからずっと静かだけど、もしかしてもう飽きちゃった?

「さあ、みんな集中! ボス戦、気合い入れて行くよ!」



ボスの間で待っていたのは、数匹のサブゴブリンとマサゴブリン、それと――
初めて見るタイプのゴブリンが一匹。どことなく艶々つやつやとしたピンストライプのスーツを着て、他の雑魚リンとは何かちょっと違う感じ?
「ホゥ、コイツ等がその冒険者ですカ」
「そうですアニキ! 他の奴ら皆このヤロー共ニ……」

そのスーツのゴブリンは、僕達に向かってゆっくりと近づいてきた。
「「「「「アニキ!!」」」」」
「まったク、母の気まぐれにも困ったものでス。せっかく地上への大侵攻の準備が順調に進んでいるというのニ、こんな連中の始末をやれなどト……」

ええっと……回りの雑魚リンが『アニキ』って呼んでるから、こいつは『アニキゴブリン』って事でいいのかな?
「あなたたちヲ『本部』に向かわせる訳にはいきませン。ここで私が食い止めまス!」
そいつはそう言って、全身に魔力を纏った。
「さア! 掛かって来なさい冒険者どモ!」



「全員戦闘準備! カルア、先制の【スティール】!」
「【スティール】!」

アニキゴブリン一匹を残し、他の雑魚リンは魔石になった。
「クッ……今のハ……そうですカ、体内の魔石に直接攻撃ヲ……まさかニンゲンにそのような技術が開発されていようとハ……これは確かに我らにとって脅威、ですネッ!!」
そう言いながら突っ込んできたアニキゴブリン!
咄嗟に張ったアーシュの【障壁】を片手で破り去り、ピンストライプが僕達に迫る!

「やらせん!」
目の前に迫るアニキゴブリンを止めたのは、いつもの頼れる前衛ネッガー。
「ほウ、やりますネ。面白イッ!!」

そこから始まる高速の近接戦闘。ネッガーもアニキゴブリンもお互いの力量を探りながら徐々にペースを上げてく感じ? 繰り出す攻撃はどれも防がれたり避けられる前提でいるっぽい。

「いい? あいつとネッガーの距離が開いた瞬間に魔法をぶち込むわよ! カルアはいつもとは逆方向に攻撃を通す【結界】であいつを囲んで! ノルトとワルツは攻撃魔法を準備!」

その時をじっと待つ僕達の目の前で戦闘は続いていく。どちらの動きもかなり速くなっていて、どちらの表情からも余裕の色は消えている。そして――
一瞬の隙を突いたネッガーの前蹴りをアニキゴブリンがガードし、その勢いで後ろに押し飛ばされた。
今だっ!!

「【結界】!!」
「おっト」

なっ!? 避けられた!?

「危ない危なイ。今のは中々いい判断でしたヨ。しかしそんな溜めの大きナ魔法が当たるナドと思わないで下さイ!!」
「まだよっ! このまま全員一斉攻撃! 面でぶち当てろーーっ!!」
「「「応っ!!」」」

僕とノルトの大量の【火山弾】、ワルツの氷の【散弾】、アーシュの白い【火球】……それらが一斉にアニキゴブリンを包み込み、そこにワルツが――
「【激☆加熱】」
アニキゴブリンを中心に広範囲に飛ばされた小さな氷の散弾は、アニキゴブリン付近まで飛んで行ったところでワルツの魔法によって急激に加熱され、アニキゴブリンを巻き込んで一斉に爆発した。

「ヤバっ!? 【界壁】っ!!」
その爆発の凄まじさはとんでもなかった。部屋中を荒れ狂う衝撃、そしてそれが収まった後は部屋中に舞い散る塵で――
「ちっ、『風』よ!」
敵を見失う危険に気付いたアーシュが風魔法を発動、それにより塵は部屋から押し出され、視界を取り戻す事が出来た。
その塵の中から姿を現したのは、擦り切れてボロボロになったスーツを纏ったアニキゴブリン。ダメージは……?

「カルア、あいつに【スティール】を試して」
「分かった」
アーシュの言葉に即【スティール】を発動、でもアニキゴブリンに変化はない。どうやらまだ貫通しなかったみたいだ。

「今のは素晴らしい攻撃でしタ。ですが残念ながらワタシに――」
そんな余裕の態度を見せていたアニキゴブリンだったけど、急に愕然とした表情を見せたかと思うとワナワナと震え出した。

「ワッ、ワタシのスーツガ!? ……母より……母よりいただいタ、大切なスーツがアアアァァァァァッ!!」
ボロボロとなったスーツに嘆くアニキゴブリンの魔力が急激に膨れ上がる。まさか……まさかこいつも怒りでゴブラオに!?

あの時の絶望感を思い出しながら恐々とアニキゴブリンを注視しつづけるけど、どうやら身体が変化する様子はなさそう。じゃあこれって……もしかして発狂モード!?
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