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第61話 え?スティールできませんでした #2
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翌日――
『王立学校の生徒で結成された2組のパーティが、人知れず王都に迫っていたゴブラットの大氾濫の危機を未然に防いだ』
突然のその知らせに、ギルド本部上層部は大いに沸き立っていた。
普通であれば信憑性の疑われるであろうその話は、彼らに同行した冒険者『地獄以上のクーラ』の証言並びに提出された魔石の分析の結果、既に事実として認定されている。
報告によれば、10匹のゴブリンと1匹のゴブリーダー、そしてそれらによって飼育されていたおよそ300匹のゴブラットからなる集落を発見した彼らは、同行した冒険者クーラをバックアップ要員とし、土魔法によって集落を隔離した上で1匹残さず駆除する事に成功。その集落は王都近くの森の奥に作られており、有名な魔物研究者の分析によればその数は一月後には数千――その翌月には数万にも膨れ上がっていたと推定され、森を食い尽くしたその群れはとてつもない大群となって王都に押し寄せていた可能性が高いという。
つまり……もし彼らの対処がなければ、この王都に未曾有の大災害が発生していたというのだ。
これは冒険者ギルドの地位を高める絶好の機会!
早速その少年少女達を冒険者ギルドの特別功績者として大々的に表彰する事と、上層部は大急ぎで王宮への連絡準備を始めた。
だが――
その最中、彼らの行動に対してさる筋からストップが掛かる事となる。
『うちの孫娘を広告塔にするつもりじゃあないだろうね?』という――さる筋から。
その結果、彼らの功績は大々的に公表する事無く、ギルドの情報に登録されるに留まる事となった。
もちろん今回の事態の深刻性から、その情報と彼らの功績は王宮に報告する必要がある。当然その報告『さる筋』からの警告も添えて……
王宮も無視出来ないその警告によって、王都を救った若き英雄たちの功績、そしてプライバシーと日常は守られた。
だがその事に、当の本人達は全く気付いていない……
初めての冒険から数日が経ったある日――
今日は学校帰りにモリスさんのところへ寄る事になった。
急な呼び出しだけど、一体何事だろう?
「いやぁカルア君。表彰もパレードもやらない事に決まったみたいで残念だったねえ。僕もカルア君達の晴れ舞台を見てみたかったなあ。どうだい、今からでも校長に『ど派手に行きましょう』とか言ってみないかい?」
モリスさん、それ絶対面白がってるだけだよね?
「嫌ですよ! そんな事したら絶対普通の生活送れなくなっちゃうじゃないですか! 大体それでなくても最近『あの高名なエルフ少女と同じ名前なんて運が良いねえ』なんてよく分からない事を言われる事が多くって困ってるのに――」
「――ブフゥッ!!」
僕の言葉を遮るように突然吹き出したモリスさん……これ絶対理由を知ってる反応だよね!?
「モリスさん……『高名なエルフ少女』の事、何か知ってるんですね?」
「おっと、流石にバレちゃったか。といっても別に君にイタズラしてやろうとかそういう事じゃないんだよ。むしろその逆さ」
――なんて事を言い出したモリスさんの顔はちょっとだけ真剣な感じだ。
「逆?」
――ってどういう事だろう。
「ほら、これまで君が見つけた数々の新技術ってさ、全部『発見・開発者カルア』って名前で発表してきたでしょ? 初めのうちは気にする必要も無かったんだけど、その数が多すぎたんだ。これだけ続くと流石に『カルアとは一体誰なんだ』って騒ぎになっちゃいそうでさ、どうしようかってラーバル君達と相談したんだよ」
うっ、まさかそんな事になってたなんて……
「――で、ラーバル君の発案で『さる老齢のドワーフに弟子入りしたエルフの少女カルア』っていう架空の人物の噂を流そうかって事になってさ、その噂がだんだん広まって君の耳にも届いたってわけ。つまりこれは君を守る噂って訳さ。ねっ、イタズラじゃないだろ?」
確かに……
「そんな理由を言われたらもう何も言えないじゃないですか。っていうか、お気遣いありがとうございます」
「うんうん、そういう素直なところっていうのが、やっぱりカルア君の一番の長所だよねえ。これだから守り甲斐があるっていうか、守りたくなるっていうか――まあみんなから好かれる理由って事なんだろうねえ」
そんな事言われると、もの凄くくすぐったいんだけど。
「それで今日はどうしたんですか? 学校の後すぐに来て――なんて」
「そうそう、それなんだよカルア君。ほら、この間君も遭遇したあのゴブリン君なんだけどさ、実はね、彼らには魔道具での『魔石抜き』が通用しないって事が分かったんだよ」
「えっ!?」
本当に?
「間違いないと思うよ。別々の個体にそれぞれ何度か試したんだけど、どれも全て駄目だったから。それでさ、もしこの間の遭遇の時に【コアスティールDp2】を試していたようだったら、その時の結果を教えてもらおうかって思ってね」
あの時はパーティでの行動中だった。だから……
「あの時は【スティール】していません。僕一人じゃなかったから」
「まあそうだろうねえ。僕も多分そうだろうなあとは思ってたし、もちろん想定内さ。という訳だからカルア君、今からちょっと森のゴブリン君のところへ【スティール】しに行こうか」
「え?」
「ええっと、彼らがいるのは森の奥の方だから…………お、見ぃーーーつけた。うふふふふ、さあ行っくよーーー!」
その次の瞬間にはもう僕はモリスさんと一緒に森の中にいた。これ僕の方はもう完全に想定外なんですけど……
「ホントもう、モリスさんは相変わらずいきなりというか……」
「まあまあ、こうやって中間の余計な時間を省くっていうのも、僕の数多い長所のひとつなんだからさ。ここはひとつ、ささっとやっちゃおうよ。ね?」
長所……なのかなぁ?
「まあいいですけど。それであそこに見えるゴブリンが相手――って事でいいんですよね?」
「そうそう。ここにいるのは彼だけみたいだからさ、さくっと【スティール】しちゃってよ」
「じゃあもうやっちゃいますね。【スティール】」
目の前に浮かぶ魔石、そして崩れ落ちるゴブリン。
「おおー、やっぱり君になら出来たかぁ。ただ今となっては進化前のスティールでも出来たのかを確認しようがないのが残念ではあるけど。あとは……【Dp2】発動時の魔力測定をしたいところだねえ。よし、ちょっと一緒にオートカのところに行こうか。ええっと、オートカは今……おっ、これはちょっと面白いかも。じゃあ【てーーんい】っと!」
『王立学校の生徒で結成された2組のパーティが、人知れず王都に迫っていたゴブラットの大氾濫の危機を未然に防いだ』
突然のその知らせに、ギルド本部上層部は大いに沸き立っていた。
普通であれば信憑性の疑われるであろうその話は、彼らに同行した冒険者『地獄以上のクーラ』の証言並びに提出された魔石の分析の結果、既に事実として認定されている。
報告によれば、10匹のゴブリンと1匹のゴブリーダー、そしてそれらによって飼育されていたおよそ300匹のゴブラットからなる集落を発見した彼らは、同行した冒険者クーラをバックアップ要員とし、土魔法によって集落を隔離した上で1匹残さず駆除する事に成功。その集落は王都近くの森の奥に作られており、有名な魔物研究者の分析によればその数は一月後には数千――その翌月には数万にも膨れ上がっていたと推定され、森を食い尽くしたその群れはとてつもない大群となって王都に押し寄せていた可能性が高いという。
つまり……もし彼らの対処がなければ、この王都に未曾有の大災害が発生していたというのだ。
これは冒険者ギルドの地位を高める絶好の機会!
早速その少年少女達を冒険者ギルドの特別功績者として大々的に表彰する事と、上層部は大急ぎで王宮への連絡準備を始めた。
だが――
その最中、彼らの行動に対してさる筋からストップが掛かる事となる。
『うちの孫娘を広告塔にするつもりじゃあないだろうね?』という――さる筋から。
その結果、彼らの功績は大々的に公表する事無く、ギルドの情報に登録されるに留まる事となった。
もちろん今回の事態の深刻性から、その情報と彼らの功績は王宮に報告する必要がある。当然その報告『さる筋』からの警告も添えて……
王宮も無視出来ないその警告によって、王都を救った若き英雄たちの功績、そしてプライバシーと日常は守られた。
だがその事に、当の本人達は全く気付いていない……
初めての冒険から数日が経ったある日――
今日は学校帰りにモリスさんのところへ寄る事になった。
急な呼び出しだけど、一体何事だろう?
「いやぁカルア君。表彰もパレードもやらない事に決まったみたいで残念だったねえ。僕もカルア君達の晴れ舞台を見てみたかったなあ。どうだい、今からでも校長に『ど派手に行きましょう』とか言ってみないかい?」
モリスさん、それ絶対面白がってるだけだよね?
「嫌ですよ! そんな事したら絶対普通の生活送れなくなっちゃうじゃないですか! 大体それでなくても最近『あの高名なエルフ少女と同じ名前なんて運が良いねえ』なんてよく分からない事を言われる事が多くって困ってるのに――」
「――ブフゥッ!!」
僕の言葉を遮るように突然吹き出したモリスさん……これ絶対理由を知ってる反応だよね!?
「モリスさん……『高名なエルフ少女』の事、何か知ってるんですね?」
「おっと、流石にバレちゃったか。といっても別に君にイタズラしてやろうとかそういう事じゃないんだよ。むしろその逆さ」
――なんて事を言い出したモリスさんの顔はちょっとだけ真剣な感じだ。
「逆?」
――ってどういう事だろう。
「ほら、これまで君が見つけた数々の新技術ってさ、全部『発見・開発者カルア』って名前で発表してきたでしょ? 初めのうちは気にする必要も無かったんだけど、その数が多すぎたんだ。これだけ続くと流石に『カルアとは一体誰なんだ』って騒ぎになっちゃいそうでさ、どうしようかってラーバル君達と相談したんだよ」
うっ、まさかそんな事になってたなんて……
「――で、ラーバル君の発案で『さる老齢のドワーフに弟子入りしたエルフの少女カルア』っていう架空の人物の噂を流そうかって事になってさ、その噂がだんだん広まって君の耳にも届いたってわけ。つまりこれは君を守る噂って訳さ。ねっ、イタズラじゃないだろ?」
確かに……
「そんな理由を言われたらもう何も言えないじゃないですか。っていうか、お気遣いありがとうございます」
「うんうん、そういう素直なところっていうのが、やっぱりカルア君の一番の長所だよねえ。これだから守り甲斐があるっていうか、守りたくなるっていうか――まあみんなから好かれる理由って事なんだろうねえ」
そんな事言われると、もの凄くくすぐったいんだけど。
「それで今日はどうしたんですか? 学校の後すぐに来て――なんて」
「そうそう、それなんだよカルア君。ほら、この間君も遭遇したあのゴブリン君なんだけどさ、実はね、彼らには魔道具での『魔石抜き』が通用しないって事が分かったんだよ」
「えっ!?」
本当に?
「間違いないと思うよ。別々の個体にそれぞれ何度か試したんだけど、どれも全て駄目だったから。それでさ、もしこの間の遭遇の時に【コアスティールDp2】を試していたようだったら、その時の結果を教えてもらおうかって思ってね」
あの時はパーティでの行動中だった。だから……
「あの時は【スティール】していません。僕一人じゃなかったから」
「まあそうだろうねえ。僕も多分そうだろうなあとは思ってたし、もちろん想定内さ。という訳だからカルア君、今からちょっと森のゴブリン君のところへ【スティール】しに行こうか」
「え?」
「ええっと、彼らがいるのは森の奥の方だから…………お、見ぃーーーつけた。うふふふふ、さあ行っくよーーー!」
その次の瞬間にはもう僕はモリスさんと一緒に森の中にいた。これ僕の方はもう完全に想定外なんですけど……
「ホントもう、モリスさんは相変わらずいきなりというか……」
「まあまあ、こうやって中間の余計な時間を省くっていうのも、僕の数多い長所のひとつなんだからさ。ここはひとつ、ささっとやっちゃおうよ。ね?」
長所……なのかなぁ?
「まあいいですけど。それであそこに見えるゴブリンが相手――って事でいいんですよね?」
「そうそう。ここにいるのは彼だけみたいだからさ、さくっと【スティール】しちゃってよ」
「じゃあもうやっちゃいますね。【スティール】」
目の前に浮かぶ魔石、そして崩れ落ちるゴブリン。
「おおー、やっぱり君になら出来たかぁ。ただ今となっては進化前のスティールでも出来たのかを確認しようがないのが残念ではあるけど。あとは……【Dp2】発動時の魔力測定をしたいところだねえ。よし、ちょっと一緒にオートカのところに行こうか。ええっと、オートカは今……おっ、これはちょっと面白いかも。じゃあ【てーーんい】っと!」
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