スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

文字の大きさ
158 / 278

第69話 皆さんにお礼がしたくて、僕は… #3

しおりを挟む
「色の付与? そんな事も出来たんだ……ロベリーから教わったの?」
「いえ。ちょっと試してみたら出来て。属性が付与出来るんなら色だって出来るんじゃないかな――って」
「へぇ、面白い! 今度ロベリーにも教えてあげたら?」
「そうですね。言ってみます」

「魔石って事は、やっぱり何か付与してるのよね?」
「はい、便利機能をいくつか。研ぐ必要が無いように刃先だけ【融解】【凝固】で整えるとか、汚れや切った物が貼り付かないように【分離】とか」
「これまで時空間魔法でやってた事を今回は錬成で実現したって事ね」
「はい。出来るだけシンプルにしてみたくって」
「うん、いいと思う」

ピノさんからも高評価。でもこれだけじゃないんだな。

「あとノルトのオリジナル錬成を応用して、刃を立てたらイメージ通りのカットができる機能を付けてみたんです!」
「え!? ……それって凄い事なんじゃないの?」
「ノルトのをちょっと変化させただけだから結構簡単に出来ましたよ。試してみてもらっていいですか?」

ピノさんは包丁を手に野菜と向き合う。
ジャガイモに刃を当てて『皮むき』――
ニンジンに刃を当てて『皮むき』――
玉ねぎに刃を当てて『皮むき』――

ジャガイモに刃を当てて『角切り』――
ニンジンに刃を当てて『角切り』――
玉ねぎに刃を当てて『ざく切り』――
ブロック肉に刃を当てて『角切り』――

「……あのカルア君? 私、刃を当てただけなんだけど……」
「やった! 成功です! ちゃんとイメージ通りでしたよね?」
「ええ、イメージ通りよ。でも……」
そこで言葉を止め、ピノさんは凄く真剣な表情で僕を見つめる。
「カルア君、これダメ。これは付けちゃいけない機能よ!」

えっ、どうして……?

「聞いてカルア君。これは私の意見なんだけど、何でも便利にするのって必ずしも正しい事じゃないって気がするの。確かに刃を当てただけで何でもイメージ通りに切れちゃうなんて、すっごく便利で素晴らしい機能だと思う。でも私がこれを使ってご飯を作った時、胸を張って『私が作りました』って言えない気がする。多分『最初から出来上がっていた料理をそのまま出した』みたいな気持ちになっちゃうと思うの」

ええっと……?

「例えばそう……カルア君が森に狩りに行った時に、突然目の前でフォレストブルが岩に頭をぶつけて死んじゃったとするでしょ。そのフォレストブルを持って帰ってきて、『僕が狩りました』って私に言える?」
「そ、そんな事絶対に言えません!」
「でしょ? それと同じなの」

そんな……

「多分これを貰った人も同じ気持ちになるんじゃないかな。それに、もしこれが当たり前の機能になっちゃうとね、世界中で『包丁で食材を切る』っていう技術が失われると思うの。そうしたらどうなると思う?」

どうって、それは……あ。

「ね? 世界中の誰も彼もがカルア君の包丁無しじゃ料理出来なくなっちゃう」
「それが『便利にする事が正しい事じゃない』っていう事――なんですね?」
「うん、分かってくれた?」
「はいピノさん、よく分かりました。僕は……みんなから『料理する事』を奪っちゃうところだったんですね」

そんな僕の言葉に、ピノさんはニッコリと笑って頷いた。
「多分だけど……これの行き着く先って『鍋の中に材料を入れるだけでカレヱライスが完成する』魔道具になると思うの。ねえカルア君、そんな魔道具……作れるんじゃない?」

……作れそう。

「はい、作れると思います」
「でしょ? もしその魔道具に材料を入れたのが私だとしても、それってもう『私の料理』とは言えないよね? それは味が良いだけの味気ない料理。だからね、やっぱり『便利』には超えちゃいけない一線がある――って、そう思うの」



それから僕は――
ピノさんに言われた通り包丁から錬成カットの機能を外して――
その包丁と鍋のセットを奥様方に配って――
使い方を見せたら狂喜乱舞されて――
そんな、とっても大事な事を考えさせられた――でもとっても楽しい夜でした。

ああそうそう、錬成カットした食材はそのままボックスに収納した。僕がいつか料理に使えるようにってね。
それからピノさんは改めてカレヱライスを作ってくれて――
それはやっぱりとても美味しい料理だって感じた。



翌日――
今日もピノさんに連れられてやって来たネッガーをギルマスと一緒に森へと送り届け、そこからまたまた錬成の時間。
今日作るのもまた鍋と包丁のセットなんだけど、昨日作ったのとはちょっと違う。だって――
今日のは、お世話になった冒険者のみんなへのプレゼントだからね。

一番の違いは携帯性。
鍋って嵩張るから持ち歩くのが大変なんだよ。だからこれもまた錬成の応用で変形する機能を付けたんだ。持ち歩く時は四角いブロックの形、料理する時は鍋の形にってね。
この機能はみんなの迷惑にはならないはず。魔法の鞄を使うみたいなものだし。
あと、水のお取り寄せはヒトツメの街の一番大きな井戸からにしておいた。
この機能は外す事も考えたんだけど、水は命に直結するから付ける事に決めたんだ。

包丁には一つだけ機能を追加した。包丁は解体にも使うんじゃないかって考えて、刃先の鋭さを調整出来る機能を付けたんだ。
解体って、切れ味が鋭い方がいい時とそうでない時がある。例えば皮を剥ぐ時とかは、鋭すぎると穴が空いちゃったり切り落としちゃったりするから。
日帰りだったら狩った魔物は貸し出し用の魔法鞄に入れるだけだけど、野営する時には食材にするから、きっと重宝するはず。
みんな喜んでくれるといいなあ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

一流冒険者トウマの道草旅譚

黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。 しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。 そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

処理中です...